10人ローテーションを駆使、好不調も見極めた起用の妙

1年前のカンファレンスファイナルでのニックスは、ペイサーズのスピードに翻弄されました。多彩なオフェンスパターンへの対応が追い付きませんでしたが、運動量の多い高速バスケに7人でのローテーションで対抗すること自体に無理がありました。しかし、今回のプレーオフではニックスがオフェンスを変化させ、運動量で上回ってNBAファイナルへ進んでいます。

ヘッドコーチにマイク・ブラウンを迎え入れた以外は大きなロスター変更をせずに臨んだ今シーズン序盤は、ボールシェアを重視し、特にカール・アンソニー・タウンズを起点としたプレーを増やしました。ただ、ある程度の成果を得たものの戦術の核にするのは難しかったからか、次第にガード中心の組み立てへと戻っていきます。

開幕から約2カ月、NBAカップで優勝した頃には、ベンチからタイラー・コレックがシューティングとシンプルなツーメンゲームの組み立てで、ジョーダン・クラークソンはシュート能力を生かしたベンチスコアラーとして活躍していたのですが、シーズン後半になるにつれて2人ともプレータイムを減らし、プレーオフではトレードで補強したホセ・アルバラドが控えポイントガードとなり、シューターの役割もランドリー・シャメットが受け持つようになっています。

ただ、クラークソンはインサイドの繋ぎ役として出番を得ており、3ポイントシュートではなくオフェンスリバウンドやスティールでの貢献が光ります。シーズンを通して紆余曲折を経ながら様々なラインナップを試してきたことで、必ずしも個人の得意分野を発揮していなくても、10人ローテーションで戦えるようになっています。

プレーオフに入り、ホークスとのファーストラウンドで1勝2敗と先行されると、タウンズを起点としたオフェンスパターンへと回帰し、これが大成功しました。プレッシャーディフェンスに晒され、ダブルチームもされるジェイレン・ブランソンに長くボールを持たせるのではなく、タウンズに預けてオフボールでのスクリーンとカットプレーでの攻略が有効になりましたが、これもレギュラーシーズンに試してきたからこそ迷いなく実行できたオフェンスの変更でした。

そのホークスとのファーストラウンドでは3ポイントシュートが決まらないミケル・ブリッジスのプレータイムを減らし、マイルズ・マクブライドを重用しました。ラウンドが進むとマクブライドより調子の良いシャメットが3ポイントシュート担当としてプレータイムを増やすなど、選手の好不調を見ながらの使い分けができています。

その一方で、カンファレンスファイナルでは一転してブリッジスがプレータイムを増やしました。疲労困憊だったキャブスには、ブリッジスの運動量と巧みなオフボールムーブが効果的で、ミドルレンジのスペースを見つけては次々とシュートを決めました。3ポイントシュートは28.6%とタッチは相変わらず不調でしたが、2ポイントシュートを67.5%と驚異的な確率で決め続けたブリッジスはスイープ突破の立役者となりました。

8.6リバウンドに4.6アシスト、1.8スティールと万能ぶりを発揮しているジョシュ・ハート、中でも外でも堅実にフィニッシュしてトゥルーシューティング72.4%のOG・アヌノビーと、個人レベルでも高いパフォーマンスを維持しており、今のニックスはすべてが上手く回っていると言えます。1年前は自分たちが苦しんだ戦い方を、今は自分たちが実行して相手を苦しめている。そんな戦いぶりで、今世紀で初めてNBAファイナルに駒を進めました。