保証わずか1年の契約は異例中の異例
トレイルブレイザーズは『混乱を伴う変化』の真っただ中にいる。デイミアン・リラードとCJ・マッカラムの時代を終えて再建期に入ってから数年が経過し、デニ・アブディヤを新たなエースに据えてプレーオフの舞台に戻って来た。それは良いが、混乱の手始めはシーズン開幕直後にヘッドコーチのチャウンシー・ビラップスが違法ギャンブルの容疑で逮捕されたことで、トム・ダンドンが新たなオーナーになったことで拍車がかかった。
昨年夏にブレイザーズを買収したダンドンは、NHLのハリケーンズを弱小から強豪へと変貌させた手法をブレイザーズに横展開しようとしている。その手法は徹底的なコストカットで、ハリケーンズ時代から物議を醸してきた。ブレイザーズの運営を引き継いだ今年の春、彼が最初にやったのは70名以上の従業員削減だった。ブレイザーズがプレーオフ進出を争っているにもかかわらず、チームの遠征費用も大胆にカットした。
ビラップスの後任となったチアゴ・スプリッターの下でチームがプレーオフへと大躍進している最中に、彼は新たなヘッドコーチ探しを始めた。この動きはすぐに明るみとなり、チームの集中を妨げている。ブレイザーズのヘッドコーチ選定は遅々として進まず、その間にスプリッターはブルズへと去った。それから数日、ブレイザーズはマイカ・ノリにチームの指揮を託すことを決めた。
マイカ・ノリはラプターズのコーチ見習いから指導者キャリアをスタートさせ、約30年の下積みを送っている。2015年からナゲッツで、ともにマイケル・マローンのアシスタントコーチを務めたクリス・フィンチと意気投合し、フィンチが2021年にティンバーウルブズのヘッドコーチになると、ノリはそのアシスタントコーチに転身した。フィンチの『右腕』として、ウルブズの5年連続プレーオフ進出、2度のカンファレンスファイナル進出に貢献している。
この間、ノリにはヘッドコーチになるチャンスが何度もあった。レイカーズ、サンズ、ニックス、また今年もブルズとマーベリックスは彼を候補者に挙げたが、決定には至らなかった。
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— Portland Trail Blazers (@trailblazers) June 23, 2026
何度も見過ごされた末、ようやくヘッドコーチとして自分の腕を試す機会を得たノリだが、ここでまたも混乱が起きる。問題はダンドンの『吝嗇ぶり』だ。ブレイザーズがノリに提示したオファーは3年契約だが、2年目と3年目はチームオプション。つまり保証されているのは1年のみ。年俸も低く抑えられており、勝利数などのインセンティブに大きく依存するという。
通常、ヘッドコーチは契約期間が残り1年になれば新契約を結ぶ。スプリッターはブルズと4年契約を結び、そのうち3年は保証されている。テイラー・ジェンキンスはバックスと6年契約を、ダスティ・メイはマーベリックスと5年契約を結んでいる。ブレイザーズとノリの契約が異例中の異例なのだ。
同僚のコーチはこれに激怒している。ピストンズを率いるJ.B.ビッカースタッフは、NBCA(全米バスケットボールコーチ協会)会長という立場で「多くのコーチと意見交換したが、みんなこの事態を深刻にとらえている。ブレイザーズのやったことは我々の価値に対する侮辱だ」とコメントした。
しかし、ブレイザーズはプレーオフの最中から10人以上の候補者と面談した。スプリッターはこのやり方を嫌ってブルズに行ったが、ダンドンは去る者を追うことなく、ブレイザーズのヘッドコーチになりたい者の中から最善の選択としてノリを指名した。
ビッカースタッフを始めとするコーチたちは、オーナーがその権力を乱用して、コーチの価値を落とす前例を作ってはならないと危惧している。しかし、長い下積みを経たノリはヘッドコーチになるチャンスに飛び付いた。
それがどんなチャンスだろうと、自分の手腕を発揮する場さえ与えられれば結果を出せるという自信がノリにはある。そしてブレイザーズには、エースの地位を確立したアブディヤを始め、トゥマニ・カマラやスクート・ヘンダーソン、ドノバン・クリンガンといった急成長中の若手が良い経験を積んでおり、復活するデイミアン・リラードとドリュー・ホリデーという信頼できるベテランもいる。そして(その約束が果たされれば)、徹底的なコストカットの成果はチーム強化に再投資される。
ノリがヘッドコーチとしての成功を夢見るのは間違いないし、「これが成功を収めたら、まさに悪い前例になってしまう」とNBCAが危機感を抱くのも当然だ。そのすべてはダンドンの狙い通り。彼は新しい手法でNBAに新たな成功事例を作ろうとしている。
