文=丸山素行 写真=鈴木栄一

「面白そうだから」という理由で新キャプテンに

横浜ビー・コルセアーズで新キャプテンを務めるのは湊谷安玲久司朱。岡本尚博CEOは人選の理由を「面白そうだから」と本気とも冗談とも取れる口調で説明したが、彼自身は大真面目でこの大役を引き受けた。

新体制で初の公式戦となったアーリーカップでは千葉ジェッツ、サンロッカーズ渋谷に連敗。結果は出なかったが、大会を終えて湊谷は「結果的に負けましたけど、全然大丈夫」と涼しい顔だった。「いろんな課題が見えましたが、まだ外国籍選手が一人来ていないし、インサイドの(佐藤)託矢さんもまだ出れない。あと1カ月あるので、そこでちゃんと修正していきます」

湊谷としては、キャプテンよりも4番ポジション(パワーフォワード)で先発出場したことのほうが『新鮮』だったかもしれない。選手がまだ揃わない状況で、2試合ともに湊谷が4番で先発、30分弱のプレータイムを得ることに。「逆のミスマッチだと思って、空いたらどんどん狙っていこうと思いました」と言う湊谷は、いつも以上にアグレッシブに仕掛け、相手が崩れると見るやミドルシュートを狙っていった。

もっとも、彼が語るのは自身のプレーではなくチーム全体のこと。「全然大丈夫」と言いつつも課題はたっぷりある。「昨シーズンと同じようなこと、ダメになった時にそのまま崩れてしまうことが第3クォーターに起こってしまいました。そういうのをキャプテンとしてどうなくしていくか、チームを引っ張っていくかだと思います」

「行動で見せていかないといけないと思っています」

キャプテン就任が発表された6月の時点では「今までキャプテンをやったことがないんです」と照れ笑いを浮かべていた湊谷だが、もうすっかり『キャプテンの自覚』が備わったように見える。「初めてですが、チームを引っ張っていかなきゃいけない、行動で見せていかないといけないと思っています。なかなか苦手なんですけど、意識してやるようにしています」。こう話す湊谷に、数カ月前の照れくさそうな表情はない。

SR渋谷戦を終えた後のロッカールームで、湊谷はキャプテンとして「ダメになるとすぐバラバラになってしまう。それが今日も出てしまったので、みんなで突き詰めて修正していこう」と話したそうだ。

そしてこれまでのキャプテンとは違う湊谷のスタイルとして、厳しさを出すと宣言する。「年齢は関係なく、厳しく。名前を出して言っていいと思います。若手だろうが関係なく名前を出してくれと。そういうことで意識は変わるものだと思うし、それで悪い方向には行かないと思います。田渡(凌)とか(満田)丈太郎が先輩に『これはこうしてください』と言ってくると、チームもまた変わります。だからミスをしたら名前を出して言っていいよ、と試合中に伝えました」

寡黙でクールな湊谷だが、勝つために何が必要かは理解している。キャプテン就任によりチームを引っ張っていく自覚が芽生えた湊谷は、これまでとは違った一面を見せてくれそうだ。「面白そうだから」というキャプテン人事、実際に面白い。