渡邊雄太&八村塁

主役を演じた八村、多彩な能力を示した渡邊

日本でも大きな注目を集めた今年のサマーリーグ。八村塁はウィザーズの中心として活躍し、セカンドチームに選ばれました。Bリーグで活躍する比江島慎と馬場雄大も出場。渡邊雄太が所属するグリズリーズが優勝して幕を閉じました。

サマーリーグは若手の登竜門ではありますが、各チームがそれぞれの事情に応じた選手起用をしており、新たな戦力の発掘に力を入れるチーム、今年のドラフト指名選手をNBAに慣れさせるチーム、あるいはすでに実力を証明している2、3年目の選手を『中心選手』として鍛えるチームと、その狙いは様々あります。

全体1位指名を受けたザイオン・ウィリアムソンだけでなく、ドラフト上位指名選手にケガ人が多く欠場が目立つ中で、9位指名の八村への注目度は高く、その期待に応えるように試合ごとに結果を残していきました。ウィザーズは『金の卵』である八村に経験を積ませることを主眼に置いたサマーリーグとなっており、ミスがあっても長時間のプレータイムを与え、八村には自由を与えて得意なプレーをさせました。

その中で目立ったのがショートレンジからミドルレンジのシュートの正確性で、初戦は確率が悪かったものの積極的に打つことで徐々に自分のリズムに巻き込んでいくと、最後の出場となったホークス戦では25点と爆発しました。

サマーリーグで八村が打っているようなシュートは、今のNBAでは『効率の悪いシュート』として否定されることが多く、チームのエースや高確率のシューターだけが打つことを認められます。それだけウィザーズが八村に期待しているということであり、見方を変えると八村にとってもショートレンジの確、率は自身のアイデンティティを示す重要なスキルです。

シーズンになればブラッドリー・ビールやアイザイア・トーマスを中心としてアウトサイドからプレーを構築することが予想されるため、八村にはインサイドでの得点が強く求められるはず。サイズ的にビッグマンとしてゴール下だけで勝負するのは簡単ではないだけに、ショートレンジを高確率で決めて得点を稼げるかどうかが成功のカギを握ります。

ヘッドコーチが交代したグリズリーズは、サマーリーグでもその新ヘッドコーチが直接指揮を執りました。指揮官にとってもNBAルールの中で采配を振るうトレーニングであり、また早期に自身の戦術を浸透させるための機会になりました。

そのグリズリーズでは、2年目を迎えた渡邊雄太がこれまでとは違う重要な役割を任されました。ストレッチ4としてパワーフォワードで起用されることが多い渡邊は、これまでコーナーからのシュートとインサイドプレーが求められるもフィジカル負けしてしまうことが多いのが難点でした。トレーニングの成果でたくましくなってきたものの、本来得意とするプレーではないだけに苦しい戦いを強いられていました。

しかし、このサマーリーグでは同じパワーフォワードでもトップの位置でオフェンスを組み立てる役割を託されたことで、スキル面での長所が生きました。大学時代はガードだっただけに『何でもできるビッグマン』として、ボール運び・ドライブ、パス、スクリーン、リバウンド、3ポイントシュートと様々なプレーを織り交ぜることで初戦から大いに存在感を示しました。

この変化はグリズリーズがドラフト2位指名で獲得したジャ・モーラントと2年目のジェイレン・ジャクソンjr.を中心としたチーム作りに切り替えたことで発生したもので、渡邊はジャクソンが果たすであろう役割を任されたことになります。その点ではポジティブだったものの、ケガで離脱してしまったのは残念でした。

渡邊が離脱した後にその役割を引き継いだブランドン・クラークは、サマーリーグMVPを獲得する大活躍を見せました。渡邊個人のプレーは良かったものの、ドラフト1巡目指名のクラークに比べるとチームの期待度が違うだけに、本契約を勝ち取るためにはさらなる活躍が必要になりそうです。

チームの主役として得意なプレーで中核となった八村と、脇役として戦術の中で柔軟な役割を担った渡邊。チームの中での立場は大きく異なりますが、それぞれが求められらたプレーを遂行して結果を残したサマーリーグは、2019-20シーズンへの期待をふくらませてくれました。