アクシオン福岡に満員の観客を集めたウインターカップ福岡県予選の決勝。観客の興味はもちろん、福岡第一と福岡大学附属大濠による『福岡決戦』だった。11月2日のこの対戦、大濠は21点ビハインドで始まった最終クォーターに意地の追い上げで1桁差に詰め寄るも、福岡第一に押し返されて60-69で敗れている。ただ、本当の勝負は全国の舞台、ウインターカップに持ち越されただけ。総決算の大会にどんな意気込みで臨むのか、片峯聡太監督に話を聞いた。
「選手たちが自分たち自身で乗り越えようとした」
──ウインターカップ県予選の決勝では福岡第一と対戦しました。試合後半に猛烈な追い上げもあって、内容的に見るべきものはありましたが敗れています。振り返るとどんな試合でしたか?
全国大会の前哨戦として臨んだわけではなく、今ある力を出しきってどこまでできるかを考えていました。福岡第一とは数多く試合をさせていただいているので、相手のやりたいバスケットをいかにさせないかがテーマで、選手の努力と工夫で第一の走るバスケットは半減させられましたが、逆に重くなりすぎて、自分たちが点を取れなくなってしまった。そのオフェンスとディフェンスのバランスはまだまだ勉強不足だったと私自身も反省していますし、選手たちにも意識してほしいところです。ただ、努力すれば必ず良い方向に行くことも分かったので、前向きにとらえられる部分が多いゲームだったと思います。もちろん、次にウインターカップがあるからこそ、前向きにとらえなければいけない面もあります。
一番の収穫は、走るバスケットをするチームを走らせない方法に、みんなが手応えを得られたことです。また相手の留学生がゴール下にいて、今まではアタックできずに3ポイントシュートだけで対抗したりする面があったのですが、今回は何本ブロックされようと攻め続けることを一つのノルマにして、ゴールより高い位置にいる選手たちは果敢に攻めました。
それが第2クォーターになって続かなかったのですが、それで終わらずにチーム全員で自分たちで何とかしようとする姿勢が見られました。もちろん勝たなければいけない試合だし、負けたのは悔しいです。それでも、選手たちが自分たち自身で乗り越えようとしたのは、私からすると大きな成長だと見ています。
──ここから1カ月が最終調整となりますが、どんな部分をプラスしてウインターカップ開幕を迎えたいですか?
この1年間、インターハイに出るにも福岡第一に勝たなければならない、この前の県予選も勝ちたいということで、どうしても相手を意識する時間が長くなりました。ここからは自分たちのスタイルにフォーカスして、選手たちの資質をしっかり出せるバスケットを作り上げたいです。もう一つは対戦相手がある程度予測できるので、戦術的な対策だったりスカウティングは徹底して、私自身が時間をかけて勉強するのは当然として、選手に伝えながら確認したいです。
──対戦カードが発表されました。2回戦で当たるであろう開志国際は昨年のインターハイで負けて、今年の能代カップでも負けています。意識するところは大きいのではありませんか?
まずは1回戦があります。我々はインターハイに出ておらず、このチームで全国大会に臨むのは初めてなので、まずは気持ちを一つにして、自分たちのやることに集中して1回戦で海部高校と戦いたいと思います。1回戦を無事に勝つことができたら、開志国際と当たることになるでしょう。昨年のインターハイで負けていますし、能代カップでは私の至らなさで負けています。去年の3年生の思いもあるし、今年のチームにしても5月から成長してきた部分を選手がプレーで表現できる場になります。そこが表現できれば勝ち目は十分にあると思っていますし、みんなで努力したいと思います。
「相手によって色を変える中で良さをどう出すか」
──相手を研究する中で、お手本になるチーム、バスケのスタイルというものはありますか?
試合をするたびに勉強になると感じるのは東北のチームの粘り強さです。一つひとつが本当に粘り強い。選手の能力だったりサイズで圧倒しているように見えますが、見えないところで相当に苦労してやってきていると感じます。ウチが良い試合をしていると思っていても10点しかリードできず、気を抜いた時に一気にやられたり、そういう粘りがあるチームが多いですね。私も九州の人間で、血の気が多いところがあります。戦う姿勢を出すこと、他のどこよりも頑張ることはできますが、東北のチームと対戦すると粘り強さが足りないと感じさせられます。
今は留学生がいるチームの方がよりスタイルがはっきり出ていると思います。私はどうしても留学生のいるチームと戦うために、カメレオンのように相手によって色を変えながらやる力が必要だと感じています。その中で自分たちの良さをどう出すかですね。
──それでも、福岡第一といつも良い勝負を演じていて、留学生のいるチームとの戦いには慣れているし、今回のように福岡第一に県大会の決勝で負けたとしても、ウインターカップに行けば良い戦いができるという、ある程度の勝算はあるのでは?
いや、そうは思いません。福岡第一とは何回もやっているから1桁の点差でついていけるだけです。東山、開志国際、中部第一と、留学生の使い方はそれぞれ違ってくるし、他の日本人選手たちとの組み合わせもあるので、その特徴に対して上手く対応しないと戦えないと思います。
例えば福岡第一であれば、留学生プレーヤーがリバウンドを取るから走る、というスタイルをどのチームよりも徹底、追求しています。それに加えて留学生もしっかり走るのも、こちらからすれば嫌なんですよね。ガードとセンターの縦のラインを基軸に、激しいディフェンスから、常に速い展開を狙い得点を量産するのが第一のスタイルです。
でも東山だったら、オフェンスシステムの中で、留学生の機動力を生かし、各々が役割を果たすスマートなバスケットを展開します。だから留学生の選手がそんなに多く得点しないのですが、他の選手がみんな2桁取るようなバスケットです。
開志国際は緩急のあるバスケットを展開します。留学生が基軸となりますが、ガードとフォワードに実力者が揃う、非常にオフェンシブなチームです。
「このウインターカップでは結果にこだわろう」
──ウインターカップでは優勝候補の一つと見なされると思いますが、片峯監督としてはどのような気構えで大会に向かいますか。
昨年、我々は福岡第一に負けてウインターカップに行けませんでした。福岡県予選の決勝が『事実上の決勝』と言われたりして、「全国で第一vs大濠が見たかった」というような声が私にも聞こえてきます。大変ありがたいのですが、私は全然そうは思っていません。あくまで挑戦者の立場です。
──では聞き方を変えますが、ウインターカップで『福岡決戦』をやりたい、それはつまり決勝で福岡第一と対戦するということですが、その思いはありますか。
あります。やっぱり私も負けず嫌いなんですよ。勝負の世界にいて負けたまま終わるのは嫌ですし、何回すがってでも勝つまでやりたいです。でもチャンスは限られているので、それが今回になれば、という思いはあります。第一はケガ人さえなければその舞台に来るだろうと私は勝手に思っています。我々としては、そこに向けてどれだけの思いを燃やせるか。みんなが同じベクトルを向いてスクラムを組み、良い時も悪い時もやっていけるかどうか。それは楽しみですね。
──同じ大濠でも、毎年が違うチームです。今年の大濠は、全国のファンにどんなプレー、どんな戦いぶりを見てもらいたいですか?
今年の3年生は体格や身体能力など非常に良いものを持っていますが、精神的に幼い面がありました。そこで学年が上がるにつれて心の成長がすごく見られた学年でもあります。それに加えて、1年でインターハイで優勝してウインターカップで準優勝、2年ではインターハイでベスト16、その借りを返そうと臨んだウインターカップには出場できませんでした。その光と影の両方を身を持って感じています。そういう思いすべてを込めた選手たちの気迫溢れるプレーが見られるんじゃないかと思います。
「良い時も悪い時も、3年間ずっと見てきた。みんなが成長してきたのを見てきた。ただ一つやっていないのは、結果を出していない。お前たちの代では結果を残していない。何かを成し遂げたわけじゃないから、このウインターカップでは結果にこだわろう」と選手たちには話しています。そうやって一戦必勝で戦う姿を見ていただきたいです。
上手くプレーするわけではなく、高校3年間のいろんな思いが詰まったプレーを東京の舞台で選手たちが発揮してくれると思います。そうなれば、自ずと結果も付いてくるんじゃないかと思っています。