苦戦するも「次に繋がったことが収穫」
先週末に行われた天皇杯2次ラウンド、宇都宮ブレックスは信州ブレイブウォリアーズを74-65で下し、ファイナルラウンド進出を決めた。だが、選手やヘッドコーチが「B1にいてもおかしくはない」と口を揃えて信州を称えたように、宇都宮は思わぬ苦戦を強いられた。
田臥勇太、遠藤祐亮が欠場した状況で30分以上ゲームメークをした渡邉裕規も「スカウティングがそこまでできていない状況で、足元をすくわれる可能性は大いにあった」と、試合を振り返った。宇都宮は第3クォーターを終えた時点で1点のビハインドを背負っていたが、最終クォーターを23-13と上回ってB1の意地を見せた。
「三遠ネオフェニックスに勝ったチームですし、B1のチームとやるつもりでとみんなで話していたので、慢心はなかったです」と渡邉が言うように、油断ではなく相手のクオリティ自体が高かった。
相手の力を認めながらも、渡邉は自分たちで自分たちの首を絞めたゲーム展開を振り返る。「昨日打てたシュートが打てなかったり、昨日入っていたシュートが入らなかったり。そういう一つひとつのミスを40分間引っ張り続けてしまった。そうなるとシュートも入らないし、ディフェンスもできないで終わってしまう。その切り替えが上手くいっていなかったですね。全部自分たちから崩れて、それが競ってしまった一番の要因です」
それでも、こうした一発勝負では内容よりも結果が大事だ。渡邉も「また来週にやってくる試合ではないので、一つでも多くやることが大事かなと。次に繋がったことが収穫」と胸をなでおろした。
「どこのチームよりも天皇杯への思いは強い」
昨年の天皇杯、宇都宮は決勝に進んだものの、延長戦の末に千葉ジェッツに敗れた。さらに言えば、ケガ人を多く抱え、少ないメンバーでのやりくりを強いられた中での決勝進出だっただけに、天皇杯優勝への思いはどのチームよりも強かった。渡邉も「去年の悔しさを忘れるはずがないです」と言う。
「去年は比江島(慎)が来る前で、あれだけの人数で僕らは決勝まで行って。あいつがいない状況で勝ちきりたかったです。僕たちはまだ天皇杯を取ってないですし、フリースロー1本で勝てたかもしれない、最後のシュートをブロックできれば勝てたかもしれない。なおさらあのような負け方だったので、どこのチームよりも天皇杯への思いは強いはずだし、そういう気持ちを持っていないといけない」
プロである以上、すべての試合で勝利を追い求めるのは当然だ。それでも、クラブとしてはタフなスケジュールを鑑み、外国籍選手や主力選手を休ませる選択もできる。
だが渡邉はそうした選択肢を真っ向から否定する。それは、ブレックスの信念に反するからだ。「リーグ戦だけというイメージのチームもあるかもしれないですけど、それでは応援してくれている人は納得しないでしょう。チームの歴史的にも僕らはそうするべきではない。ただ優勝を目指すのみです」
苦戦しながらも、さいたまスーパーアリーナへの切符を手にした宇都宮。誰よりも貪欲に優勝を欲する渡邉の、「やっと去年の思いを取り返せるチャンスが来た」という気持ちは、チームメートにもファンに伝わっているはずだ。