全員が走り、リバウンドに飛び込むことで流れを呼び込む
昨日、Wリーグの2019-20シーズンが開幕した。大田区総合体育館で15時半開始となった東京羽田ヴィッキーズvs山梨クィーンビーズは、昨シーズン2勝しか挙げられなかった山梨が、プレーオフでクォーターファイナルまで勝ち上がった東京羽田を押し切って73-61で勝利。ただ、本当のアップセットはナイトゲームのJX-ENEOSサンフラワーズvs富士通レッドウェーブで起きた。
リーグ11連覇と圧倒的な強さを誇る『女王』JX-ENEOSは、日本代表の主力である渡嘉敷来夢と宮澤夕貴を軸に、さらに188cmのセンター、梅沢カディシャ樹奈も含めた3人でリバウンドを制することで主導権を握る。それでも、富士通はヘッドコーチのBTテーブスが「積極的なディフェンスを仕掛けて、それがうまくいった」というトラップを多用する守備でJX-ENEOSの勢いを止めて、互角の勝負に持ち込んだ。
高さとフィジカル、個人技ではJX-ENEOSが上だが、富士通はスピードと運動量で対抗する。町田瑠唯のパスに呼応した山本千夏が走るファストブレイクにより、梅沢をファウルトラブルに追い込んだことが、試合の流れを大きく変えた。
渡嘉敷と梅沢、宮澤と長身選手にリバウンドが偏るJX-ENEOSに対し、全員が足を動かしてボールに飛び込む富士通は前半だけで出場10選手中9人がリバウンドを記録。さらに梅沢のファウルトラブルにより、アジアカップの疲労が残る渡嘉敷と宮澤が前半フル出場したことで、第3クォーターになって動きが落ち、この10分間で富士通がJX-ENEOSを20-5と圧倒する。選手もボールもよく動く上に、篠崎澪のドライブが冴えわたり、JX-ENEOSは抑えどころを見いだせない。疲労の色濃い渡嘉敷が初めてベンチに下がった第3クォーター残り2分で47-33と富士通が14点リード。勝敗は決したかに思われた。
肉薄するJX-ENEOS、踏ん張って突き放す富士通
それでも51-34で迎えた第4クォーター、タイムシェアしていたにもかかわらず飛ばし続けた富士通の足が止まり、どちらも疲れが見える消耗戦となると、百戦錬磨の渡嘉敷の個人技が猛威を振るう。ダイナミックな動きで攻守に目立っていたオコエ桃仁花が個人ファウル4つでベンチに下がったことも、富士通の失速を招いた。富士通はアタックするもレイアップに持ち込めなくなり、3ポイントシュートも決まらず、リバウンドも球際でJX-ENEOSに負けるようになる。
こうなると追われるプレッシャーによりミスも出てくる。残り1分、渡嘉敷のアタックはファウルでしか止められず、フリースローで59-56と1ポゼッション差に肉薄される。ここでJX-ENEOSはオールコートプレスでジャンプボールシチュエーションに持ち込み、ポゼッションを奪取。一度追い付かれたら到底耐えきれないというプレッシャーを富士通に掛けてきた。
ただ、富士通はここで踏ん張り、粘りのディフェンスで失点を許さない。残りわずかな時間、ボールを託されたのは篠崎。絶対にミスの許されない場面、プレッシャーをかわしながら時計を進め、残り8秒で一瞬のズレを見逃さずにミドルジャンパーをねじ込んで61-56。この一撃がダメ押しとなり、富士通が開幕戦で『女王』を撃破している。
殊勲の篠崎澪「踏ん張って勝てたのは私たちの成長」
第3クォーターの得点ラッシュに、勝利を決定付けるクラッチシュートと大暴れの篠崎は、「ディフェンスを40分間頑張って富士通の速いバスケットに繋げられたこと」と勝因を語る。JX-ENEOSの猛追に遭いながらも一度も追いつかれなかったのは大きな収穫。「いつもは第4クォーターで踏ん張れずに逆転されてしまう。今日踏ん張って勝てたのは、一つ私たちの成長です」と語った。
富士通にとっては自信を深められる開幕戦での勝利。JX-ENEOSはケガ人も多く、代表組はコンディションに問題を抱えている上にまだチームにもフィットしていないだけに、このタイミングで当たったことは富士通にとって大きなチャンスと言える。
今日の第2戦で勝つことができれば富士通にとっては本当に大きい。ただ、相手も『女王』の威信にかけて立て直してくるだろう。今日の第2戦、開幕早々ではあるが両チームにとってシーズンを左右する一戦となるかもしれない。