ヤニス・アデトクンボ

今シーズンは出場36試合のみ、プレーオフ進出も逃す

バックス史上最高の選手、ヤニス・アデトクンボがミルウォーキーを去る。2013年のNBAドラフト1巡目15位で指名されてから13年、バックスとヒートとの間にトレードが成立した。

ヒートはアデトクンボとボビー・ポーティスを獲得し、バックスにはタイラー・ヒーロー、ケレル・ウェア、ハイメ・ハケスJr.とカスパラス・ヤクショニスの4選手、そして今年の13位指名権、2031年と2033年の1巡目指名権3つ、2030年の1巡目指名交換権、2033年の2巡目指名権を譲渡する。

アデトクンボはキャリア初期こそ、NBAに順応して自分自身のプレースタイルを確立するのに苦労したが、キャリア4年目のオールスター初選出以降はリーグ屈指のスーパースターとして、また小さなフランチャイズであるバックスを引っ張るエースとして活躍してきた。その努力はキャリア8年目の2020-21シーズンに、NBA優勝という形に結実する。

しかし、その後のバックスは次第に競争力を落とし、彼自身のキャリアも頭打ちとなる。過酷な戦いを続けたことでケガが増え、競争力を保てないチーム編成にフラストレーションを露わにすることもあった。優勝から2年後の2023年オフには、「みんなが同じ考えを共有して、家族と過ごす時間を犠牲にして優勝を目指すんだと感じられなければ、契約延長はしない」と発言。その後もしばしばフロントにプレッシャーを掛けるような言動を繰り返してきた。

今シーズンのアデトクンボはケガが相次いで36試合の出場に留まり、2月の時点でトレードの交渉があったことが明るみに出た。トレードは決まらなかったものの、ケガを押してプレーしようとするアデトクンボと、それを制止しようとするスタッフが衝突するなど、両者の関係悪化は目に見える形となっていた。かくして2016-17シーズンから続いていたプレーオフ連続出場が途絶え、そしてアデトクンボの時代も終わることになった。

バックスはトレード先を選ぶ際、ヒートとセルティックスに候補を絞った。セルティックスはジェイレン・ブラウンと1巡目指名権2つをオファーしたが、バックスは完全に再建に舵を切るつもりで、アデトクンボに代わるエースではなく『再建のための資産』を選んだ。すでにヘッドコーチはドック・リバースが退任し、テイラー・ジェンキンスを迎えることが決まっている。グリズリーズで若手主体の強豪を作り上げたジェンキンスの下で、時間を掛けてチームを作り直す方針だ。

ヒートにとって今回のトレードは、長年追い続けてきたビッグネーム獲得の歴史に新たな1ページを加えるものだ。かつてシャキール・オニールを、レブロン・ジェームズを獲得したパット・ライリー球団社長は、また新たにNBAのトップスター選手をマイアミに連れてきた。

ヒートは2024-25シーズン途中にエースのジミー・バトラーが契約延長交渉で衝突して退団しており、その後は強豪としてのアイデンティティを失っていた。今シーズンは43勝39敗と辛うじて勝ち越したものの、プレーイン止まり。アデトクンボとバム・アデバヨという超強力なフロントコート・コンビを軸に、強豪の地位を取り戻しにいく構えだ。

もっとも、リスクも高い。アデトクンボは31歳で、ここ2シーズン連続でケガに相次いで見舞われており、彼がこの連鎖から抜け出せなければ、これまで積み上げてきた若手とドラフト指名権を手放した代償は重く圧し掛かってくる。ただ、ヒートは再建を選ばずに常に最前線で勝負し続けることを選ぶチームだ。『バトラー問題』に振り回された2年のバタバタを、これ以上続けるわけにはいかない。

かつてアデトクンボは「20年も同じチームにいて、一度きりしか優勝できないのは嫌だ」と発言した。バックスを愛するが故に勝てない現実に苦悩したが、それはもう過去のこと。2度目の優勝を追い求めるべく、心身ともにフレッシュな状態で再スタートを切るはずだ。