藤井祐眞

世界基準のバスケットを目指す川崎

開幕8勝2敗とスタートダッシュに成功した川崎ブレイブサンダース。これはプレータイムをしっかりシェアし、40分を通して激しいプレッシャーをかけるディフェンスが機能していることが最大の要因だ。

これはまさに世界基準のスタイルだが、もちろん守備だけではない。今シーズン、川崎の攻撃で特に目立つ変化はニック・ファジーカス、マティアス・カルファニ、ジョーダン・ヒースとビッグマン全員が3ポイントシュートを武器としていること。まだ10試合を終えたばかりだが、3人の合計3ポイントシュートは82本中36本成功、成功率44%と見事な数字だ。

ファジーカスの3ポイントシュートの平均試本数は3本以上で、少なくともBリーグ開幕以降では最も長距離砲を積極的に狙っている。1番から5番、どのポジションの選手も3ポイントシュートをどんどん狙っていけるのは一つの強みだ。

また、ここまで目立っているのは、激しい守備からターンオーバー奪取に象徴される攻守の素早い切り替えで、走れる場面が増えたこと。これによって、ゴール下に切り込んでのレイアップシュートなどイージーシュートで得点を重ねることで突き放している面もある。

この2ポイントシュートはゴール下、そして3ポイントシュートをどこからでも打てる効率的な攻め方は、オフェンスにおける世界のトレンドになっている。

藤井祐眞

「得点が増えているのは、チームで走れている結果」

そして、このワールドスタンダードを最も着実に遂行しているのが、切込隊長である藤井祐眞だ。

ここまで藤井は10試合中7試合で2桁得点をマークするなど、1試合平均12得点と川崎に入団して以降、最も高い数字を残している。ただ、本人は過去と比較して、より得点を取りに行っている意識はない。

「今、得点が増えているのは、チームで走れている結果です。ここまでフリースローで得点を稼げた試合もありますが(10月20日の千葉戦で17本中16本成功、23日の三遠戦で10本中10本成功)、これもチームで走れているので、相手のファウルが増える。それで相手が早い段階で5ファウルとなって自分がフリースローを打てています」

藤井は、あくまでチームあっての得点増であると強調する。「自分の得点が伸びているのは、チームのバスケットが機能している証拠です。2ポイントシュートもほとんどレイアップからの速攻が多いです」

藤井祐眞

川崎の守備のギアをあげるスイッチ

実際、ここまで藤井の2ポイントシュート成功率はガードとしては驚異的な63.3%で、これはゴール下でのイージーシュートが多いからこそ。一方で、3ポイントシュートはここまで成功率32.6%と数字は伸びていないが、試投数は1試合平均4.6本で、2ポイントシュート(平均3本)よりもシュートを打っている。フリースローを過去最高のペースで獲得しているのも、アタックをしっかりできていることを示す。

そして、ディフェンス面では持ち前の圧倒的な運動量とボール嗅覚で前から激しいプレッシャーをかけ、川崎の守備のギアをあげるスイッチとなっている。

シュートを打つ位置が、3ポイントシュートとゴール下に集中し、効率良く得点を重ねる。そして、平面でのプレッシャーディフェンスはリーグ随一だ。世界基準を標榜する川崎において今、それを最も遂行できている日本人選手は藤井であり、新生川崎のスタイルを象徴している

今週末、川崎はアウェーに乗り込んで島根スサノオマジックと対戦する。地元凱旋となる藤井が、トランジションからのレイアップで得点を重ねていけば、自然と結果はついてくる。