チャンピオンシップ出場という『最低限のノルマ』はクリアした。それでもサンロッカーズ渋谷で昨シーズンの成績に満足している者は誰もいない。勝ち負けよりも、自分たちが持つポテンシャルを発揮できなかったのがその理由だ。発散できずに内に溜まったエナジーの行き場がない『不完全燃焼』のBリーグ初年度が終わった後、選手はそれぞれのオフを過ごし、新たなシーズンに向け再結集した。
昨シーズンはキャプテンを務め、リーグの初代スティール王になった広瀬健太も、昨シーズンの出来に全く満足していなかった。それでも新たなシーズンに向け、すでに気持ちは切り替わっている。「新しいシーズンを戦うためのエネルギーを蓄えるために、一度バスケットから意図的に離れていました。1カ月弱は体育館にも行かないようにしていました」と広瀬は言う。
おかげで『充電』はバッチリ。「心も身体もリフレッシュできました」という広瀬に、新シーズンの抱負を語ってもらった。
「アタックするイメージをチームに植え付けている」
──1カ月近く体育館に行かなかったということですが、例年とは違うということですよね?
代表に入っているとスケジュールは変わってくるので。それでも今年は特にバスケから離れましたね。食べ過ぎて太らないように軽く走るくらいで、ボールはほとんど触らなかったです。その間、特に特別なことはしていないです。実家に行ったり旅行に行ったり。シーズン中には他のチームに所属している選手とはゆっくり話せないので、こういう時に食事に行ったり。友人の結婚式に呼ばれたり、子供と遊んだり。普通の人と変わらない生活をしていました。
──心身ともにリフレッシュを終え、練習が始まりました。来シーズンに向けての準備は順調ですか?
そうですね、東アジアチャンピオンズカップで韓国にも行きましたし、良い状態になっていると思います。新しく外国人選手も来て、良い選手が揃いましたし、昨シーズンに比べてチームの雰囲気も良いです。
──SR渋谷はヘッドコーチが変わり、勝久ジェフリーが新たなヘッドコーチに就任しました。現状の手応えはいかがですか?
外国籍選手が合流してまだ数回しか練習してないので何とも言えないですが、一緒にやった感じではチームにフィットする選手が来たなと。コーチ陣も増えて、サポートの部分がしっかりしてきました。あとは選手がどれだけパフォーマンスを出すかというところだと感じます。
──勝久コーチになって、バスケットボールのスタイルはどのように変わるのでしょうか。
ディフェンスをして早い展開でバスケットをすることが、コーチのビジョンとしてはあると思います。細かいところを言うとたくさんあるんですけど、去年よりもアグレッシブにリングにアタックしていく部分はありますね。ドリブルなのか、パスで(ロバート)サクレがボールを持つのか、いろいろなパターンがあると思います。現状ではアタックするイメージをチームに植え付けている感じがします。
──アウトサイドとインサイドのバランス、そこが一番の違いですか?
そうですね。あとヘッドコーチが言うのはチームとして一体感を持つということです。去年はどうしても負けが込んだ時にチームがバラバラになったりしたので。一体感を持ってシーズンを戦っていかないと。
「正しいバスケットIQを自分たちのアイデンティティに」
──新しいチームの一番の強みはなんでしょう?
外国人選手が揃って、インサイドはうちにアドバンテージができると思いますし、ディフェンスに意識を持ってやれる選手が揃ったと思います。まずはディフェンスを頑張ることですが、そこから正しい選択をして、スマートにバスケットをすることですね。正しいバスケットIQを持ってやることを、自分たちのアイデンティティにしていきたいです。
──新シーズンは伊藤駿選手がキャプテン、満原優樹選手が副キャプテンに就任しました。元キャプテンとしては肩の荷が下りたといったところでしょうか?
キャプテンじゃないからリーダーシップを発揮しないということではないですが、「キャプテンだから」という変な責任感がなくなって、そこまで意識せずにやれるのかなとは思いまね。
──キャプテンとしてのリミッターが外れて、ノビノビとプレーを楽しめるのでは?
そんなことはないです(笑)。でも自分に限らず、チーム全員がリーダーシップを持ってやらないといけないことは変わらないです。
──チームのスローガンは『Together』ですが、広瀬選手のテーマはありますか?
そうですね、「バランス」を大事にしていきたいなと思っています。身体のバランスもそうですし、チームメートとの関係もそうです。偏っちゃダメというわけではなくて、何がその時に大事なのかということを見極めて、バランスを意識しながらやっていきたいです。