「身体を張るのが私の仕事だし、生き甲斐」
3人制バスケ『3×3』のU23ワールドカップに挑んだ女子日本代表は強豪を次々と撃破し、決勝では最強国ロシアに競り勝って大会を制した。山本麻衣と永田萌絵はド派手なスキルで得点を量産し、馬瓜ステファニーも非凡な身体能力を生かし攻守にフル回転。その一方でセンターの西岡里紗は、世界を相手に高さとフィジカルで圧倒されないように踏ん張る役割を担った。186cmの西岡がインサイドを支えられなければ、どの試合でも日本に勝機はなかったはずだ。
「日本の弱みである高さの問題を私がどう頑張るか、みんなで支え合ってたけど、その中でも身体を張るのが私の仕事だし、生き甲斐だと思っています」と西岡は自らの仕事を誇る。
それと同時に「何か違うところで活躍しちゃったところもあるんですけど」と屈託のない笑みもあった。そう、本数は多くなかったがいくつかの試合で西岡がアウトサイドに開いて決めるシュートが勝利の決定打となっていたのだ。
「日本では私も大きくてセンターでゴリゴリやるんですけど、3×3で海外に出ると190cmを超えて私よりずっと大きな選手もたくさんいます。そこにポストプレーで戦うんですけど、たまには外もやっていかないといけないと挑戦したのがアウトサイドのシュートです。私自身、これまで3ポイントシュートは自分のチームでも打ったことがなく、今年から打ち始めました」
練習を重ねたアウトサイドシュートが日本の秘密兵器に
記録を見ると、三菱電機コアラーズではデビューシーズンに2本放っているだけで、3ポイントシュート成功は4シーズンでゼロ。それでも今回のワールドカップでは優勝に欠かせない2発が飛び出した。まずは2戦目のイタリア戦。19-20と追い詰められた状況、西岡の2点シュートが逆転でのKO勝利をもたらした。もう一つは決勝、ロシア相手にリードしながらも追い上げられる苦しい終盤、相手の粘りを断ち切る一発も西岡のアウトサイドシュートだった。
「もともと打っていないし、ボールも重たいし、最初は届きませんでした。でも長谷川(誠)さんを始めコーチの方にすごく教えてもらって、練習後も打ち込みを手伝ってもらい、決まった時はその人たちの顔が浮かんですごくうれしかったです」
ちなみに西岡のアウトサイドシュートはセットプレーではなく流れの中から生まれたもの。全員が攻め気を持ってプレーし、山本と永田に相手が寄ったところでパスが出た。勝負どころでパスが出るのは、練習を重ねてきた西岡への信頼に他ならない。「外せない場面でしたけど良いパスをくれたし緊張もせず、外れる感覚がなくて『あ、入るな』という感じでした」
「3×3で得たことも自信に、過信にはならないように」
代表選手たちは帰国してすぐそれぞれのチームに戻る。三菱電機は昨シーズンに急成長を見せてファイナルに進出した。西岡が3×3で得た成長と経験を還元できれば、さらなるチーム力アップも見込める。次のステップとして目指すのはもちろん優勝で、西岡も「12連覇はさせたくない」と、『女王』JX-ENEOSサンフラワーズを止めてのリーグ制覇に意欲を見せる。
ただ、優勝するためにはインサイドでの争いで西岡が、JX-ENEOSの渡嘉敷来夢やデンソーアイリスの髙田真希といった、5人制日本代表のインサイドを支える選手たちとのマッチアップで勝つことが必要となる。今回の3x3U23ワールドカップの経験は、A代表の『生きる伝説』たちを倒すきっかけになるのだろうか。
「4連覇したアジアカップの試合も見ていましたが、やっぱりすごいと思いました。でも、私たちも優勝という目標に掲げているので、その目標に対して私も頑張らないといけません。今年も3×3の活動はありましたが、三菱はチーム力を掲げていて、5年間やってきている仲間の絆があるので、そこを大事にしたいです。上を見ながら、でも昨シーズンにあそこまで行ったことで警戒されて、今まで以上に厳しい戦いになると思うので、一戦一戦まず勝っていきたい」
「3×3は5人制と違ってフィジカルなプレーが多く、ファウルもあまり鳴らないので、その中で身体の当たりのところは結構強くなったし、そこは5人制にも生かせると思います。3×3で得たことも自信に、過信にはならないようにやっていきます」
世界のタフな試合を勝ち抜いて優勝した経験が、Wリーグの序列を崩す力になるのかもしれない。三菱電機に戻った西岡が3×3で得たものをどう生かせるかに注目したい。