鼻骨骨折も「再び折れる心配は全くなくプレー」
女子のアジアカップが9月24日に開幕する。日本代表は、渡嘉敷来夢が復帰したことでインサイド陣の大きな戦力アップに成功し、4連覇に挑む。渡嘉敷と髙田真希の4番、5番コンビは実力、経験ともに申し分なく日本のアドバンテージとなる。だが、『ストレッチ4』として強化試合で結果を残した谷村里佳がひざの炎症でメンバーから外れ、2人に続くベンチメンバーには不安が残る。それだけに長岡萌映子にかかる期待は大きい。
長岡は8月の中国遠征の試合で相手の肘打ちを受けて鼻を骨折。8月下旬に開催されたチャイニーズ・タイペイとの強化試合を欠場した。まだ完治していないため、アジアカップでは「オーダーメイドで作ってもらい、鼻以外のところは極力スペースを空けてもらいました」というフェイスガードをつけて出場する。
鼻の骨折直後であれば、激しいコンタクトの多いゴール下でのプレーに躊躇が生まれてもおかしくない。しかし、長岡にそういった心配は不要だ。
「もともとゴール下での競り合いで骨折したわけではないので、メンタル的に密集地帯に行けない、中に突っ込めない、といったことはないです。トレーナーさんたちは私の鼻を気にしてくれていますが、練習で顔に接触があってコートの外に出た後、すぐに中に突っ込んで行ったのを見て『すごいな』と言われました。その時、私自身は再び折れる心配は全くなくプレーしていました」
「役割が違っても求められていることは一緒」
冒頭でも触れたが、ここまでの練習の布陣や強化試合の起用法を見れば、長岡は先発に故障者などアクシデントがない限り、シックスマンでの起用となるだろう。ベンチメンバーが先発を奪い取りたいと虎視眈々とプレーすることは、チームの活性化といった観点からは大事な要素だ。ただ、長岡は「先発でやりたいという気持ちを持つことも必要だと思います」と語る一方で、今の自身がそういうスタンスでいることはチームのためにならないと考える。
「もう試合の1週間前で、今の自分がそういう考えでいるのはわがままになります。役割はコーチが決めること。スタートは違う人かもしれないですけど、出る時間はゼロではないですし、良いプレーをすれば使ってもらえます。先発でなくともチームに何ができるか。そういうところは去年のワールドカップで学んだので、気持ちの切り替えはできています」
長岡の具体的な役割は、オールラウンダーとして周りの状況に臨機応変に対応することだ。
「例えば、得点を取れれば取りにいきますが、シュートの調子が悪い場合は違う仕事をするだけです。シュートタッチが悪いのに、どんどん狙いに行くのはわがままになるので、そういう時はチームメートを生かす仕事をします。自分はいろいろなことをできると思っているので、何かにこだわることはないです」
そして「役割が違っても求められていることは一緒です。出る機会はあると思うので自分のプレーに自信を持ってやるだけ」と言い切る。
「この2人との交代を任せられるのは自分しかいない」
男子のワールドカップが示すように、1試合を通して激しいフィジカル、運動量が求められる世界トップレベルの戦いを、先発メンバーに大きく依存するチームで勝ち抜くことは不可能だ。渡嘉敷が復帰したからこそ、東京オリンピックでのメダル獲得へ向けてベンチメンバーの底上げはより重要になる。長岡はその特効薬になれる存在であり、本人もその思いは強い。
「代表チームでも最近はそれなりにスタートで出ていたので、ベンチスタートは久しぶりの新しい感覚です。オリンピックまで渡嘉敷、髙田の先発陣は外せないと思います。ここで自分がスタートで出たいと意地を張っていくことより、今はこの2人との交代を任せられるのは自分しかいない、と思われるようになりたい。そのためにベンチからどう出て頑張ればいいのか、そこを勉強する大会にもしたいと思います」
去年のワールドカップでは、日本のゴール下はプレータイムが偏り、髙田に頼りきってしまっていた。しかし、渡嘉敷が不動の先発を担い、長岡が変幻自在の役割をこなせるシックスマンとしてガッチリはまれば、インサイド陣は昨年以上に大きなアドバンテージとなるはずだ。