写真=古後登志夫

移籍の少ないWリーグにおいては異例の大型補強を連発

トヨタ自動車アンテロープスが大きく生まれ変わろうとしている。矢野良子(3×3に転向)、久手堅笑美(現役引退しサポートコーチに)といった長くチームを支えたベテランが退団する一方で、ヒル理奈、馬瓜エブリン、長岡萌映子、三好南穂の4選手の加入を発表した。

選手の移籍が活発ではないWリーグにおいては異例の動きだ。

長岡萌映子は23歳、これまで富士通のエースとして活躍したきたものの、昨夏のリオ五輪は不完全燃焼に終わった。昨シーズンも富士通を牽引できず、この夏に新天地を求めることに。現在は日本代表の一員としてヨーロッパ遠征中。移籍が決まって精神的に吹っ切れたのか、昨夜に行われたマケドニアとの国際親善試合ではドライブに3ポイントシュートにと大暴れ、チームハイの21得点で勝利に貢献している。

三好南穂は長岡と同じ23歳。シャンソンの司令塔として活躍し、リオ五輪にも吉田亜沙美、町田瑠唯に続く第3のポイントガードとして短いプレータイムながらも存在感を発揮。今シーズンは3ポイントシュート王に輝くも、チームはベスト4止まりだった。

22歳の馬瓜エブリンはアイシン・エィ・ダブリュのエースとして活躍していたが、長岡や三好と同じくより高いレベルでのプレーを求めて移籍。妹の馬瓜ステファニーもこの春に桜花学園を卒業してトヨタ自動車に加入しており、このタイミングで揃ってプレーすることになった。

24歳のヒル理奈は、桜花学園を卒業後にアメリカに渡り、ルイジアナ州立大学でプレーしながらWNBA入りを目指していたが、帰国してトヨタ自動車への加入を決断。トヨタが掲げるチームバスケットを体現できるガードで、Wリーグではルーキーとなるが即戦力の期待がかかる。

キャプテンの大神雄子、リオ五輪で主役を演じた栗原三佳と近藤楓、急成長を遂げた水島沙紀を擁してファイナルに進出した昨シーズンのチームが、今回の補強で大幅に強化されることになる。新加入の4人はいずれも代表クラスであり、まだこれから成長が見込める若い選手。もちろん全員がレギュラー候補となる。Wリーグ開幕は10月7日とまだ4カ月先だが、その前にはチーム内での強烈なポジション争いが行われるはずだ。

トヨタ自動車の男子チーム、アルバルク東京を率いたドナルド・ベックが指揮を執るようになって2年、チームは急成長を続けている。昨シーズンは大きな補強がないにもかかわらずファイナルに駒を進めた。大型補強を実施して狙うは、もちろん『女王』JX-ENEOSを超えることだ。

単に強いだけでなく、鉄壁のチームワークを誇るようになったトヨタ自動車。新加入の4人がチームの雰囲気に触発され、心機一転でまた一回り成長しすることを願いたい。