ジャレッド・マケイン

「この街の人々のために一生懸命プレーする」

ジャレッド・マケインは嵐のようなシーズンを終え、敗退の悔しさよりもやり切った充実感の中にあった。2024年の1巡目16位指名でセブンティシクサーズに加わり、ケガ人続出のチームにあって非凡なシュート力で注目を集めたものの、膝のケガで2カ月足らずでシーズン終了。迎えた2年目、戦力の戻ったシクサーズで出番は減り、2月にトレードされた。

遠征のために空港に向かうバスでフロントから電話が掛かってきた時、まさかトレードの通告だとは思わなかったと彼は振り返る。「僕は自分の中に起きる感情をそのまま受け入れるタイプで、怒りや悲しみを押し殺したりはしない。トレードは全く予期していなかったからショックだったし、まずはチームメートに別れの挨拶をしに行った。かなり感情的な話になった。ロサンゼルスに着いて、そのままみんなと分かれて別の飛行機に乗った」

それでも、目まぐるしく動く状況を受け入れるしかない。彼にとって幸いだったのは、ドラフト前のワークアウトに参加したことでサンダーのフロントやコーチ陣とは面識があり、新たなチームメートが歓迎してくれたことだ。そしてマケインは、1年半前にシクサーズでやったように、ルーキーの気持ちで新しいチームのすべてを吸収し、「自分に求められることは何でもやる」の姿勢を初日から見せた。

その結果、彼のプレータイムも得点も伸びた。豊富な運動量を生かして攻めのスピードを上げ、躊躇なく放つ3ポイントシュートを決めていく彼は、シクサーズよりもワイドオープンのチャンスが増え、3ポイントシュート成功率は39.1%まで上がった。

プレーオフでは得点能力だけでなく、シェイ・ギルジャス・アレクサンダーの負担を減らすべくハンドラーの役割も一部担うことで存在感を発揮。サンズとのシリーズではほとんど出場機会がなかったが、プレーオフが進むにつれて彼の出番は増え、チームに欠かせない存在となった

サンダーを率いるマーク・ダグノートは「彼のやったことは、走っている電車に飛び乗るようなものだ」と、シーズン途中の加入で新しいバスケのスタイルを理解し、フィットしたマケインを称えた。「すでに勝っているチームを深くリスペクトし、なおかつ自分への自信も失わないバランス感覚を見せた。チームメートが彼を仲間として受け入れたことも大きいが、それも彼の人間性があってこそだ」

ジェイリン・ウィリアムズは『チームの盛り上げ役』としての役割を共有するマケインのことが大好きだと言う。「勝っても負けてもシャワールームから爆音の音楽とあいつの歌声が聴こえてくる。毎日の仕事を楽しくしてくれるタイプだよ。でも最初はK-リッチ(ケンリッチ・ウィリアムズ)に『お前に似ている』と言われて、『嘘だろう?』って思ったよ(笑)」

シーズン最後の会見でマケインは「まさに激動のシーズンだった。4カ月前の自分に『西カンファレンスのファイナルで先発しているぞ』と言っても全く信じないよ」と笑顔で語った。

「トレードされた時は、この先どうなるか何も考えられなかった。『優勝チームが僕を欲しがる理由って何だろう?』ぐらいに思っていたよ。最初にシェイやAJ(アジャイ・ミッチェル)のケガもあって出番をもらい、失敗しながら経験を積めたことで、チームの理解が進んだ。それに、このチームの素晴らしさは、試合に出られない選手がチームを心から応援できることだ。上手くいかない時に、仲間の声で自信を取り戻せるのは素晴らしい」

シーズン最後の会見で、多くの選手が敗退の悔しさを語り、来シーズンへどう改善すべきかを語る中で、マケインはずっと愛と感謝を語り、そこにネガティブな感情はほとんどなかった。「チームの仲間たち、この街の人々が愛を示してくれたことで、僕はここで自分らしく過ごせている。おかげで仕事だけじゃなく人生すべてが楽しく感じられているよ」

都会育ちの彼にとって、オクラホマシティは田舎町で馴染めないのではないか。そう不安がる地元記者の質問に、マケインは笑顔で反論した。「フィラデルフィアのファンも素晴らしかったけど、ここのファンはとんでもない愛情を注いでくれる。TikTokで僕の顔を描くラテアートを見てすぐさま買いに行ったよ(笑)。そうした小さなことが大きな意味を持ち、この街の人々のために一生懸命プレーするというモチベーションを与えてくれる」

「それに、それぞれの街にはそれぞれの良さがある。僕はそれをデューク大のダーラムで学んだ。みんなダーラムはつまらない街だと言うけど、そんなことはない。だからここに来る時も、きっとお気に入りが見付かると思っていた。具体的にどこかは内緒だけど、馴染みのレストランもコーヒーショップもある。オフの日に『何か面白いことを探そう』と繰り出すのが大好きなんだ。そのたびに、この街の人たちには助けられる。だから僕もコーヒーをおごったり、一緒に写真を撮ったりする。そうしたポジティブなエネルギーのおかげで、僕はどんどんこの街が好きになる」

もちろん、来シーズンに向けた努力を欠かすことはない。「TikTokを撮っていない時の僕がどれだけ頑張っているかは、みんなは見れないからね」と彼は言う。「去年の夏は膝の炎症が残っていて、練習よりも治療とケアだった。今回は純粋に上手くなることに集中できる。自分の技術を一つ上の段階へと引き上げるためにオフを活用できるのが楽しみで仕方ないよ」