JJ・バレア

「NBAは大好き、働くなら最高の舞台に行くのがベスト」

NBAサマーリーグは若手の登竜門として知られるが、野心を持ったコーチにとってもステップアップの大きなチャンスだ。NBAのヘッドコーチのポストは30しかなく、選手以上にその門は狭い。サマーリーグではあっても『現場の責任者』としてチームマネジメントと選手の成長、そして勝敗に責任を持つことは、若いコーチにとって大きな挑戦となる。今年のサマーリーグには、JJ・バレアがナゲッツの指揮官として参加している。

プエルトリコ出身のバレアはドラフト外から2006年にマーベリックスに加入し、14年のNBAキャリアを築いた。彼のピークはレブロン・ジェームズを擁するヒートをNBAファイナルで破って優勝した2010-11シーズンだろうが、身長178cmと小柄ながら闘争心旺盛でバスケIQを生かすガードの彼は年齢を重ねてもパフォーマンスを落とさず、その後もティンバーウルブズとマブスで長く現役を続けた。

2020年にNBAを離れた後、2022年に母国で引退したバレアは、マブスの選手育成担当コーチを短期間務め、プエルトリコでコーチ業を始めていた。その彼がNBAに戻ったのは、昨夏にナゲッツの新たなヘッドコーチになったデビッド・アデルマンに招かれたからだ。バレアがウルブズに在籍していた時期、チームを率いていたのはリック・アデルマンで、その息子であるデビッドはアシスタントコーチを務めていた。

年齢の近い2人はすぐに意気投合し、試合後にゲームを分析し、次の試合に向けたスカウティングをしてから、今度はビールと食事を楽しみながら再び試合を語り合った仲だ。そこで築いた関係性により、アデルマンはバレアを自分の右腕として欲した。

「プエルトリコに戻って、ようやく家族と落ち着いて暮らす準備が整ったところだった。何年かは引退生活を楽しむつもりだったけど、デビッドの考えを聞くぐらいは良いだろうとデンバーに飛んだ。でも正直に言えば、何度かコーチを試して、この仕事は自分の天職だと感じていた。NBAは大好きだし、働くなら最高の舞台に行くのがベストだ。家族には負担をかけてしまうけど、このチャンスを断るわけにはいかないと思った」とバレアはナゲッツ行きを決めた。

そして今回、サマーリーグのチームの指揮を任されることになった。バレアは2006年のNBAドラフトで指名されず、マブスの一員としてサマーリーグに出場した。それから20年の時を経て、今度は新人ヘッドコーチとして同じ舞台に戻って来たことになる。

これまでに学んだ知識を総動員したくなるところだが、多くの修羅場をくぐり抜けてきた経験が、それは愚策だとバレアに教えている。「オフェンスもディフェンスも多くを詰め込もうとしてはダメだ。できるだけシンプルに、でも勝つために必要な武器を選手に与えたい。試合が終われば、何が機能して何が機能しなかったかを判断して修正を加えていくが、それもやりすぎは良くない。選手たちを混乱させず、力を発揮させるのがコーチの役割だよ」とバレアは言う。

「私もかつては彼らの立場だったから、気持ちは分かる。多くを犠牲にして準備をしてきて、このチャンスを絶対にモノにしなきゃならない。そんな若い選手たちに必要なのはチャンスと自信だけだ。それ以上をコーチが背負わすようなことは避けたい」

ナゲッツのサマーリーグ初戦はロケッツ相手に86-97で敗れた。勝利は得られなかったが、主題は勝ち負けよりも選手のポテンシャルを見極め、成長を引き出すこと。バレアはそこを履き違えることなく、サマーリーグのヘッドコーチとしての仕事を全うするつもりだ。

サマーリーグのコートに立った20年前、彼はすでにプエルトリコ代表の一員としてU19ワールドカップに出場し、クリス・ポールやカーメロ・アンソニー、JJ・レディックと渡り合ったことでNBAでも十分に通用するとの自信を持っていたが、周囲から評価を勝ち取らなければ何も始まらない。そして彼はサマーリーグで、自らのキャリアを切り開いた。

20年後の今、バレアはかつての自分と同じような若手を正しい方向に導くとともに、コーチとしての自らのキャリアも切り開こうとしている。