吉本泰輔

「短期、長期のビジョン、コミットメントがしっかりしている」

琉球ゴールデンキングスの指揮官、桶谷大を新ヘッドコーチに招聘し新たな船出を迎えた男子日本代表の大きな特徴は、アシスタントコーチのライアン・リッチマンがオフェンス、吉本泰輔がディフェンス面をそれぞれ担当し、桶谷ヘッドコーチがトップとして最終的な決断を下すことだ。

吉本コーチはNBA屈指の名将トム・シボドーの参謀として長年アシスタントを務めてきた見事な実績の持ち主。シボドーと言えば堅守に定評があり、吉本コーチにはシボドー仕込みの規律とハードワークに支えられたタフなディフェンスの構築が期待されている。

短い準備期間とはいえ、吉本コーチの下で日本のディフェンスがどのように進化していくかは大きな注目だ。吉本コーチは次のように意気込みを語る。「もちろんNBAで学んだことを生かしていければと思います。そして日本人選手の規律を守る、一生懸命にやるといった強い部分を生かせる、選手の特徴に合ったスキームを入れることが重要だと思います」

また、吉本コーチは今回の代表スタッフ入りについて、兼業での活動を認めてくれた現在の所属先であるNBAナゲッツ傘下Gリーグのグランドラピッズ・ゴールドへの感謝を語る。「まずはグランドラピッズ、ナゲッツの組織にとても感謝しています。最初のオファーをいただいた時、『何を迷っているんだ、行ってこい』と言ってくれ、代表入りを後押ししてくれたことが一番うれしかったです」

そして強化委員長兼男子代表ダイレクターの伊藤拓摩、男子代表強化部会長の安永淳一との交渉を重ねていく上で、彼らの目指す方針に感銘を受けたことがオファー受諾の大きな理由だったと明かす。

「何回か話をさせてもらう中で、彼らの短期、中期のビジョンだったり、日本代表としてどういう風にチームを作っていくのか、コミットメントがしっかりしている。『みんなが来たい代表を作っていきたい』という言葉とか、僕にはすごく響きました。『皆さんがそういう思いでコミットメントされているのなら、僕もコミットメントさせてください』というのが決め手だったと思います」

また、「今回、(昨シーズンまでシボドーの下で在籍していた)ニックスから離れてGリーグに行ったことで少しフレキシビリティー(柔軟性)が生まれました。そういうタイミングも含めて、今回代表入りがうまくいったことは良かったです」と続ける。

吉本泰輔

「どこかのタイミングで日本の国歌を試合で聞けたらと」

上記の理由に加え、吉本コーチにとって今回の代表入りの大きな後押しとなったのは人の縁だ。伊藤強化委員長、安永強化部会長、桶谷ヘッドコーチ、リッチマンアシスタントコーチと、旧知の仲が多い。

特に安永強化部会長は、NBAネッツの球団職員だった時、NBAに映像を配信している会社を吉本コーチに紹介した繋がりがある。その関係でこれまでオフシーズンになると何度か琉球を訪問し、そこで桶谷ヘッドコーチとも親交を深めていった。

桶谷ヘッドコーチは、就任会見の時、「ダイス(吉本)とは昔からの仲で、いつか代表で一緒にやりたいねと言っていて、ついにこのタイミングが来たねという話をしました」と語っていた。そして、吉本コーチも「一緒にやりたいと彼も思ってくれていたのはすごくうれしいです。僕も桶さんとだったら一緒にやりたいと思いました。そういう人の繋がりがありますし、彼は素晴らしいコーチであると共に、それ以上に素晴らしい人です。そういう人たちと日本代表で一緒にチームを作っていけることがうれしいです」と信頼を強調する。

NBAの世界で長らく活躍している吉本コーチだが、「常に日本代表のことは追っていました」と明かし、代表への思いをこう語る。「代表に入れるのはすごく誇らしいことです。もうNBAに15年いますが、試合前にアメリカ国歌が流れます。レギュラーシーズンやプレーオフを合わせると毎年100回くらいです。それを15年続け1500回とアメリカ国歌を聞いている中、どこかのタイミングで日本の国歌を試合で聞けたらと思うことがありました。それが今回実現するのは本当に素晴らしいことでエキサイトしています」

日本人コーチとして唯一無二の実績を残している吉本コーチが、日本代表にどんな進化をもたらしてくれるかは、Window2における大きな見所となる。