ニコラ・ヨキッチ

「普通の生活が本当に恋しい」

ナゲッツのニコラ・ヨキッチは3度のMVPを獲得し、世界最高のバスケットボール選手としての地位を確固たるものにしている。コート上では圧倒的なバスケットIQと変幻自在のパスで観客を魅了するが、コートを離れた彼は『スター選手』としてのスポットライトに困惑している。

母国のポッドキャスト番組『Jao Mile Podcast』に出演したヨキッチは、有名人として過ごす日常のストレスと、公人としてのあり方について本音をぶちまけた。

「普通の生活が本当に恋しい。人気や有名であることにどんどん嫌気がさしているんだ」

そう切り出したヨキッチは、プライベートの時間を侵されることへの疲弊を隠さなかった。「声をかけてくる人に対して前より素っ気ない態度をとるようになっている。失礼に聞こえるかもしれないけど、プライベートの時間にはファンと写真は撮らない。11年も12年もこれが続いていて、いい加減限界なんだ。まるで動物園に来て写真を撮られているような気分になる」

また、彼は「アスリートは子どもたちのロールモデルになるべきだ」という世間の風潮に対しても持論を展開した。「若者が僕を手本にする必要はない。子どもたちに本当の影響を与えるのは、遠くのスターではなく身近な家族や友人であるべきだ。僕自身、若い頃から何が正しくて何が間違っているかを自分で判断してきた」

ヨキッチのこのスタンスは、単にファンを嫌っているわけではない。彼にとってバスケットボールは「世界で最も得意な職業」であり、人生の主役はあくまで故郷での生活にある。

超高額な年俸を稼ぎ出し、世界的なスターとなった今でも、ヨキッチのオフの過ごし方は一切変わらない。他のスター選手が豪華なリゾート地やセレブが集まるイベントに足を運ぶ中、彼はシーズンや代表活動が終わると生まれ故郷の小都市ソンボルへと直行する。

セルビア代表として銅メダルを獲得したパリ五輪の直後も同様だった。激闘を終えた翌日にはすぐにソンボルに戻り、地元の競馬場でビールを手にレース観戦を楽しむ姿が目撃されている。ヨキッチの父・ブラニスラブは地元メディアの取材に対し、息子がどれだけ成功しても変わらない理由をこう明かしている。

「ニコラはシンプルな暮らしを楽しんでいます。私たちは彼の馬に対する愛情を満たすため、競馬場を建設する予定です。彼は派手な暮らしに興味がありません。ここで好きな音楽を聴き、幼なじみの友人たちと行きつけのバーに行く。彼は新しい友人を作ろうとはしません。バスケットボールと馬に関連する人々以外が、彼と親しくなるのは非常に困難です」

2023年にナゲッツを初のNBA王者に導いた直後、優勝の余韻に浸る間もなく「仕事は終わった。これで家に帰れる」と漏らし、優勝パレードの日程を聞かされて「日曜には家に帰らなきゃいけないのに……」と露骨に嫌そうな顔を浮かべたエピソードは今や伝説だ。

NBAのMVPトロフィーをナゲッツのフロント陣が授与しに来た際も、ヨキッチは豪華なパーティー会場ではなく、ソンボルの自宅近くにある馬小屋の前で、短パンにTシャツ姿で受け取った。愛馬の車に揺られながら見せた少年のような笑顔こそが、彼の真の姿だ。

高級ブランドにも、派手な交友関係にも関心を示さず、愛する馬と昔からの友人を心から大切にする。コート外で「ソンボルの素朴な男」であり続ける強固な軸を持っているからこそ、彼はコート上でどれほどのプレッシャーに晒されてもブレることなく、世界最高峰の座に君臨し続けられるのだろう。