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レジェンドが「ビッグマン消滅の危機」という考えに反論

1994年と1995年にロケッツが達成した2連覇に貢献したアキーム・オラジュワンは、7フッター(213cm)ながらも機敏なステップワーク、いわゆる『ドリームシェイク』を駆使したセンターだ。1996年には『NBA50年の歴史の偉大な50人の選手』にも選出され、2008年にはバスケットボール殿堂入りも果たしている。

昨今のNBAでは、オラジュワンのように技術に秀でるセンターが増え、ウォリアーズの成功をきっかけにスモールボール・ラインナップを採用するチームが急増。古いタイプのセンターでは生き残れないという意見も少なくない。

だがオラジュワンは、『Players' Tribune』に寄稿した文章の中で「センターの役割が変わりつつある」と綴り、自身の見解を示している。

「スモールボールの最大の功績は、ビッグマンが伝統的な役割ではなくなったということ。現代のセンターは、ペイント内だけに留まっていれば良いという存在ではない。スモールボールがビッグマンを排除することにはならないが、センターというポジションの概念を消してしまう可能性はある」と、オラジュワンは主張。

また「誰しもそれぞれの時代を比較することを好むが、今のビッグマンは、過去の選手より技術に秀でたオールラウンド型と言えるかもしれない」とも綴っている。

確かに、身体の大きさで勝負するセンターは徐々に減りつつある。数年前までNBA最強センターと呼ばれたドワイト・ハワードのような選手は、機動力を生かすスモールボール・ラインナップには不向きなタイプだ。現代のNBAでは、パス、シュートにも優れるビッグマンが好まれる傾向にある。若手の中で代表的なのは、昨シーズン6回のトリプル・ダブルを達成したナゲッツのニコラ・ヨキッチだ。従来のビッグマンと異なり類稀なパスセンスを併せ持つヨキッチは、数年以内に間違いなくリーグトップクラスに成長するだろう。

とはいえ、やはりNBAにビッグマンの存在は欠かせない。ペイント内、ゴール周辺を攻守に渡って圧倒する存在がいるからこそ、チームのシューターが生きてくるというもので、『スモールボール』全盛であっても優れたビッグマンはいつの時代も重宝される。

流行や時代の流れでポジションの役割が変わっても、ビッグマンの本質はリバウンドを制すること。技術と機動力だけあっても、NBAで活躍できるだけのフィジカルが伴わなければインサイドを制することは不可能だ。『スモールボール』が流行しても、いつの時代もNBAで成功を収めるには、フィジカル、メンタル、技術の3拍子が欠かせない。時代とともにシステム、チームスタイルが変化すれば、各ポジションに求められる役割も変わる。『ドリーム』の愛称で知られるオラジュワンが言いたいのは、そういうことだ。