「チームの方向性もちゃんと考えながらやれたかな」
8月14日、日本代表とニュージーランド代表との第2戦。渡邊雄太のプレータイムが限られていたとは言え、八村塁とニック・ファジーカスとの『ビッグ3』の共闘が実現しただけに、勝利への期待が高まった試合を87-104で落とした。
「途中で良い流れがあったんですけど、そこで逆転することができず、最後まで点差を縮めることができませんでした」。そう語るのは馬場雄大だ。先発を務めた第1戦では12得点6アシスト3スティールを記録。昨日の第2戦ではベンチスタートでも八村、ファジーカスに次ぐ12得点を挙げて存在感を見せた。そして、馬場が言う『良い流れ』を作ったのは他ならぬ彼だった。
しかし、シンプルなスクリーンからのキャッチ&シュートをニュージーランドに次々と決められ、ターンオーバーからの失点も重なり、前半を終えて42-61と大量のビハインドを背負った。「そこは自分たちのスカウティングミスというか、選手交代がある中で共通意識をコートで表現できませんでした。気持ち良く打たれてしまった部分があったので、誰が出ても同じディフェンスをすることが必要です」と、ディフェンスが機能しなかった理由を語った。
それでも後半に入ると、馬場がトランジションから強引に持ち込み、シュートファウルを誘発してフリースローで得点を重ねることで、一時は日本の流れを作り出した。
「ドライブに行った時にディフェンスが寄ればさばく準備をしていましたし、来なかったからアグレッシブに行ってファウルをもらえました。そういった前提を考えて、チームの方向性もちゃんと考えながらやれたかな」と、馬場もオフェンス面については一定の満足度を示した。
自らのハッスルは「絶対にチームが良い流れになる」
Bリーグでもしばしば目にする光景だが、馬場の速攻は確実に日本の武器となっている。ハッスルしてコート外に飛び出しカメラマンと衝突するなど、見ている側としてはケガが心配になるほどの激しいプレーをしていたが、「自分が集中してプレーをすればケガはしないと思っているので、本当に気にしないです」と、馬場は意に介さない。
さらに「僕がああいうプレーをすることによって絶対にチームが良い流れになることを知っているので、そこは揺るがないです」と、アグレッシブなプレーを貫く意義を語る。
馬場は12本のフリースローを獲得。速攻からシュートファウルを誘発するシーンが何度も見られたが、その中で印象的なシーンがあった。「バスケット・カウントは絶対に許さない」ばかりに激しいファウルを受けた馬場は、マークマンとともにコートに倒れこんだ。追いかけた八村が相手に詰め寄ろうとするほどの激しい接触だったが、馬場は立ち上がると「俺の邪魔をするな」と言わんばかりにファウルした選手をにらみつけ、相手の顔の横を通り抜けた。
激しい接触にも臆することなく、むしろ相手を飲み込もうとする馬場の闘志が見えたこのシーンを、彼は「バスケットボールという名の戦いなので」と振り返る。「気持ちで折れたら先はないと思っていますし、負けたくないという気持ちでした。本当に言葉ではなかなか表せられないですけど、負けず嫌いの性格なので、そういった部分をぶつけてやりました」
世界と渡り合うための『闘争心』を見せろ
フェアプレーは称賛されるものであり、倒れた相手選手に手を差し伸べる行為はスポーツに見られる素晴らしいシーンの一つ。特にBリーグでは、そうした光景が日常的に見られる。しかし、日の丸を背負って世界を相手にする時には、馬場が見せたような闘争心こそ称賛されるべきだ。相手は馬場のプレーが日本に勢いを与えると脅威を感じたからこそ必要以上にラフに当たることで黙らせに行った。馬場はそれにひるまず、逆にやり返した。
ニュージーランドとのテストマッチを終え、1週間後にはアルゼンチン、ドイツ、チュニジアとの国際強化試合が待っている。格上に対し『胸を借りる』という発言は往々にしてあるが、今の日本に必要なのは、あのシーンで馬場や八村が見せたような相手を飲み込む気迫だ。
自力でつかんだ世界への挑戦権。本気で勝ちに行くのであれば、すべての選手に馬場のような闘争心が求められる。馬場のプレーがチームに火をつけ、全員の気迫が燃え上がる時にこそ、日本は一つ大きな殻を打ち破るのではないか。