出陣式では「めちゃくちゃ緊張しています……」
川崎ブレイブサンダースは9月5日に川崎大師(神奈川県川崎市)で出陣式を行い、米須玲音のキャプテン就任を発表した。副キャプテンという役職は設けず、メンバー全員で米須をサポートする。
出陣式の前の空き時間、米須は珍しく弱々しい口調で「(出陣式は)キャプテンということもあってめちゃくちゃ緊張しています……」と漏らした。出陣式では就任あいさつ以外にも、スローガンの発表・説明、必勝祈願のだるまの目入れなどやることが多く、川崎大師に向かうチームバスの中では必死にスピーチの練習を行っていたという。
キャプテン就任の打診は、日本代表の一員として参加していた『ウィリアム・ジョーンズカップ』の大会中、桶谷大ヘッドコーチから受けた。「桶谷さんからLINEメッセージが届いて、『(ジョーンズカップが開催されている)台湾はどう?』みたいなメッセージの後に『キャプテンになってほしい』と。自分ではもう覚悟していたので、『いつかこういう時が来ると思っていました』と強い気持ちを伝えて、引き受けさせていただきました」
『Bプレミア元年』という大きな節目のシーズンに、プロ2シーズン目の23歳にキャプテンの大役を担わせる。はたから見ればいささか突飛なアイディアと感じるかもしれないが、桶谷ヘッドコーチは「人は、良いこともそうでないことも自分ごととして経験することで成長する」という考えの持ち主で、米須がそれに足る器の持ち主だと判断したからこその抜擢だったのだろう。
前述の言葉からも分かる通り、米須自身もそのような役を早くから担うことを待望していた。自認は「2年目」ではなく「もう在籍が長い」。高校3年時、大学1年時、そして大学4年時の特別指定を含めたタイムラインで自分の立ち位置をとらえ、「若手という考えを捨てて、年齢関係なしにチームをまとめていきたい」と話した。

プレシーズンゲームに現れていた新たな役割
思えば、8月30日に行われたプレシーズンゲームの千葉ジェッツ戦は、彼が今シーズン大きな役割を与えられることがあちこちから感じられる試合だった。
チーム最長となる26分コートに立った米須は多くの好プレーを見せ、コート上のリーダーとしても力をふるったが、一方でクロージングには課題が残った。第4クォーター残り1分、105-101という状況で自身のターンオーバーから速攻を許して2点差とされると、直後のタイムアウト明けのオフェンスも失敗。逆に千葉Jにシュートを決められ、105-105の同点で終戦した。
前日の仙台89ERSも、途中大量リードを奪いながら最終盤にまくられ同点で終わった。米須は「今日も昨日も自分が試合を決めることができなかった」と悔やみ、千葉J戦に関してはBリーグ入り後初のダブル・ダブル(15得点10アシスト)を達成したにもかかわらず、「最後のターンオーバーの印象が悪すぎてスタッツも見たくない」という状態だったため、それに気づきもしなかった。
桶谷の懐刀として代表活動で不在時の全権を預り、この2試合の指揮をとった勝久ジェフリーアソシエイトコーチはこう言った。
「クロージングでどのような共通認識を持つかについてはこれから決めていくことになりますが、今あえて名前を挙げるとしたら、最後は米須選手にオフェンスを作ってほしいという思いはあります。今日は相手のプレッシャーに対してボールを失いましたけど、彼のゲームセンスと判断を信じているので、ミスになってもいいから最後は絶対彼にオフェンスをデザインしてほしいという思いを持っていましたし、これからも変わらず勝負を決めてほしいと考えています」
試合後には来場者へのあいさつのために整列を促し、退場前のコート一周の先頭に立ったが、これも当然キャプテンとしての自覚の現れ。「『今日は誰がやるのかな』って思っていたら(前任の篠山)竜青さんがやらなかったので、『あ、多分これは自分がやらないといけないんだ』と。竜青さんからは特に言葉などはかけられていないですけど、今までずっと一緒にいて背中を見てきたからこそ、すごく試されているなっていう感じはしました」と笑った。
過去の取材で「会場が盛り上がれば盛り上がるほど調子が上がるし、パスの視野が広がる感じがする」と話していた米須はおそらく、若くしてキャプテンを務めることも、メインのポイントガードとして勝敗を背負うことも、『重荷』でなく『踏み台』として活用できるタイプのプレーヤーだ。うまくいかないこともあるかもしれないが、それをひっくるめて多くの経験を積み、大きく飛躍するための強い根を育ててほしい。
