
若手だった頃の安藤周人は、思い切り良く放つ3ポイントシュートをテンポ良く決めて脚光を浴びながらも「シュートが入らない日に自分はチームにどう貢献するのか」と、オールラウンドに活躍できる自分の完成形を模索していた。10年目のBリーグで31歳となった今、チームで支え合うことで接戦を勝ちきるアルバルク東京の一員として、その完成形に近付きつつある。天皇杯に続いてEASLのファイナルズでも結果を出し、勝つことで自分たちの存在価値を証明しようとする彼に、その意気込みを聞いた。
「オールラウンダーになることはあきらめたくない」
──安藤選手はBリーグ創設年の2016-17シーズンに特別指定選手として名古屋ダイヤモンドドルフィンズに加入して、もう10年目になります。当初は取材するたびに『悩んで学んで』という感じでしたが、今は完成されたプレーヤーになった印象です。
あっという間の10年だと感じますね。最初の3年間は試行錯誤の繰り返しで、得るものは多いんですけど、多すぎて頭がパンクしそうになりながら必死でプレーしていました。ルーキーがすぐ試合に出るのは難しいのに、ヘッドコーチの梶さん(梶山信吾)が僕を信頼してずっと使ってくれたことで、いろんなことを経験できました。4年目でようやく「慣れてきたな」と感じられるようになって、そこからは毎シーズンが本当にあっという間です。同じことをやり続けているのに、毎日飽きがこないのは面白いですね。
──選手として成熟する上で重要だった経験を一つ挙げるとしたら何ですか。
早い時期に日本代表に呼ばれたことですね。僕のイメージではもっと先だったんです。当時はチームでたくさんシュートを打たせてもらって得点を取っていて、スタッツは良かったんですけど、チームが勝てていたわけではなくて。そこで田中大貴さん、比江島慎さん、富樫勇樹さん、篠山竜青さんのように、これまで日本代表を引っ張ってきた、なおかつチームを勝ちに導いてきた選手と一緒になって、「自分が日本代表にいていいのかな?」と思ってしまって。それで自分のパフォーマンスを出せなかったのは今思うとすごくもったいなかったし、まだまだ若かったんだと思います。
それでも、早い段階で日本代表を経験できたことで、そこからの学びは早くなったと思います。ジョーンズカップから始まってワールドカップまでいろんな経験をして、自分がこの舞台で何をすべきか、どんな気持ちで臨むべきか、そういうメンタルの部分で成長させてもらえました。
──その頃の安藤選手は、世の中からシューターと言われるのがあまり好きではなくて、シュートが入らない試合でも勝利に貢献できるオールラウンダーになりたいと繰り返し語っていた印象があります。あの頃にイメージしていた姿になれていますか?
いやあ……プレーの引き出しは増えましたが、ここをゴールだと思ってしまったらその先には行けないので、まだまだいろんな選手のプレーを真似て自分のものにしたいですし、それを毎日考えるのがこの仕事の楽しさだと思っています。この先も10年やれるかと言えば難しくて、次第に学べることは限られてくるんだと思いますが、オールラウンダーになることはまだあきらめたくないですね。

「一人ひとりが責任感を持てたから結果を出せました」
──昨シーズンまで、EASLについてはどんな印象を持っていましたか。
「過酷だよなあ、できるのかなあ」と思っていました(笑)。やっぱり移動距離が長くなりますし、他のチームが休んでいる時期に自分たちがその遠征をするのはしんどいですよね。僕らは昨シーズンにタイトルを取ったわけじゃなく、気付いたら出場することになっていて、気付いたらモンゴルにも遠征しているし、次はマカオですし(笑)。
──EASLグループリーグの初戦、モンゴルのザック・ブロンコスにホームで負けたのは衝撃でした。Bリーグでも開幕から連敗していて、チームのショックも大きかったのでは?
僕のシュートが1本も入らなかったんですよね。打っても打っても決まらない。僕以外もそれほど入りませんでした。スティーブ・ザックとアイラ・ブラウンは急遽合流したばかりでコミュニケーションを取るのが難しい中で、初めてのEASLの試合という難しさがありました。
特に難しかったのがボールの違いです。最初にそのボールに触ったのが試合前日で、僕の感覚的にはすごく引っ掛かってシュートタッチが全然違う。レフェリングなども含めて対応力のところで負けたと思います。終盤の大事なところで僕が何本か決めていれば、もうちょっと違う試合になったんですけどね。
──海外遠征で行ってみないと分からなかった難しさはありましたか。
モンゴルでは遠いこととか寒さ以外にも、試合をしていて「なんだこれは?」と思うぐらい呼吸が苦しかったんです。あとから聞いたら標高が高くて空気が薄かったらしいです。でも、先に聞いていたらもっとしんどかったはず(笑)。あの状況で難しい試合をよく勝ちきれたと思います。
──今シーズンは開幕前から今に至るまでケガ人が続出する中で、その時にいる選手で勝つためにベストを尽くす戦いができるようになって、難しい試合で勝ち筋を見いだせるようになっています。天皇杯の優勝はまさにその成果で、ケガ人続出が結果的にプラスになった、みたいな思いはありますか。
過去イチでケガ人が多い状況で、一人ひとりの責任感はすごく強くなりました。開幕4連敗、EASLも合わせて5連敗があったからこそ、それぞれが「自分がどんなプレーで貢献できるのか」をすごく考えたし、そこで結果を出すことでプラス思考で戦えています。こういう言い方は良くないかもしれませんが、ケガ人がいたから自分も含めて得るものはあったし、それが天皇杯優勝にも繋がったという思いはあります。
僕は天皇杯は見ているだけでしたが、群馬クレインサンダーズ戦では福澤(晃平)選手や菊地(祥平)さんがディフェンスとルーズボールで泥臭く繋いで、最後は(テーブス)海のビッグプレーが出ました。大変なことが多いけど、一人ひとりが責任感を持てたから結果を出せました。ケガ人が出ることを良かったとは言えませんが、そうやって成長できたのは良かったです。

競った試合展開に持ち込んでアドバンテージを出す」
──A東京は実力がありながらタイトルに手が届かないシーズンを続けてきました。それだけに今回の天皇杯優勝は大きな自信になったと思います。天皇杯に続いてEASLを制する意義は何だと思いますか。
これまで天皇杯で優勝した経験があるのはセバ(セバスチャン・サイズ)と(大倉) 颯太だけで、あの優勝の景色を初めて見たメンバーが多かったんですよね。だから「あの景色をまた見るために」と思えます。今回もEASLで優勝できればその先のBリーグ優勝に向けて良い流れを作れます。
ファイナルズではBリーグから3チームが出場していて、ファイナルで戦う可能性もあります。だからここでチャンピオンになれれば、その後のBリーグのチャンピオンシップでもすごく大きな自信を持って戦えるはずです。
──マカオに行くからには優勝したいと思うのは当然ですが、どういう形で優勝するのが理想ですか。
1点差でも30点差でも勝ちは勝ちなんですけど、やっぱり大事なのは試合内容ですよね。それに僕は、ギリギリで勝つ試合こそ得るものが大きいと思っています。特にチャンピオンを決める大会で接戦に勝ちきることができれば、ものすごく大きな経験値が得られます。
だからこそA東京らしくディフェンスからちゃんと入って、泥臭いプレーをみんなでやって相手の得点を抑えて、自分たちも我慢しながら戦う。そうやって競った試合展開に持ち込めば、僕たちのアドバンテージが出せるという思いがあります。EASLの準決勝、決勝でもそういう展開に持ち込んで勝てれば理想ですね。
──EASL FINALS MACAU 2026に向けて、安藤選手個人としての意気込みを聞かせてください。
まずはこのファイナルズに進出できて良かったです。ここでチャンピオンになれるかどうかで、その先の戦い方も変わってくると思うので、自分たちの戦いをしっかりやることに集中します。出場する6チームはすべて優勝を狙ってきます。EASLは国の威信を懸けた戦いでもあるので、僕たちもプライドを持って2試合を戦い抜きたいです。
結果として優勝できれば良いですが、まずは目の前の試合に集中して良いゲームができるように。僕個人としては、ザック・ブロンコスとの初戦みたいなことが決してないように、まずは1本しっかり決めて波に乗りたいです。
誰の隣に座りたい?😏
約5時間のフライトを終えて、マカオに到着🛬#アルバルク東京 #GRITUP #EASL https://t.co/Pboh3y0wxd pic.twitter.com/sIVGKwJAwJ
— アルバルク東京【ALVARK TOKYO】 (@ALVARK_TOKYO) March 18, 2026