「あのシュートは、シアトルに捧げたもの」
今年の4月下旬、トレイルブレイザーズのデイミアン・リラードは、サンダーとのカンファレンス・ファーストラウンド第5戦で、勝ち上がりを決める37フィートの超ロングスリーを成功させた。
まだ記憶に新しいこのクラッチシュートにより、結果的にサンダーは一つの時代に終止符を打った。トレードを要求したポール・ジョージをクリッパーズに、そして同じくラッセル・ウェストブルックをロケッツにトレードし、有望な若手、将来の指名権をかき集める方針に転換した。
あの『デイム・タイム』から約3カ月が経ち、リラードはラジオ番組に出演した際、「なんと言えば良いのかな。あのシュートは、シアトルに捧げたものだったよ」と、冗談を交えて答えた。
時計の針を2008年まで戻そう。
サンダーの前身は、シアトルに本拠地を置いたスーパーソニックスだった。それが本拠地であるキー・アリーナの老朽化に伴い、2008年に本拠地をオクラホマシティに移転することが決まった。
シアトルでは、本拠地移転が決まる以前からソニックス存続に向けた運動が盛んに行なわれたが、ファンの願いは叶わなかった。それからというもの、シアトルではサンダーに不運が降りかかることを望む熱狂的なソニックスファンが増加したと言われている。前述したリラードのロング3ポイントシュートで決着がついたシリーズ後、『Seattle Times』にもブレイザーズの勝利を称えた記事が掲載されたほどだった。
また、このシリーズでは、サンダーのトラッシュトークや、挑発行為と受け取られても仕方がない行動も話題になった。
シリーズ第3戦では、すでにサンダーの勝利が決していたにもかかわらず、最後のポゼッションでジョージが力強いリバースダンクでリムを揺らした。ブレイザーズの面々は過剰に反応しなかったが、やられて決して気持ちの良い行為ではない。そしてシリーズを通してトラッシュトークを仕掛けられてもリラードらは無視し続け、劇的な形でサンダーにトドメを刺した。クラッチシュート成功後、リラードがサンダーに向かって「バイバイ」と手を振った行為は、本来ならアンスポーツマンライクと批判されても不思議ではなかったかもしれないが、『Seattle Times』は、「正当な行為」と擁護した。
Dame. Called. Game. ? pic.twitter.com/8Z0skeDbZE
— Portland Trail Blazers (@trailblazers) April 24, 2019
ブレイザーズとライバル関係にあったチームの地元メディアとは思えない反応だったが、例のシュートを「この10年以上の間で、シアトルに最も満足感を与えたNBAモーメント」と称賛したほど、胸のすく思いだったのだろう。
たとえ冗談だったとしても、シアトルのソニックスファン、メディアは、リラードの発言を聞いても怒りはしなかっただろう。むしろ逆に、共通の敵を叩いたことを思い出し、ニヤリとしたのではないだろうか。