ビクター・ウェンバニャマ

全員バスケで最後まで走り切って勝利をもぎ取る

スパーズはサンダーとのカンファレンスファイナルの『GAME7』を111-103で制し、NBAファイナル進出を決めた。プレーオフはアジャスト合戦で、相手の戦術を学んで対策し、上回った側が勝つ。ただし今回のシリーズは、それよりも消耗合戦の色合いが濃かった。サンダーは『GAME7』をホームで戦えるアドバンテージがあったが、運動量とプレーの強度は本来のレベルに遠く達しなかった。第1クォーターで25-32と先行を許し、第2クォーターと第3クォーターに逆転したものの、リードした時間はほんのわずか。最大点差は14点と粘りを見せてはいたが、スパーズの挑戦を退けるだけのエネルギーを欠いた。

サンダーはジェイレン・ウィリアムズとAJ・ミッチェルが欠場する状況でシェイ・ギルジャス・アレクサンダーの負担が高まるばかり。チェット・ホルムグレンやアレックス・カルーソなど攻守を引っ張るべき選手がガス欠に陥っており、シェイが35得点を奪うも孤軍奮闘で、チームとして流れを作れなかった。

スパーズも疲労と無縁ではいられなかったが、ビクター・ウェンバニャマの周囲を固める選手たちの奮起があった。ステフォン・キャッスルは『自分が決める』という強い意志を前面に押し出し、普段は黒子役に徹するジュリアン・シャンペニーは3ポイントシュート6本成功の大爆発。ケルドン・ジョンソンとディラン・ハーパーがベンチから新たなエネルギーを注入し、ルーク・コーネットはたった6分の出場だったが、ウェンバニャマがファウルトラブルとなり、呼吸を整えて気持ちを落ち着かせるための数分の出場で、アイザイア・ハーテンシュタインのダンクを叩き落すブロックを見せた。

シェイが孤軍奮闘したサンダーに対し、全員がそれぞれ持ち味を発揮したスパーズが上回った。指揮官ミッチ・ジョンソンは「今日最大のプレーはルークのブロックショットだった。今日は多くの選手がステップアップし、必要な場面で活躍してくれた。2桁得点が7名、これはチーム全員の努力を示している」と語り、「シーズンを通して試合ごとにいろんな選手が主役となり、輝きを放った。それを選手たちが楽しんでいる」と胸を張った。

ウェンバニャマは22得点7リバウンド2アシストを記録。彼にしてはスタッツは平凡だったが、チームを引っ張る強い意思を示したという点で意義ある試合だった。その意思の最たるものが、第4クォーター終盤のサンダーの速攻に全速力で戻ったシーンだろう。ボールを失った瞬間に自陣へと駆け出した彼は、ジャレッド・マケインの3ポイントシュートへのチェックが届かないのを承知で追い掛け、ギリギリまで手を伸ばした。このシリーズを通してサンダーに爆発力をもたらしていたマケインのシュートがリングに弾かれると、ウェンバニャマが拳を振り上げた。消耗戦の終盤、両チームの選手ともトランジションを追い掛けられない状況で、ほぼ出ずっぱりのウェンバニャマが見せた勝利への執念はすさまじいものがあった。

勝利が決まった瞬間、彼は感極まって涙をこらえているようにも見えた。その時の気持ちを「子供の頃からの夢があり、それを勝ち取るためのチャンスは一生に一度あるかないかだ」と彼は言う。「次にいつこんな機会が来るかは誰にもわからない。言葉にするのが難しいけど、僕の人生の意義そのものと言ってもいいぐらいだ」

中3日を置いてニックスとのNBAファイナルが始まる。「相手のことは気にならない。自分たちが勝つことだけを考えている」とウェンバニャマは語る。

「試合終了のブザーが鳴った瞬間に感じた感情を、まだまだ何度でも味わいたい。そのためにずっと努力を重ねてきたんだ。だから命懸けで勝ちにいくよ」