文・写真=鈴木栄一

「ディフェンスのチーム」のアイデンティティを作る

9月29日、沖縄で開催された琉球ゴールデンキングスvsサンロッカーズ渋谷の開幕戦、オフにリーグ屈指の大型補強を行った琉球がどんなプレーを見せるのかに注目が集まった。しかし、実際に見ている人を唸らせるプレーをコート上で見せたのはSR渋谷だった。勝久ジェフリーを迎え、新チーム発足時から取り組んでいるタフで激しいディフェンスを展開。第4クォーターには琉球をわずか4失点と完全に抑え込み、73-54の快勝を収めた。

この試合、SR渋谷はロバート・サクレが16得点、ジョシュ・ハレルソンが得意の3ポイントシュートを3本沈めての15得点とツインタワーが活躍。また、山内盛久が昨シーズンまで所属した古巣相手に4得点7アシスト1スティールを挙げるなど様々な選手が奮闘していた。その中でも際立ったプレーを披露したのが広瀬健太だ。チームが苦しい時間帯など要所でシュートを沈めての14得点5リバウンドに加え、昨シーズンのスティール王の本領をいきなり発揮しての4スティールと攻守でチームを牽引した。

「自分たちはディフェンスのチームを作るんだ、そういう文化であり、チームのアイデンティティを持とうと今季のチームは始まりました。そこで今日、激しいプレッシャーをかけるディフェンスを40分間続けられたことが勝因です。今まで準備をしてきたことを、チームとしてしっかり一人ひとりが完璧ではなくても、やることができたと思います。」

このように広瀬は試合を振り返る。そして自身の4スティールを含む計11スティールについては、前から積極的にプレッシャーをかける守備があってこその成果と強調する。

「スティールに関してはガードがプレッシャーをかけてくれることで、パスが緩くなったり、苦しいパスになることがありました。スティールを狙っているわけではないですが、激しさのところでガードから始まって、後ろの選手たちに伝わっていったと思います」

「やりたいことをやって勝ったことを評価したい」

「結果を求めるといいより、どういうプレー、どういう判断をしたのか。正確性を求めていくことが大事です」と、結果ももちろん大切だが内容をより重視している広瀬が、その上で手応えを得た開幕戦だった。

「この熱い環境の中、最後の10分まで相手のペースにやりかけたところでも我慢して、チームとしてやるべき正しいプレーを目指してそれを遂行できた。自分たちのやりたいことをやって勝ったことを評価したいです」

『チームとしてやるべきこと』として渋谷が重視しているのは、泥臭いプレーをタフにやり続けることだ。勝久ジェフリーヘッドコーチは次のように語っている。「数字に出ているものもあれば出ていないものもあります。スタッツに現れない仕事をチームとして大事にしています。例えば(長谷川)智也がフルコートでボールプレッシャーをかけてくれました。これは全くスタッツには出ないですが、チームとしてリズムを作った面がある。こういったところをチームとして大事にしていきたいです」

開幕戦に勝ったことに満足しつつも、広瀬は連勝スタートへと意気込む。「今年で10年目ですが、開幕戦はいつやっても独特の雰囲気があり、勝つのは気分が良いです。ただ2連戦、明日勝って帰ることが大事。今日、勝ったことに満足せず、今日以上のプレーをして勝ちたいと思います」

「不安もまだありますが、正しいプレーをやることの大切さを自分がしっかり体現し、チームに伝えていきたい」。そう語るベテランは、チームの目指す堅守の構築へ向け欠かせない存在となっている。