チャンピオンシップ進出を逃す屈辱のシーズンから、シーホース三河は再起しようとしている。鈴木貴美一ヘッドコーチが「初日から100パーセントで5対5をやっています」と言うように、8月上旬にファンに公開した練習でも、バチバチのマッチアップが繰り広げられた。外国籍選手はまだ合流していなかったが激しさは実戦と変わらず、今回の取材対象である岡田侑大もリムアタックの際に激しい接触を受け、悶絶してフロアに倒れ込むシーンもあった。この時期の準備が長いシーズンの戦いを左右する。昨シーズン途中にプロ転向を決断した岡田にとっては、初めてのプレシーズン。懸命にトレーニングする彼に、新たな抱負を聞いた。
「毎日が5対5、全員が激しく切磋琢磨しています」
──プロとして最初のシーズンを終えて、どんなオフを過ごしていましたか?
オフもずっと身体は動かしています。自動車免許を取りに行っていたのですが、その後は地元に帰ったり母校に顔を出したりと他府県に行った時も、行く先々の体育館を借りて練習していたので、少なくとも週に4日はボールに触れています。あまり長くやらないとボールの感触を忘れてしまうので、今のレベルをキープしながら、練習開始に持っていきたかったのが第一です。
昨シーズンやってみて、オフェンスの時に突っ込みすぎてミスになっていた部分と外角シュートの確率、ドリブルからのジャンパーの確率が低かったのが課題だったので、そこは個人練習でも重点的にやっていました。
──なるほど。個人練習の間もしっかり課題は持っていたというわけですね。
ファンダメンタルの部分が昨シーズンはできていなかったとコーチからは指摘されていました。僕も熊谷航さんもシーズン途中から入ってきて、シーズン中の練習しかやっていないので、そこを重点的にやっています。
やっぱりシーズン中は、5対5をハードにやると言ってもケガが一番怖いです。チームが始動してずっと5対5をやっているんですが、今日も何度かアクシデントもありました。それぐらい全員が激しく切磋琢磨していて、僕はプレシーズンの練習が初めてなんですけど、こういう雰囲気は好きですね。すごくやり甲斐があります。
今は外国籍選手がまだ合流していないので、ドライブでずっと点が取れています。それは単純に楽しいですね(笑)。それでも課題はあって、今日も金丸(晃輔)さんと一緒のチームの時に、自分が1対1を仕掛けたいところで金丸さんからボールを要求される場面がいくつかあって。昨シーズンはそこで周りが見えなくて僕が得点を取りに行って金丸さんがフラストレーションを溜めたり、逆にボールを預けて僕が我慢することが多かったので、両方すっきりできるバスケットをこれからの1カ月で合わせていきたいです。
連携を高める作業は「やりながら探っていくしかない」
──三河には比江島慎選手がいた一昨シーズン以上にオフェンス力の高い選手が増えました。ダバンテ・ガードナー選手も川村卓也選手も、ボールを持って結果を出せるタイプです。でもボールは一つしかありません。ストレスを溜めずにボールをシェアして、なおかつそれぞれの持ち味を消さない、そういった連携はどうやって作っていくのですか?
やりながら探っていくしかないと思います。今日は僕が3ポイントシュートを2本決めて、3本目も打とうと思っていたのですが、金丸さんがボールを要求したので返しました。そのシーンでは川村さんから「自分のシュートが当たっている時は周りが要求しても打っていい」とアドバイスされました。金丸さんは非常に良いシューターですけど、そこに頼りすぎると昨シーズンと同じ結果になってしまうと思うので、僕ももっと周りを見てターンオーバーを減らしながら、得点を取っていけたらと思っています。
僕はドリブルからスタートしたり、ピック&ロールを要求してクリエイトしていく選手です。金丸さんはオフボールスクリーンを得意とするので、両方が全くフラストレーションを溜めないのは1年たった今も結構難しいと思っています。プレースタイルが全然違うし、僕がピックをすると金丸さんにスクリーンを掛ける人がいなくて、それがフラストレーションになってしまいます。正直に言えば現時点で僕はその打開策を思い付いていないです。
それについて一番言ってくれるのが川村さんで、川村さんも自分がドリブルで始める選手ではないと言うんですけど、しっかり周りを見ることが大事とアドバイスしてくれています。何日かやって感じるのは、みんな僕より何十倍、何百倍もの経験があるということ。今は川村さんが僕らを探って合わせてくれようとしています。しっかり合わせてくれると信用しているので、僕は自分のプレーをしっかりやって、アドバイスをもらおうと思います。この期間はそれを意識して、探っていきたいと思います。
──起点となる選手が多いと交通渋滞のリスクはありますが、相手にとっては厄介ですね。
そうですね。でも今のメンバーで考えると、川村さんも金丸さんもJさん(桜木ジェイアール)も、誰が起点になっても良いようになりたいです。僕もこれまで自分が起点でバスケをやってきた人生なので、このオフシーズンに周りの動きを身に着けられたら試合でもっとスムーズにやれると思っています。
「Bリーグで代表選手と戦うのが今のモチベーション」
──プロ1年目は新人賞を受賞しました。ただ、チームとしてはチャンピオンシップ進出を逃す屈辱のシーズンになりました。2年目をどんなシーズンにしたいですか?
周りの人がどう思っているかは分かりませんが、昨シーズンは鈴木ヘッドコーチが僕と航さんを出すことで負けに行ったわけではありません。勝ちに行って勝てなかった、それは単に僕と航さんの力不足で、期待に応えられませんでした。次のシーズンはどうやってでも鈴木ヘッドコーチの期待に応えられるように、そして「昨シーズンの選択が間違っていなかった」と証明できるようなプレーをしなきゃいけないと思っています。
──開幕までまだ時間がありますが、日本代表の戦いを見ながら練習をすることになります。日本代表を意識しないわけはないと思いますが、どのような気持ちで見ていますか?
来年にオリンピックがありますが、ワールドカップに行く今のチームはもう出来上がっていると思うので、僕は全然視野に入れていません。ジョーンズカップの選考にはケガで行けませんでしたが、正直なところ「滑り込めたらいいな」とは思っていました。
──代表の常連ではない選手にとっては、あのジョーンズカップが『最終列車』でしたね。
それは残念なんですけど、そんなに甘くないので。引きずっても仕方ないし、ワールドカップに出る選手よりも努力しなきゃいけないことがはっきりしました。僕は東京オリンピックの次のオリンピックを目指して、そこで日本のエースにならなきゃいけないと思っています。
Bリーグのシーズンが始まれば、ワールドカップでプレーした選手たちと戦えますから、それが今のモチベーションになっています。比江島慎さんや田中大貴さんと当たる時に自分がどれだけ高いパフォーマンスを見せられるか、代表チームもそれは絶対に見ていると思うので、Bリーグの試合で少しずつアピールして、目標に近づいていきたいです。
──では、新シーズンの目標をどこに置きますか? 個人のスタッツで目標はありますか?
難しいですね。正直、自分もスコアラーなのでスタッツは気にします。でも、気にするとフラストレーションになってしまう部分もあります。アシストに重点を置きすぎると自分の良さはなくなると思っています。一応、昨シーズンは2桁得点できたので、そこは最低ラインです。チームを最優先する中で得点を取る、そうやって自分の長所を出していきたいです。
チームの目標は優勝しかありません。これだけすごいメンバーがいるのに「チャンピオンシップ進出」なんて小さい目標を掲げたらファンの人たちに申し訳ないですよね。期待されているのはすごく感じるので、ファイナルで勝って優勝したいです。