文=鈴木健一郎 写真=B.LEAGUE

速攻を封じられた西宮、サイズの差で苦しい展開に

Bリーグ新シーズンの幕開けを告げるアーリーカップが開幕。『関西』では初戦で西宮ストークスと熊本ヴォルターズが対戦した。

B1昇格を果たした西宮と、あと一歩のところで昇格を逃した熊本。それでもレギュラーシーズンの成績では熊本が上で、どちらに転ぶか分からない接戦となった。立ち上がりから重い展開の中、最初こそ西宮がシュートセレクション良く得点を重ねるが、熊本がサイズの利を生かすプレーにシフトすると、インサイドを制して主導権を握る。

またゲームプランとしても熊本のペースだった。西宮の速攻を封じ込め、サイズの差で優位を作っていく。特に目立ったのは200cmのパワーフォワード、中西良太だ。中西はミスマッチを突いて前半だけで16得点を決め、その後も終始パワフルなプレーで西宮を苦しめた。

ただ、西宮も劣勢を強いられながらも我慢のバスケットを展開。ファストブレイクは出せなくてもドゥレイロン・バーンズが力強いボールプッシュでテンポを上げる。そしてサイズに劣るためゴール下での得点を奪えない状況でもペイントエリアまでボールを運び、相手の意識を内に向けてからのパスアウトで外でフリーのチャンスを作り、食らい付いていく。

第4クォーターの残り6分43秒、西宮は4ファウルでベンチに下がっていたジョーダン・ヴァンデンバーグをコートに戻して勝負に出る。216cmのセンターが戻ったことでゴール下での高さの不利を打ち消し、シーソーゲームに持ち込む。しかし熊本も負けていない。絶好調の中西にオフェンスリバウンドを取られて失点し、直後の攻めは福田真生のブロックショットに阻まれた。

勝利に直結する大仕事の谷「適当に投げたら入った」

残り1分20秒、テレンス・ウッドベリーに速攻を決められ70-71と逆転を許すが、その直後にビッグプレーが飛び出す。1分前に3ポイントシュートを決めていた谷直樹が、今度は姿勢を低くしたドライブでリングにアタック。長身の相手選手3人に囲まれながらダブルクラッチレイアップを沈め、さらにファウルも誘ってバスケット・カウントのワンスローを決めて73-71とする。

慌てた熊本のパスが乱れたところを谷が逃さずスティール。ここから熊本はファウルゲームに出るが、西宮はもう崩れることなく、最終スコア80-74で勝利。明日の琉球ゴールデンキングスへの挑戦権を得た。

殊勲の谷直樹は勝利を大きく引き寄せたレイアップについて「パスするところがなくて適当に投げたら入ったので、チームメートも笑っていた」と謙遜するも、その前の完璧な3ポイントシュートを相手に意識させた上で、躊躇せずリングに突き進んだ結果だ。「今日の試合でも悪いところがいっぱい出たので修正して、コミュニケーションを取って、チームとして完成度を上げていく姿を見せたいと思います」と谷は語った。

『B1』として初の公式戦を白星で飾った西宮。本来のスタイルを出せなかったにせよ、粘りのバスケを40分間貫いた末に勝利を得られたことには大きな意味があるはずだ。