現役復帰を決断した吉田亜沙美、オリンピックに向け「人生懸けて進んでいきたい」

現役復帰を決断した吉田亜沙美、オリンピックに向け「人生懸けて進んでいきたい」

2019/09/28

吉田亜沙美

「覚悟を持っていかないと戻った意味がない」

今月上旬、電撃的な現役復帰を果たした吉田亜沙美が、第21回Wリーグ開幕記者会見の後に行われた記念パーティにアンバサダーとして出席した。

昨シーズン終了後に現役引退を発表してから約半年、彼女が再びコートに戻ってくる決断をした最大の要因は東京オリンピックだと吉田は言う。

「来年の東京オリンピックがなかったら復帰しようとは思わなかったです。これがもし、東京ではなくて他の国でオリンピックだったら、また話は変わっていたかもしれません。現役中に日本でのオリンピック開催はめったにないことなので、人生を懸けて進んでいきたいと思います」

振り返れば3月25日の引退会見で、吉田は「気持ちがついてこない」ことを現役引退の一番の理由に挙げた。それは、彼女が何よりも気持ちを大事にした選手だからこそのプライドであった。

だからこそ今、プレーすることへの気持ちを聞くと「覚悟は持っています」と力強く言う。

「6カ月間バスケットから離れて、いろいろな感情と向き合ってきました。そこでやっぱり現役として戻りたいとなった時に、覚悟を持っていかないと戻った意味がないと思います。日本代表に挑戦する覚悟を持ち、今シーズンJX-ENEOSサンフラワーズの一員として2冠を達成できるように貢献していきたいです」

そして復帰するからには、脇役で留まらず中心としてチームを引っ張る存在になりたいと続ける。「まだトレーニングを始めたばかりで、どうなるのか分からないです。ただ、もちろん、やるからにはスタートで出たい。スタートで出て、試合を重ねて、自分もレベルアップしていきたいと思っています」

吉田亜沙美

「代表は今までやってきたってだけでは選ばれない場所」

ちなみに吉田は、8月末に埼玉で開催されたチャイニーズ・タイペイとの強化試合を解説者として観戦。試合後にはメディアが取材するミックスゾーンで選手たちと話す姿が見られた。

「あの時はもうすでにチャレンジしたいという気持ちは固まっていました」と現役復帰へ決断をしていた吉田は、今の代表についてこう語る。

「あの時のままだと、オリンピックで金メダルを取るのは、なかなか難しいかなと思いました。でもその中でも、若手が成長してきたり、渡嘉敷(来夢)が戻ってきたりとプラスになっている部分もあります。だけどさらに成長するためには、これからリーグ戦を通してまた一人ひとりがステップアップしていかないといけないと感じました」

周囲は、吉田が復帰となればすぐにこれまでと同じプレーを見せてくれると期待してしまうもの。だが、彼女にそういった楽観的な見方はない。これまで故障による長期離脱も経験しているが、そこからのカムバックよりも今回は難しいと考えている。

「引退した後、全く何もしていなかったので筋力も落ちているし、体力もありません。そこは本当にこれまでとは違った自分の身体でバスケットをして戦わないといけない状態です。ケガから復帰する時よりも難しい部分があるとは感じています」

また、吉田にとって代表復帰を目指してはいるが、まずは自分の現役復帰を受け入れてくれたJX-ENEOSへの恩返しが先である。そして、所属チームでしっかり結果を残すことなしに、代表への道は拓けないと考える。

「このリーグ戦が私にとって一番大事なものだと思っています。ここでしっかり吉田亜沙美という存在をアピールしていかないと、代表候補にも選ばれない。代表は今までやってきたってだけでは選ばれない場所で、まずはこれからJX-ENEOSの選手としてしっかりしたパフォーマンスを見せないといけないです」

吉田亜沙美

「バスケットの魅力に取り込まれて、また戻ってきた」

そして約半年であるが、引退したことで吉田があらためて実感したこと。それは、自分にとっていかにバスケットボールが大きな存在であるかだ。

「小学生から引退するまで、ずっとバスケットの勝負の世界で生きてきました。これがなくなった時に、リフレッシュできて楽しいけれど、目標がなくなって何か物足りなく感じた部分はありました。バスケットの魅力に取り込まれて、また戻ってきたという部分があります。どれだけ自分がバスケットを好きなのかというのも思い知らされました」

最後に、この取材で吉田が何度も口にしたのが冒頭でも触れた『覚悟』だ。「応援してくださる方だけではなく、まだ私の復帰に納得されていない方もいると思います。自分がどれだけ覚悟を持って決断をしてきたのか、それはプレーで表現していくしかない。より一層、覚悟を持ってバスケットに取り組むのは以前とは違った形で成長できる部分で、そこはきっとこれからも変わっていけるところだと思います」

フィジカル、実戦の感覚など半年のブランクで失った部分は確かにあるが、一方でバスケットから離れたことで、あらためて気づいた発見であり、得られたものもある。10月4日のWリーグ開幕戦、JX-ENEOSの対戦相手である富士通レッドウェーブの司令塔は今、代表の先発を務める町田瑠唯だ。吉田の現在地を知る上で、これ以上ないマッチアップであり、より強い覚悟を背負ってコートに戻ってくる彼女がどんなプレーを見せくれるのか、今から試合が待ち遠しい。

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