8得点と自身は不発も、八村と渡邊を生かすプレーに徹する
8月24日、バスケットボール日本代表はドイツ代表との強化試合に86-83で逆転勝ちを収めた。これまでの実績で格上の相手に、公式戦ではないとはいえ勝ち切れたことはワールドカップ本大会に向けて自信となる。この試合、日本は八村塁が31得点、渡邊雄太が20得点とNBAコンビがチームを牽引。一方、ビッグ3の残る1人ニック・ファジーカスは8得点5リバウンドと、20得点10リバウンド近くをコンスタントに挙げていることを考えると寂しい数字だった。
しかし、この日のファジーカスは、攻撃では全体のバランスを取り、守備でもゴール下で身体を張って相手のビッグマンに思うような仕事をさせないなどいぶし銀の働きを披露した。
一昨日のアルゼンチンとの試合後、ファジーカスはビッグ3の共存において「塁と雄太と一緒にプレーする時はファシリテーターとしてオフェンスを促進させる」と語っていた。そしてドイツ戦は八村、渡邉がともに調子が良かったことで、その発言通りのプレーを披露。「たくさんのセットが塁と雄太に対して組まれていたので、それがうまく行くように動いていた」と2人にどんどんシュートを打たせるべく、自分は黒子役に徹した。
その結果、この日のファジーカスは29分30秒のプレータイムでフィールドゴールの試投数はわずか7本のみ。しかも、そこにはオフェンスリバウンドからのシュートも含まれていて、自分から仕掛けて放ったシュートはほとんどなかったことになる。ちなみにBリーグの試合で彼が30分出場すると、少なくとも約15本のシュートを打つもの。代表においてもワールドカップのアジア予選6試合でも平均31分の出場で、フィールドゴール試投数は19.3本だった。
この状況は「試合に多く出ているのにセットプレーで自分がシュートにあまり絡まないのはNBAでルーキーだった時、マーベリックスで出場したサマーリーグ以来だろうね」と振り返ったように、ファジーカスにとって慣れたものではない。たが、本人はその役割を受け入れ、そこでいかにチームに貢献できるか気持ちの切り替えは万全だ。
「自分のシュート機会は減る」を受け入れて
「自分の得点が少ないことへの言い訳ができる状況ではあるけど、そういうものだと割り切っている。塁、渡邉がハイレベルで得点できるし、僕らはそれを期待している。そうなると自分のシュート機会は減って、スポットで打つだけになる。ワールドカップでも自分がいつものようにシュートを打つことはないと思うけど、そこでも効果的にプレーできるように頑張りたい」
また、「チームは僕のパス能力を高く信頼してくれているし、自分がボールタッチすれば良いことが起こせると感じている」と、シュート以外でもオフェンスで貢献できる部分はあると自信を見せる。実際、この日はアウトサイドでボールをもらうと、ゴール下にカットした味方にピンポイントのパスを通していた。
そして、ディフェンス面については「ドイツは(デニス)シュルーダーのボールタッチが多く、ニュージーランドやアルゼンチンほどにボールを動かすことがなかったので、そこは少し違いがあった」と冷静に分析しつつ手応えもあった。「前の試合のフィルムを細かく分析して、ディフェンスでやるべきことができたので、80点台に抑えられたのは良かったと思う」
ドイツ相手に勝てた意義を「ワールドカップほど大事な試合ではないけど、今日みたいな試合に勝てたことは自信をつける面でもすごく重要なこと」とファジーカスは語る。
日本代表にとっては八村、渡邉、ファジーカスが揃って30分近く出場した初めての試合で、この3人が共存できたことも大きかった。八村、渡邉の活躍はもちろんだが、いつものエースから一歩引いた立場からでもインパクトを与えられたファジーカスの献身ぶりも忘れてはならない。