
「良いバランスを取れるように意識しています」
昨シーズンのチャンピオンシップ出場クラブがこぞって指揮官を交代する中、群馬クレインサンダーズは唯一ヘッドコーチが続投となった。その意味でも群馬は、他のクラブよりチーム作りがスムーズだと言っても良い。
昨シーズンの平均失点がリーグトップの73.0を記録した群馬は堅守のイメージが先行するが、オフェンスレーティング(100ポゼッションでの平均得点)でもリーグトップの120.6を記録。攻守両面で高い完成度を見せた群馬は、昨シーズンにセンセーショナルな活躍をして、長崎ヴェルカの優勝に貢献したスタンリー・ジョンソンを獲得。盤石な体制を築く群馬はレバンガ北海道とのプレシーズンマッチ『Bリーグマニラゲーム2026』に挑み、第1戦を98-81、第2戦はオーバータイムの末に101-91で勝利した。
昨シーズンのリーグ日本人トップスコアラーで、第2戦では34得点を挙げた富永啓生を擁する北海道に対して、ハイスコアゲームを制することができた理由の一つにジョンソンの加入もある。司令塔の中村拓人も「加入してまだ数カ月ではありますが、すでに本当に良い感じでプレーできています」と言い、ジョンソンについてこう続けた。「彼の持ち味が発揮できればチームに良いリズムを与えてくれます。何より彼のボールを持った時の引力というのはすさまじく、彼がいるからこそシューター陣が空いたり、スペースができたりするので本当に一緒にやっていて頼もしいです」
ジョンソンの加入によってまた一つオフェンスの破壊力が上がった群馬だが、第2戦ではジョンソンとエースのトレイ・ジョーンズがファウルアウトする展開に。得点源の2人を失ったことで、中村は司令塔からスコアラーへ役割を切り替えチームハイの25得点を挙げた。しかし、当の本人は反省を口にする。「なかなか上手く行かなかった時に、チームとして共通認識を持つことができていなかった時間帯が少し長かったと思います。綺麗にバスケットボールをしすぎた結果です」
中村が語るように、第2クォーターと第3クォーターではキックアウトを多用するあまりフィニッシュが決まらず、停滞する場面も見られた。それでも、コントロールすることからスコアを優先し、実際に得点を量産した彼は、どこか余裕を持ってプレーしているように見えた。
「得点が取れるタイミングがあれば取りに行きますが、今のチームは本当に良い選手が揃っているので、僕はバランスを考えています。もう少しシンプルに打ち切れる場面もありましたが、自分の中で躊躇しているつもりはありませんでした」
バックコート陣の核であるジョーンズや藤井祐眞が、昨シーズンのチャンピオンシップではレギュラーシーズンに比べて平均得点を落とす中、中村はそれをカバーするように2得点以上の伸びを見せた。中村は試合の局面に合わせて自身の役割を変化させることができるからこそ、2人を失った第2戦ではスコアラーとしてのスイッチが入った。
「最後のほうは自分でアグレッシブに行かないといけないと感じていて、ああいった局面では自分が取りに行かなきゃいけないと思っていました」。そう語るようにオーバータイムでは藤井とともに、オフェンスを牽引して5得点を挙げ、勝利を手繰り寄せた。
今シーズンの群馬の攻撃力は、さらに火力を増している。しかしその噴出口の方向を揃えなければ推進力は生まれない。中村がバランサーとしての役割を今シーズンに全うすることができれば、他を寄せ付けない破壊力でリーグを席巻することになるだろう。