名古屋ダイヤモンドドルフィンズは2シーズン連続でチャンピオンシップの1回戦で敗れ、西地区で勝つことはできても優勝争いに食い込む難しさに直面することになった。若い選手を多く抱えるチームはまだまだ経験不足であり、現状を打開するには大きな飛躍が欠かせない。加入2年目を迎える満田丈太郎もそう考える一人だ。25歳はもう若手ではない。プレーでも声でもチームを引っ張る存在になり、名古屋Dとともに自分のキャリアも飛躍させると意欲を燃やしている。
「ミスを恐れていたら自分の面白さは出せません」
──名古屋Dでの1年目のシーズンはプレータイムが平均10分程度となかなか伸びず、そのためにスタッツも落としました。個人の出来としてはどう受け止めていますか?
スタッツはほぼほぼ下がりました。ディフェンスのチームルールにアジャストできないところがあって、特に前半戦は苦しみました。このチームでは一人ひとりの役割が明確で、それ以上のことはやらなくていいんです。必要以上にやってしまうと、逆にそこからズレが生まれてしまいます。横浜ビー・コルセアーズに所属していた時は1.3人分ぐらいの勢いでカバーするのが僕の役割でしたが、名古屋Dでは全員でディフェンスするので、普段の練習から必要以上に動いてマークマンを空けてしまうことがあり、実際の試合でもそうなってしまって、それでプレータイムが減りました。
横浜はベテランの選手が軌道修正できるから、僕には「思い切って行ってこい」という感じでした。それが名古屋Dに来たら、しっかり一人の選手として高いレベルを求められました。そこでもっと緻密なプレーができないと競争に勝てません。
それでも、悪戦苦闘する中でもどこが悪いのかは自分にもコーチにも明確に見えていたので、そこを改善しようと日々やってきて、後半戦にはプレータイムも得点も伸びました。経験を得て上に進んでいるという実感はありました。
──満田選手の持ち味は思い切りの良いプレーであり、日本人選手でも中にアタックできる部分だったり、多彩なオフェンスだと思います。そこは出し切れなかった?
試合にあまり出られなかった分、「ミスをしちゃいけない」というのを意識しすぎて、本来そうであるべき果敢なプレーが少なかったとは思います。やっぱりミスを恐れて果敢にプレーできなかったら自分の面白さは出せません。これは気持ちの問題だけですね。
──その他、昨シーズンに取り組んでいたこと、名古屋Dに来てからの変化はありましたか?
ドライブだとかアタックは大前提ですが、ピック&ロールを使えるようになる必要があると取り組んだ1シーズンでした。ピックを使えるようになってペリメーターでのシュートを決められるようになれば、アタックもより生きます。そこの緩急の使い方を練習でも練習後もずっとやっていました。ただ試合でがむしゃらにアタックするだけでも経験は得られますが、それだけの選手では何年か後に困ると思うので。
以前からピックを使うプレーは下手だと言われていて、横浜でもアシスタントコーチと一緒に取り組んでいました。それを名古屋Dでも継続して、細かな緩急などを練習してレベルアップしていった感じです。実際に後半戦ではピック&ロールを使ってシュートを決める場面が増えていたので、そういう面では悪くなかったと思っています。
3ポイントシュートも40%に近い数字が残せて、そこは維持するようにとコーチからも言われています。得点できる選手が他にもたくさんいるのでちょっと遠慮した部分がありましたが、今シーズンはそういうのなしで、もっと自信を持って打って、確率もキープしたいです。
「代表組に『ぬるい練習やってる』とは言われたくない」
──今年もオフには3×3に参戦しました。5人制にもプラスになっていると感じますか?
そう思います。PREMIER.EXEはチーム数が倍になってレベルも上がっているんです。やっぱり3×3は球際が強くて、フィニッシュまでバチバチぶつかる中で体勢を維持しながら決めきる力がすごく求められます。それに体力的にかなりキツいので、名古屋Dでの練習が始まりましたけど「あの時はもっとキツかった」と思えばもっと頑張れますね。
──外国籍選手はまだ合流していませんが、チーム練習は始まっています。雰囲気はどうですか?
7月16日に始動してほとんど2部練でやっています。代表組(張本天傑と安藤周人)がすごく頑張っているので、帰って来た時に「ぬるい練習やってんじゃん」とは言われたくないし、自分たちもそこに追いつけるように、今は地味な練習ばかりですけどみんな鼓舞しあってやっています。周人は年齢も同じで刺激を受けているし、あの2人の頑張りが新しい風になって、みんなそこに入っていく感じです。
梶山(信吾)ヘッドコーチは「自分でどれだけやれるか、自分で追い込め」と常々言っています。結局は試合も自分たちでやるわけなので、選手が自分たちで突き詰めないといけない。そのためのスキルやサポートは惜しまないという感じです。だからこそ、去年の悔しさと代表組からもらっている刺激はすごく意味があって、僕たち一人ひとりが「やらなきゃいけない」と思っているし、去年よりも確実に良い練習ができています。
──名古屋Dが壁を破って優勝争いに加わるには、何が必要ですか?
みんな仲が良くて派閥もないのがこのチームの良さですけど、逆に試合で雰囲気が悪くなると全員で沈んでしまうことがあります。この間は中務(敏宏)選手とイベントで一緒になり、その話を結構深くしました。誰かが言葉を出さなきゃいけないし、ベンチから出ていく選手が率先して走るようなプレーで盛り上げたり、そういう変化がないと厳しいところで持ちこたえられないぞ、と。
勢いはすごくあるチームなので、そこのマインドを変えて踏ん張る力がつけば全然違うと思います。でも昨シーズンはそれが分かっていてもなかなか難しかった。声を出すにしても、話す側だけじゃなくて聞く側の姿勢もあります。そこは今シーズンは最初から、アーリーカップであったり開幕のところから続けていって、「あの時、しっかり立て直したよな」って経験を重ねていくことで、シーズンの最後には変われると僕は思います。
「自分のキャリアを考えても、ここで化けなきゃ」
──そのマインドを変える部分で、「俺がやるぞ」という心構えができているようですね。
そうですね。チームのために必要であれば嫌われてもいいぐらいの気持ちで、プレーはもちろんですけど声を出すようにします。横浜ではたくさんの修羅場をくぐってきているメンタルの強いベテランとたくさん接して見てきたつもりなので。
──昨シーズンは先発出場がありませんでした。先発にこだわる気持ちは?
すごくこだわってるわけじゃないですが、数字としてはすべてのスタッツを上げたいです。
──個人的に満田選手に期待したいのは「2桁得点する試合を増やす」です。日本人で自らアタックして2桁得点できる選手は限られています。その一人が満田選手なんじゃないかと。
そうですね。言うのはタダなので、アベレージで2桁得点を目指します。横浜の時も試合に出始めたらそれぐらいの数字を残していました。僕ももう若手じゃないですし、今シーズンに頑張らないと「名古屋Dでは微妙な選手だよな」という感じになってしまいます。プロバスケ選手としての自分のキャリアを考えても、ここで化けなきゃいけないと思っています。
──開幕まで先はまだまだ長いですが、ファンの方へのメッセージをお願いします。
今年のドルフィンズはほとんどの選手が残ったので、チーム力を高めて開幕スタートダッシュができると思います。そのために代表組もそうじゃない選手たちも、夏の暑さに負けず厳しい練習をしています。最初からパワー全開で行くつもりなので、ファンの皆さんも最初の応援からボルテージマックスで一緒に戦ってください。
やっぱり、名古屋は大都市でいろんな方が見に来てくれるので、最初からボルテージをマックスに上げるのは簡単じゃないと思います。試合が進むにつれて盛り上がって最後にマックスになる。もし、ディフェンスコールやオフェンスコールの最初の一声からマックスだと僕たちも勢い良く行けます。シュンとなった時に耐えるのが僕たちの課題ですが、そこも皆さんの応援が必ず助けになります。そうしたら僕たちの気持ちも乗って最高の形になります。会場一体になって応援よろしくお願いします。