代表初選出も「複雑な気持ちがありました」
女子日本代表はアジアカップ4連覇に向けて、第10次合宿を行った。その中で、初招集の選手として注目を浴びたのが渡邉亜弥だ。
選出された喜びを聞こうと取材したが、渡邉は複雑な気持ちがありました」と語る。「候補に入っていなかったので、この場所に来て戦っていいのかという迷いもありましたし、本当にやれるのかという思いもありました」
「もともと入ってる人がいたので、自分がここで入るべきなのかな」。そんな思いを抱くのも無理はない。代表の常連だった藤岡麻菜美がケガのためプレーできなくなった事情があったからだ。
それでも現在はそうした思いを振り切り、「みんなと目指すところにベクトルを合わせて切り替えました」と、どんな形であれ代表に選ばれたことを受け入れて前に進んでいる。
指揮官のトム・ホーバスが目指すバスケットには様々なルールがあり、初めて代表に選ばれた選手は総じてシステムを覚えることに苦労する。渡邉も例にもれず「今はいっぱいいっぱい」と話した。
「今まで候補には何度も呼んでもらったことがありますが、深入りして理解する前の段階で終わっている部分が多かったので。それを短期間で覚えないといけないですし、難しいです」
ホーバスコーチも太鼓判「絶対にチャンスがある」
代表ではポイントガードとして登録されているが、渡邉の一番の適正ポジションはシューティングガードだ。さらに言えば、昨シーズンは平均15.2得点を挙げ初のベスト5に選出されるなど、所属する三菱電機コアラーズではスコアラーとして活躍している。
渡邉の1番起用にはサイズアップの意図がある。ホーバスコーチは以前「渡邉のプレーが好きだけど、2番としては小さい」と、代表候補から外したのは苦渋の決断だったことを明かしている。それでも「僕のシステムの中で迷わず自分のバスケットボールをやってくれれば、絶対にチャンスがある」と、期待を寄せる。
渡邉も自分の持ち味である得点力をアピールしたいと考えている。「トムさんにも自分のプレーを失わずにやってほしいと言っていただいたので、フォーメーションもあるんですけど、ピック&ロールからのジャンプシュートだったり、ピックから攻めることをやっていきたい」
自分の個性を生かしつつ、代表のシステムにアジャストすることは決して容易ではない。普段とは違うポジションでのプレーに戸惑うことも少なくないが、仲間の助けもあって順応し始めているという。
「1番で出てるという責任もあるので、周りを生かさないといけないのも事実です。本来のプレースタイルとは違う部分でまだ迷いだったり、苦労したりするところはあるんですが、周りに助けられてできるようになってきました」
代表選出を素直に受け入れられなかった渡邉だが、それでも今は「12人に入ったことを自信に繋げたい」と、前だけを向いている。アジアカップでのパフォーマンスに注目したい。