現状に満足せず進化を目指すプレースタイル

『FIBA女子バスケットボールワールドカップ2026』の本戦出場を決めてから、候補選手に選ばれ続けている19歳の後藤音羽は物怖じせずに強化合宿に挑んでいる。

「目標はオリンピック選手になることなので、ワールドカップの最終選考に残りたいという気持ちが強くなっています」

その高い目標を掲げる理由には両親の存在が関係し、「両親は日本代表に選ばれた経験はありますが、オリンピックに出ていません。私は負けず嫌いなのでオリンピック選手になりたいという気持ちが強いです」と言う。父はアイシンシーホース(現・シーホース三河)で名シューターとして活躍した後藤正規で、母は世界選手権に出場してトヨタ自動車アンテロープスなどでプレーした竹内高美。バスケ界のサラブレットとして知られている後藤はその目標を達成するためにも、ロスター入りに全力を尽くしている。

後藤はU19女子日本代表のエースとして、昨年に行われた『FIBA U19女子バスケットボールワールドカップ2025』でチームトップの平均18.9得点、7.6リバウンドを記録して日本を6位に導いた。世代別代表の常連だった後藤だけに、多少の驚きはあってもA代表入りは順当なステップアップと言える。「こんなに早く選ばれるなんて思っていなかったのでびっくりしましたが、今は選ばれたことに責任を持ってプレーするように心がけています」

最年少での選出だが「コートに入ったら年齢は関係ないので、積極的にプレーしようって思っています」と語り、ともに代表選考を争う選手の中であこがれの選手がいないかという質問に対しても「あこがれではなく超えなくてはいけない存在です」とリスペクトを込めながらも強気な姿勢を見せる。

そんな彼女でも自信を失うこともあるが、頼れる存在が身近にいる。「自分のことを一番分かってくれているので母には率直な思いを話します。自分が思っていることを吐き出すことででスッキリすることもあります」。目標でありながらも心を許せる母の存在は後藤にとって大きな支えとなっているに違いない。

代表生き残りへ、プレー面でのアピールポイントはU19でも証明した力強いドライブだ。「自身の強みはドライブで、そこを意識して取り組んでいます」と本人は語り、コーリー・ゲインズヘッドコーチも太鼓判を押す。「足の速さやクイックネスというより、ギアを切り替えて一気に攻め込む直線的なドライブができる点は日本でも滅多に見られない特別な才能です」

その才能を伸ばすために新たなことにもチャレンジしている。それはツーハンドシュートからワンハンドシュートへのシュートフォーム変更だ。その理由についてこう語る。「ペイントに入って止まったり、ステップバックシュートを打つ時に、ツーハンドだとリングに正対しないと打てません。ワンハンドであれば正対しなくても打てたりするので、プレーの幅を広げるために挑戦しています」

ドライブを得意とする後藤にとって、ペイントエリアに侵入してからのシュートのバリエーションが増えることは大きな伸びしろだ。国際大会では178cmの後藤よりも大きい選手と対峙することが多くなるため、この選択は理にかなっていると言える。「まだ全然シュートは入らないですが、始めた当初よりも感覚は慣れてきていると思います」

ゲインズヘッドコーチは後藤の特別な才能についてもう一つ語っている。「彼女は非常に強く、フィジカル面で優れています。これは教えられるものではなく、彼女はそれを持っています」。両親から与えられたフィジカルとドライブの才能を最大限に生かすことができれば、オリンピック選手になることも可能だろう。2人が達成できなかった境地への挑戦は続いていく。