取材・写真=古後登志夫

インサイド陣の強烈な守備から流れをつかみSR渋谷を撃破

昨日、滋賀レイクスターズは守山市民体育館にサンロッカーズ渋谷を迎えてプレシーズンマッチを行った。アーリーカップでは決勝まで進んだものの琉球ゴールデンキングスに力負けを喫しており、「アーリーカップより良いバスケットをするために一週間取り組んできた成果を出す」をテーマに掲げ、ホーム初陣を77-65の勝利で飾った。

今シーズンから滋賀を率いるショーン・デニスは、まずこのテーマを説明した上で「成果が出せた」と胸を張った。昨シーズンの滋賀は良くも悪くも『組織よりも個人』だったが、チームはこの時期すでに様変わり。ハイプレッシャーのディフェンス、そこから速攻に転じるオフェンスと、秩序立ったスタイルが定着しつつある。

「現状としては良くできていると思うが、選手には満足せず、今ここまで来ていることを理解しつつ、もっと良くできるという認識でやってもらいたい」とデニスHCは言う。

アーリーカップでは脳震盪を起こすトラブルに見舞われたオマール・サムハンが元気に復帰。ディオール・フィッシャーとの211cmコンビはディフェンスで圧倒的な存在感を見せた。「昨シーズンはインサイドに存在感のある選手がいなかったので、今年はそれを重視した」とデニスHCはさらりと言う。クレイグ・ブラッキンズとジュリアン・マブンガという強烈なコンビを思い出すと『?』が浮かぶが、サムハンとフィッシャーがともに後方に構えてリングを守るスタイルを見れば、まずは守備で計算が立つように、という優先順位だと理解できる。

このSR渋谷戦、前半こそ拮抗した展開になったが、後半に入ると新外国籍選手が強烈なディフェンスを披露。7分間を無得点で切り抜け、試合の流れを一気に引き寄せた。デニスHCはディフェンスについて「外国籍選手が2人でリングを守り、ペネトレーションさせるスペースを与えない。そしてガードが前からプレッシャーをかける形が機能した」と振り返った。

リード&リアクトに馴染んで質を高めるために全力

オフェンスはどうだろうか。マブンガとブラッキンズは2人で30点は計算できる得点能力を持っていた。だがフィッシャーとサムハンは重量級で走れるタイプではない。デニスHCはこの部分こそチームオフェンスだと説く。「我々がやろうとしているオフェンスはリード&リアクトと言って、相手のディフェンスが何をしようとしているのかを読んで、オフェンスがそれに対して最善の形を取るというもの。これがうまくできればシュートの確率はもっと上がっていく。学ぶのに時間はかかるし、まだ始めてから期間が短いが、この時期に馴染んでいってほしい」

『リバウンドを重視した堅守からの速攻』というスタイルは、トーマス・ウィスマンの右腕としてデニスが支えた昨シーズンの栃木ブレックスのバスケットを連想させる。だが、リード&リアクトというモーションオフェンスを採用するにあたり、相手チームのスカウティングが非常に重要となる点に触れ、「これはウィスマンと私で違う部分」と自身のオリジナリティを強調した。

「スイッチしてくる場面、こちらがこうすれば相手はこうリアクションする、といった傾向はチームによって違う。相手のディフェンスをスカウティングしないコーチは試合で困難に直面する」とデニスHCは言う。

「絶対に言い訳をさせない。それが私のやり方だ」

もう一つデニスHCのバスケットの特徴として挙げられるのはタイムシェアだ。ハードなディフェンスからの展開が続くため、選手は相当走り込んでいるにせよ、長くプレーし続けることは難しい。デニスHCは言う。「特定の選手を長くプレーさせるのが難しいスタイル。そういう意味で選手の交代は頻繁にやる。疲れる前に代えるのでパフォーマンスが上がり、選手も自信になるはず。今日は横江(豊)が立ち上がりは悪かったが、ディフェンスをする中で自信を取り戻して立ち直った。こうして選手それぞれが自信を付けながらプレーして、相手に脅威を与えたい」

それでも正ポイントガードを務める並里成は「今年のバスケは体力を使うので、コンディションをもっと上げて、40分間続けられる身体とメンタルを作りたい」と長くプレーするつもり。タイムシェアを掲げる指揮官とコートに立ち続けたい並里の『マッチアップ』も見ものだ。

開幕を前に期待の持てるパフォーマンスを披露した新生レイクスだが、シーズンの目標を問われたデニスHCは「チャンピオンシップに出ると言うのは非現実的」と即答している。

「今大事なのは選手たちがバスケットボールを正しくプレーすることで、それに集中したい。もっと一貫してプレーし続けられるように、それができるようになれば勝ち方が分かってくる。今はプロセスの部分にフォーカスしたい。いずれ勝ち方が分かってくればチャンピオンシップにも出られるし、ファンの方々を満足させられる」

とにかく、開幕までにできる準備はすべてやる、という気迫がデニスHCからは感じられる。「絶対に言い訳をさせない。それが私のやり方だ。それは言い訳のできない環境を我々が作ってしまうということ」と指揮官は言う。その環境が出来上がった時、滋賀は西地区だけでなくB1全体にインパクトを与える存在になるはずだ。