取材・写真=古後登志夫

九州電力アーティサンズは社会人バスケの強豪チーム。とはいえ、古豪ではない。全日本実業団選手権で初優勝したのが2007年。それでもこの10年間で優勝回数を5にまで伸ばし、オールジャパンに参戦することで全国のバスケットボールファンに知られるチームとなった。この成長を語る上で外せないのが、ヘッドコーチを務める山口健太郎の存在だ。アイシンで日本トップクラスの実力者とともに9年間プレーした後、故郷福岡の九州電力へと移籍。選手としての移籍だったが、すぐにケガをしてヘッドコーチに転身することになった。

『常勝チーム』であるアイシンのノウハウを注入したことが、今日の九州電力の強さのベースになっている。ただ、Bリーグが立ち上がった今、実業団バスケの存在感が相対的に薄くなっているのも事実。九州電力はどのようなスタンスでバスケに向き合っているのだろうか。ヘッドコーチの山口に話を聞いた。

「やるからにはプロにも勝てるチームを目指す」

──まずは山口コーチのこれまでのキャリアを教えてください。

中央大学を卒業して、アイシンで9年間プレーしました。九州電力で1年間プレーをして、それからヘッドコーチを務めています。選手として入ったのですが、すぐにケガをしてしまって。九州電力を強豪にするために来たつもりだったので、コーチとして目標に向き合おうと思いました。最初は大変でしたが、最近は自分の伝えたいことを理解してもらえるようになりましたね。

──実業団チームなので、選手はバスケだけをしていればいいわけではありませんよね。チームを率いる難しさは?

むしろ優先すべきは日々の業務なので、平日の練習に選手が集まらないのが一番大変です。限られた時間を有効活用するために練習のポイントをどう絞っていくか、あとはチーム練習には参加できなくても個人練習をやる習慣付けですね。やるからにはプロにも勝てるチームを目指しています。選手一人ひとり、会社から費用を負担してもらって遠征に行き、試合をするので、カテゴリーは違えどやっていることはプロと変わりません。そこは意識を高く持つようにしています。

──トップチームだったアイシンの経験があるからこそ、教えられる部分もありますか?

そうですね。アイシン時代は社員選手だったので、そこの経験を生かしてコーチをやることは心掛けています。(鈴木)貴美一さんやアイシン時代のメンバーから学んだことを伝えたいと意識しています。

「バスケ界を下から押し上げていきたい」

──Bリーグができた今のバスケ界を見た時、実業団の強豪チームはどのような位置付けにあると思いますか?

Bリーグはできましたが、プロよりも社会人や実業団チームのほうが多いので、そこが頑張って「勝てるんじゃないか」と思わせるレベルまで行けば、実業団リーグの活性化につながります。それがバスケ界の底上げにもなるので、下から押し上げていきたいですね。

──九州電力がプロ化してBリーグに参戦するという気持ちは?

それは自分たちで積み上げていくものだと思っています。下から上がっていくチャンスはあるので、それを自分たちで勝ち取る。結果を積み上げていくことで見えてくるものがあると思います。企業スポーツなので、グループ会社の従業員の皆さんの活力となるようなチームを目指すとともに、地域の皆さんに愛されるチーム作りが大切と考えています。

──Bリーグができたことで、九州電力のバスケに影響はありましたか?

Bリーグの試合を見ていても、新しいことをどんどん取り入れているのが分かります。それを見ながら自分たちのチームに還元できるものは取り入れるようにしています。Bリーグの全チームが我々にとってはお手本になりますよ。

──それでも、実業団チームを熱心に応援するファンもいます。自分たちのどういう部分に注目してもらいたいですか?

実業団チームは仕事が優先で、その合間にバスケットをしています。なかなかバスケの時間は取れないです。それでもバスケットに懸ける情熱だったり、短い時間の中でどうやってチームとしてやっていくかの姿勢、選手たちの頑張りを見てほしいと思います。