本川紗奈生

初めて覚えたドライブへの不安

女子日本代表は4連覇を懸け、アジアカップに臨む。

指揮官のトム・ホーバスが理想とするトランジションバスケットでは3ポイントシュートが重要なファクターとなり、1番から5番まですべての選手が3ポイントシュートを打つスタイルを構築している。

その中で今、3ポイントシュートの成功率が最も高い選手がスラッシャーの本川紗奈生だという。「シューターっぽくないしドライブの選手だけど、本川が一番入っている。47%ですよ。ボールをもらった時にドライブだけじゃなくてシュートもあって、彼女は今いろいろやっています」とのホーバスコーチのコメントからは、本川への期待がうかがえる。

本川にその話を伝えると「トムさんから言われるなんて思ってなかったです」と驚く。ホーバスコーチから褒められることはほとんどないようで、笑顔を見せた。「そう聞くとうれしいですね。私はドライブが専門だから、ドライブに行ったほうが良いのかなって迷いがあったので」

本川の一番の武器は相手守備陣を切り裂くドライブ。しかし、最近はそのドライブの調子が思うように上がっていないという。

「これまでにドライブに自信が持てなかったことはないんですけど、当たりに対して自分が消極的になっているのか、あまりできていないんです。みんな私がドライブって分かっていて警戒するので、なかなか抜けないです」

本川紗奈生

「シュートが入るならドライブに行けばいい」

もちろんチームメートは本川の得意なプレーを熟知しており、練習でのマッチアップであってもそれを潰そうとしてくる。個の能力が高い選手しか存在しない合宿ではディフェンスの強度も高く、抜き去るのは容易ではない。

だが、ドライブが不調な原因はそれだけではない。本川は現在27歳。バスケ選手としては脂の乗った時期に当たるが、いずれやってくる衰えの足音が聞こえ始めているという。

「自分は10年くらいずっとスラッシャーとしてやっているので、トップスピードから落ちてるのは分かります。去年に比べて落ちてるとも思いますし」

アスリートである以上、衰えは誰にでもやってくる。素人目にはそう映らなくても、本人にしか分からない感覚があるのだろう。だが、本川はこうした問題にも正面から向き合い、ホーバスコーチからの助言でしっかり前を向き始めている。

「年々落ちるのは当たり前。それが今なのか、30歳になってからなのかは分からないけど、自分が一番分かるでしょ、ってトムさんに言われて。そういう時こそ頭を使って、会話をして。ドライブがあるんだから、もっとシュートを狙っていけばいいし、シュートが入るならドライブに行けばいいって思うようになりました」

アーチを上げたり、シュートリリースの高さを変更するなど、そうした努力が実を結び、3ポイントシュートの成功率は向上した。

「何本も打たないけど、確実に決められている。その1本が大事」と言うように、相手に3ポイントシュートがあることを意識させられれば、本川のドライブはさらに生きるはずだ。

本川紗奈生

「勝つために自分に何ができるかしか考えてない」

サイズアップが進む状況で、熾烈な2番ポジションの先発を勝ち取ったのが赤穂ひまわりだ。本川はシックスマンとして大会に臨むことになるが、「ひまが思い切りやってくれるようなサポートができたら」と、チームで戦う姿勢を強調した。

「自分は後から入ってもひまのサポートをして、ひまがうまく回るような形にしたい。ひまがどれだけ思い切りできるかが大事ですし、それこそチームで戦っているのでそこに徹したいです」

長年守った先発の座を奪われたたのだから、悔しさが先に出てもおかしくないはずだが、本川にそうした思いはない。それは「AとかBとかは思っていません」という、考え方が根本にあるからだ。

「シックスマンが出た時に私はありがとうという気持ちで、バトンタッチみたいな感じで渡してたんです。次はあなたの番、その人がダメだったら次は私がやるよって。それが逆になっただけなので。私は変わらずそのメンタルで行けるし、支えてあげたいって。勝つために自分に何ができるかしか考えてないです」

ドライブが不調な状況で3ポイントシュートに磨きをかけた。先発の座を譲ろうが、プレースタイルを変えようが、チームの勝利だけを見据える本川の存在感はいつまでも変わらない。