アルバルク東京

アドマイティス「残っているメンバーで乗り越える」

アルバルク東京の2025-26シーズンは波乱の幕開けとなった。ブランドン・デイヴィスとライアン・ロシターがインジュアリーリスト入りし、テーブス海もそれに続いた。開幕戦では中村浩陸が戦線離脱し、Bリーグでは開幕4連敗。その間にEASLではホームでの初戦でザック・ブロンコスに手痛い敗戦を喫した。その後は連勝する時期もあったが、安藤周人がケガをし、デイヴィスやテーブスは再びの戦線離脱。現在もライアン・ロシターがインジュアリーリストに入り、開幕から6ヵ月が経過した今もケガの連鎖は続いている。

ケガで選手が抜けたり入ったりの繰り返しで、本来とは異なるポジションでプレーする選手も複数いる。さらにEASL出場で試合数が増えており、疲労の蓄積もある。シーズンが佳境に差し掛かる今も、A東京はケガ人を増やさないためにプレータイムを制限し、練習の強度も落とさざるを得ない。

それでも、チームの士気は非常に高い。これはまさに『ケガの功名』で、苦しい状況でも言い訳をせず目の前の試合に集中して、誰が欠場していようが勝ち筋を見いだす戦い方に自信が持てるようになってきたからだ。

「EASLも合わせて開幕5連敗した時は選手たちも沈んでいましたが、辛抱強く踏ん張り、勝つことだけを考えてプレーしてくれました。シーズン序盤で勝ち負けを判断するのではなく、前向きに努力して一歩ずつ進んでいった結果、今のチームはザック・ブロンコスとの初戦に負けた時とは全く異なるチームになっています」

そう語るのはA東京のヘッドコーチ、デイニアス・アドマイティスだ。就任4年目で、自分の理想とするバスケを形にできると意気込んで臨んだ今シーズンは、ケガ人の対応に追われる日々となっている。「戦術をしっかり組んでも、試合の前日や当日にケガ人が出てしまうストレスはもちろんあります。ですが、選手にストレスを感じさせないために私がストレスを抱えることに問題はありません」と指揮官は言う。

「それに、選手たちがゲームプラン通りにプレーしなかったり、集中していないまま試合をしたら問題ですが、今のチームは戦う姿勢とアイデアを持ち、全力を尽くして勝ちに行っています。それで負けても受け入れられます。ベストメンバーで戦うことは今シーズン一度もできていませんが、残っているメンバーで乗り越えられるようになっています」

ザック・バランスキー

「プライドがチームを良い方向に持っていってくれた」

これだけケガ人が多いと、チームが空中分解していてもおかしくはなかったはず。これまでにも、強力な戦力を擁したチームがケガ人をきっかけに悲惨なシーズンを送った例は少なくない。だが、A東京は逆にチームの結束を強めて結果を出している。Bリーグでは東地区で上位争いを演じ、天皇杯では14大会ぶりの優勝を果たした。

EASLでも開幕戦の黒星から立ち直っての5連勝で、ファイナルズ出場を決めている。ザック・バランスキーは「グループリーグ全体では10点中7点、完璧ではないけどそこそこ良い戦いができたと思います」と語る。

「最後のザック・ブロンコスとの試合は終盤までビハインドでしたが、本当によく巻き返して勝てたと思います。自分たちのせいで接戦になったのですが、そこで勝ちきれるのが今シーズンの僕たちの強みです。ただ、自分たちのバスケが40分間できればもっと楽に勝てるはずです」

A東京が苦難の中でも前向きでいられた理由を聞くと、「連敗からシーズンが始まって、主力を何人も欠いて、言い訳を探せばあったと思うんですけど、そんなにプライドの低い選手はいません」という答えが返ってきた。その前提がある中で、バランスキーはキャプテンとして、「ケガ人が多くてもお客さんは見に来てくれるし、最後まで応援してくれる。だから情けない試合はできない」と仲間たちに声を掛けたという。

「そういう話をしたことはありますが、一人ひとりが自然とステップアップして良い雰囲気を作りつつ、ケガ人が1人、2人と復帰して。するとまた1人抜けたりする繰り返しなんですけど、今シーズンはもうフルメンバーで戦えないのが通常運転になりました。『誰々がいなかったから勝てなかった』なんて言い訳をしていたら、今の時点でシーズンは終わっていたと思います。周囲からもそう言われたくはないですし、そんな一人ひとりのプライドがチームを良い方向に持っていってくれました」

「だから、今まで以上にお互いを信頼し合えているかもしれないですね。今シーズンはケガ人が多くて、普段と違う役割を担当したり、慣れていないポジションを任されたりする中で、全員がお互いにカバーし合おうという気持ちが強いと思います。オンコートでもオフコートでも良いコミュニケーションが取れていますし、それが良い信頼関係に繋がっていると思います」

ザック・バランスキー

「決勝をBリーグのチーム同士でやりたい」

その信頼関係の構築に、キャプテンとしての自分の影響力が発揮されているのではないかと聞くと、バランスキーは「ないんじゃないですか。そこは自分が言うことじゃなく、周りが評価してくれるかどうかだと思うので」と笑った。

「僕は本当にいつも通りで、キャプテンになる前と今でやっていることは何も変わりません。僕自身が率先してコミュニケーションを取るより、全員がコミュニケーションしやすい場を作るのが僕なりのキャプテンシーです。外国籍選手はもちろん、ウチはコーチも英語を話すので、そこでただ訳すだけじゃなくて、誰でも発言しやすい空気感を作ることですね」

では、キャプテンとしてのバランスキーをどう評価しているのか、アドマイティスコーチに語ってもらった。指揮官は「よく聞いてくれた」と言わんばかりに前のめりになって「ザックはキャプテンとして素晴らしい役割を果たしている」と語り始めた。

「彼は選手としての貢献も素晴らしいんだ。いつもやっている3番ポジションから4番ポジションへのアジャスト、出場時間が15分から30分に増えるような不慣れな起用に応えての活躍は高く評価できる。コート上のリーダーであると同時に、ロッカールームでも常にポジティブなメッセージを発信してくれている。申し分のないキャプテンだよ」

どん底からスタートする苦しい状況だったが、それでも前向きに努力できるメンタルの強さを発揮。天皇杯優勝で大きな自信も得られた。次はEASL、マカオでのファイナルズだ。

「どのタイトルだとしても、そこにチャンスがあるならプロとして全力で勝ちに行くし、大会に名前を残したい。そこで僕たちにしかできないチャレンジとして『3冠』があります。それを達成したチームはまだBリーグにないので、2つ目のタイトルを全力で勝ち取りにいきます」とバランスキーは言う。「理想を言えば、東アジアの大会の決勝をBリーグのチーム同士でやりたいですね。そうしたらファンにとってもアツいと思うので」

アドマイティスコーチは「短期決戦の中で、自分たちの力をどう出しきるかです」と抱負を語った。「メンタル的に崩れず、フィジカルで負けず、攻守においてゲームプランを遂行する。口で言うのは簡単ですが、上手くいかない局面もあるでしょう。そうした時こそ、一つのディフェンス、ルーズボール、リバウンド、1本のフリースローといった細かい部分で上回り、勝ちを呼び込むメンタリティを持って戦いたいです」