ジャマール・モズリー

マジックでの哲学を継続「ディフェンスで勝負する」

ペリカンズは1年前にバスケットボール運営担当副社長に就任したジョー・デュマースの下で良い方向へ変化し始めている。26勝56敗の西カンファレンス11位と成績は残せなかったものの、ザイオン・ウイリアムソンはケガの連鎖から抜け出し、トレイ・マーフィー三世はチームリーダーへと成長し、ジェレマイア・フィアーズとデリク・クイーンのルーキー2人が今後のチームの柱となる存在感を見せている。

デュマースのチーム編成で最初の大きな決断は、2勝10敗の時点でヘッドコーチのウィリー・グリーンを解任したことだ。アシスタントのジェームズ・ボーレゴを暫定ヘッドコーチとして、そこからチームは上向いたのだが、編成担当として迎えた最初のオフにデュマースは新たなヘッドコーチ招聘に動いた。そこで白羽の矢を立てたのが、マジックを再建チームからプレーオフへと引き上げたジャマール・モズリーだ。

マジックはモズリーの下で強烈なディフェンスと若い選手がノビノビと自分の持ち味を生かすオフェンスの組み合わせで3年連続のプレーオフ進出を果たしたが、いずれもファーストラウンド敗退。今シーズンは終盤に勝ちきれずに順位を落とし、第8シードに落ちたことの印象も良くなく、ピストンズに敗れてシーズンを終えるとすぐに解任を言い渡された

デュマースがモズリーに連絡を取ったのは敗退の翌日だったが、「話がしたい」という申し出への返事は「何日か呼吸を整える時間が欲しい」だった。その後、2人は最初の面談でお互いのチーム作りの方向性を語り、あまりにも一致していることに驚いたという。モズリーがマジックで実践した「容赦なくフィジカルに戦う」というスタイルにデュマースは共感した。若手育成の手腕も評価したし、モズリー率いるマジックにペリカンズが5シーズンに渡り9連敗している事実もインパクトがあった。契約合意に至るまで、障害は何もなかった。

就任会見に臨んだモズリーは、ペリカンズの新たな指揮官としての意気込みをこう語った。「我々は段階を飛ばさない。偉大さは一歩一歩の積み重ねで、文化は言葉ではなく日々の仕事によって築かれるものだ。一貫した習慣、お互いへの責任感、高いレベルのコミュニケーション、成長のための本音の対話。これらがチームを優勝へと導くものだと思っている。我々はディフェンスで勝負する。ディフェンスからスタートして、近道などせず正攻法でチームを作っていく」

ペリカンズはザイオン加入からの7シーズンでプレーオフ進出は2回だけ。そのいずれもファーストラウンドで敗れている『勝利の経験に乏しいチーム』だが、モズリーは「幅広いバスケができ、選手層も厚い。プレーメークもできるしシュートも打てて、守備では複数のポジションを守れる。良いロスターだと思っている」と語る。

選手との対話は主にオンラインで始めており、「高いレベルで何かを成し遂げたい、という強い気持ちを持っている。負ける悔しさを知っているだけに、勝つために必要な何かを追い求めている。それが細部へのこだわりであり、ディフェンスであり、規律だと伝えた。それをベースにチームとしての責任感を養っていく」とモズリーは言う。

「あと一歩で強いチームになれるところにいるとは思うが、必要な段階を飛ばさないことが肝心だ。そのレベルに達するには、日々のルーティーンや習慣をしっかり築かなければいけない。再建中であろうと優勝候補であろうと、コート内外で最高の自分たちになれるよう毎日努力しなければならない」

デュマースは「優勝チームなら微調整で済むが、今の我々の立ち位置を考えればあらゆる可能性を考えるべきだ」と補強に意欲を示し、モズリーがチームにもたらす変化が楽しみだと語った。「シュートを外してベンチに下げられるなら『次は決めなきゃ』と選手は思うものだ。ジャマールは守備のミスで選手を下げる。そうなると選手は『ディフェンスで相手を止めなければ試合に出られない』と思う。チームの意識はそうやって変わっていく。彼が選手をどう指導し、どんなディフェンスをさせるのかを楽しみにしているよ」