「代表監督としての経験をバスケ界に還元するのが役割」
栃木ブレックスは今日、トーマス・ウィスマンに代わる新たなヘッドコーチに長谷川健志が就任することを発表した。
長谷川は1989年から2013年まで青山学院大の男子バスケットボール部の監督を務め、インカレ優勝を4度果たした他、現在のBリーグを代表する選手を多数育ててきた。
2014年には男子日本代表監督に就任。2015年のアジア選手権でベスト4に入り、昨年のリオ五輪の世界最終予選(OQT)への参戦資格を得た。しかし、『超ハードワーク』をキーワードに戦ったOQTではラトビアとチェコに連敗し、『世界の壁』に屈する結果に。昨年11月末日付けで、2018年3月までの任期を残して日本代表ヘッドコーチを退任した。
大目標だったリオ五輪への出場は果たせなかったが、就任から男子日本代表の強化に尽力し、OQTに参加する権利を手にしただけでも、男子日本代表にとっては大きな進歩。選手のモチベーションを刺激し、チームを一つにまとめる長谷川の手腕あってこその『進歩』と言える。
「志半ばで、悔いはあります」と正直な気持ちを打ち明けながらも、「OQTまで行きましたが、そこで1勝もできなかったことには責任があった」と、リオ出場を果たせなかった責任を取った形での退任。その時点で今後について「代表監督として様々な経験を積ませてもらった。これを何らかの形でバスケ界に還元するのが私の役割」と語っていた。しばらくの休養を経て、栃木ブレックスのヘッドコーチという形で現場復帰を果たすことになった。
長谷川は就任発表に際し、クラブを通じて次のようなコメントを発表している。
「チーム創設から10年間成長を続けBリーグ初代チャンピオンのブレックスのヘッドコーチをお引き受けするのは、身の引き締まる思いがいたします。勝利という大きな成果を得るためにも変化に挑戦し、小さな事を実行し、何よりもチームワークを大切にして行きたいと思っています。これからも情熱あふれる多くのファンの皆さん、クラブスタッフ、選手がひとつになっている素晴らしい環境のリンク栃木ブレックスを応援してください。よろしくお願いします」
「技術はもとより彼がいることでチームが落ち着く」
今回の人事で興味深いのは、長谷川と田臥勇太の関係だ。OQTに挑む日本代表で最も印象的だったのは田臥が4年ぶりに日本代表のユニフォームに袖を通し、キャプテンとしてチームを引っ張ったこと。上のコメントにもある通り、長谷川はチームワークを大切にする指揮官。OQTという代表における最大の挑戦に際し、長谷川は田臥を説得して日本代表復帰を実現させた。
当時、長谷川は田臥をこう評価している。「技術はもとより彼がいることでチームが落ち着き、大きな波がなくなるんです。若手への影響力も多大で、日本代表チームに必要な存在であることを改めて実感しました」
Bリーグ初年度の王者となった栃木だが、今オフは古川孝敏を始め主力の流出が相次いだ。栃木にはもともと『育成型クラブ』の面もあるが、今後はその比重を高めていく必要があるはずで、そこに長谷川を起用する意味がある。OQTを目指した日本代表と同様、長谷川が若手を我慢強い指導で伸ばし、コート上では田臥が強いリーダーシップで引っ張っていく、そのタンデム体制が見られるはずだ。