
「今日は自分が責任を持って遂行できた」
佐賀バルーナーズは第30節でレバンガ北海道と対戦。前半は北海道のペースで進むが、後半に入ると佐賀はチェンジングディフェンスで相手を揺さぶり自分達のペースに引き込んでいく。佐賀のスタイルであるフローオフェンスが機能し始めると、前半は決まっていなかった3ポイントシュートがヒット。第4クォーターではワンポゼッション差を争う展開となるが、残り2分半からデイビッド・ダジンスキー、角田太輝の連続得点で抜け出した佐賀がゲームクローズに成功し、79-76で接戦をモノにした。
試合のMVPには15得点7リバウンドを記録したジョシュ・ハレルソンが選ばれたが、宮永雄太ヘッドコーチはこう語る。「今日のゲームに関して僕が思うMVPは、彼だったのかなと思います」。ハレルソンの活躍も素晴らしかったが、指揮官が称賛した『彼』というのは、6点差を追いかける第3クォーターで、3ポイントシュートを連続で決めてチームに勢いをもたらした井上諒汰だった。
井上は佐賀が地域リーグからスタートした初年度からチーム一筋でプレーを続けるスモールフォワード。8シーズンに渡り主力メンバーとしてB2、B1昇格に貢献し、今シーズンはキャプテンを務める。この試合では勢い付けた3ポイントシュートだけでなく、出場していた時間帯の得失点差を表す数字でもチームトップの+13を記録し、宮永ヘッドコーチも「控えから出てきてトーンを上げるようなディフェンスと、しっかり走り切ってシュートを決める素晴らしい活躍でした」と、彼への称賛は続いた。特に課題となっていたゲームクロージングでは、相手のファウルゲームに対して井上を充てる指示を指揮官は出して重要な局面を任せた。
その井上は、このようにプレーすることを考えていた。「これまでもファウルをもらえば良いのに、不用意なパスを出してターンオーバーを犯して点差を詰められるという場面があったので、まずマインドセットとして『ファウルをもらってフリースローで十分』というところで僕が責任を持ってボールをもらいきることを意識していました」
そして残り7秒、2点リードの場面で得たフリースローの1本目を外してしまう。その時の心境を「結構緊張してるな」と、笑顔で語った井上は、2本目を確実に決めて3点差に。このリードを守り切っての勝利に「正しい選択ができたクロージングで、今日は自分が責任を持って遂行できたと思います」と振り返った。

「出場した時間でどれだけ全力でやれるか」
影のMVPとなった井上は、昨シーズンまで先発出場を務めることが多かった。しかし今シーズンは若くディフェンスにも定評のある内尾聡理が加入したことで、先発出場は1試合のみ。だが、起用法についてこう考えている。「出る順番はそこまで気にしていなく、出場した時間でどれだけ全力でやれるかというところにフォーカスしています。チーム内の同じポジション同士で競争して最後まで高め合えるようにやってきたいなと思います」
「この試合に関しては富永(啓生)選手に対して『今日はやらせない』というメッセージを送るようなディフェンスができました」。そう語るように、この試合では内尾にも負けないディフェンスを披露。ライバルとも言える存在は井上にとって「強烈な刺激になっている」と語る。
「年齢的に内尾は下ですが、実力はほぼ同じようなレベルではないかなと思います。ディフェンスに関しては内尾から学ぶこともたくさんあるので、お互いに刺激し合うことが結果的にチームへ還元されれば良いのかなと思っています」
後輩から学ぶことに躊躇することなく、すべてはチームのためと語る井上はキャプテンに任命されたことも大きな変化となり、オンコートだけでなく、オフコートにも目を配らせてチームをまとめ上げる。「今日、チームが何をするべきなのか、僕を見ればわかるようにすることが役割です」と語り、宮永ヘッドコーチも「バランスを取れる選手」と全幅の信頼を置いている。そしてベンチから出場することで戦況を見極める力も付いた。
佐賀一筋でプレーを続け、カルチャーを体現し、着実にチームとともに成長の階段を登っている。学び続ける姿勢を持ち、チームの結束力を高める役割を遂行。本人は自身の活躍について「今シーズンは、自分の中でなかなか納得のいく試合というのがとても少ないです」と語るが、井上の貢献無しには、チャンピオンシップ出場を争うチームにはならなかっただろう。一縷の望みが繋がっているワイルドカードでの進出に向け、自分を厳しく律する井上は今回のように陰ながらチームを支えていく。