ヤニス・アデトクンボ

ドラフトでは1巡目指名権2つで有望なタレントを獲得

バックスはヤニス・アデトクンボとボビー・ポーティスをヒートへ送り出し、再建をスタートさせる。2013年のNBAドラフト全体15位指名で加入し、2021年に50年ぶりの優勝をもたらしたアデトクンボは、現地6月23日のNBAドラフトを期限として設定したオーナーのジミー・ハスラムとフロントの判断で放出が決まった。チームが32勝50敗に沈みプレーオフを逃した今シーズン、本拠地でファンからブーイングを浴びて観客席にブーイングを返した場面は、『蜜月』の終わりを象徴するシーンだった。

バックスはジェイレン・ブラウン中心のセルティックより、多くの若手と指名権というヒートのオファーを選んだ。これはアデトクンボに代わるエースを獲得して戦力を保つのではなく、時間がかかるのを承知でゼロからチームを作り直すことを意味する。

バックスがヒートから受け取ったのはタイラー・ヒーロー、ケレル・ウェア、ハイメ・ハケスJr.とカスパラス・ヤクショニスの4選手に加え、6月23日のドラフト13位指名権、2031年と2033年の1巡目指名権、2030年の1巡目指名交換権、2033年の2巡目指名権だ。

この中で即戦力として最も期待されるのはヒーローだ。2025年のNBAオールスターに選出されたスコアリングガードで、昨シーズンは33試合の出場に留まったものの、20.5得点、4.8リバウンド、4.1アシストを記録。バックスにとっては唯一の『スター格』であり、なおかつ地元出身で、再建中のロスターを引っ張る存在だ。

残る3選手も再建の礎となるべき選手だ。2年目のシーズンを終えた22歳のセンター、ケレル・ウェアは、バム・アデバヨの指導を受けて力強い成長を見せている。バックスとしてはマイルズ・ターナーも放出し、ウェアを先発センターに据えてより多くの経験を積ませたいところだ。ハケスJr.は先発でもベンチでも、どんな役割も全力でこなすハードワーカー。ヒーローと同じく契約は残り1年だが、新契約は再建中のバックスでも抱えられる規模になるはずで、チームリーダーとして期待される。

ヤクショニスは昨年の1巡目20位指名選手で、ルーキーイヤーはGリーグとNBAを行き来しながら6.2得点を記録した。実績では他の3人に見劣りするが、ヒートが当初デイビオン・ミッチェルを提示したのに対し、バックスがヤクショニスを強く希望したと言われる。その将来性に加えてルーキー契約があと3年残る若手であることも、バックスにとっては大きかったのだろう。

トレードが決まった翌日のNBAドラフトでは、自前の10位に加えて今回のトレードで得た13位の1巡目指名権2つで、ブレイデン・バリーズとネイト・エイメントを指名した。バリーズはサイズ以外のすべてをバランス良く備えた多彩なガードで、メインのハンドラーをサポートするコンボガードの即戦力となる。ライアン・ロリンズとヤクショニスを含めた若手ガード3人がこの1、2年で主力へと成長すれば、バックスとしては大成功だ。

エイメントはサイズとウイングスパンのあるウイングで、フィジカルが十分ではないため即戦力とは言えないが、堅実な3&Dへと成長することが期待される。ジョン・ホルストGMは「欲しい選手が残っていなければ指名権を使って別の動きをしていただろうが、我々が欲しかった大型ガードと大型ウイングを指名できた。素晴らしい結果になった」と語っている。

こうした若いタレントを率いるのはテイラー・ジェンキンスだ。若手を鍛えてグリズリーズを強豪へと成長させた彼は、再建を託すには最適なコーチであり、ヘッドコーチを決めた時点でアデトクンボのトレードは既定路線だったと言うべきだろう。

そして、今回のトレードで得られた2031年と2033年の1巡目指名権は、今後のバックスの大きな資産となる。5年後にはアデトクンボが今のような支配力を発揮できず、ヒートの指名権は高い順位になると期待される。もっとも、5年もかからずに再建期から抜け出し、この指名権をトレードに使って優勝争いができるレベルへと戦力を引き上げるのが最善のシナリオだ。かつてアデトクンボは「20年も同じチームにいて、一度きりしか優勝できないのは嫌だ」と言った。バックスは最初の優勝から2回目の優勝までに50年を要したが、この『アデトクンボの置き土産』は次の優勝を20年も待たずにもたらす可能性を大きく高めてくれるはずだ。