アダム・シルバー

制度の不備を認め、ロッタリー制度の抜本的な見直しへ

オールスター期間中の現地2月14日、NBAコミッショナーのアダム・シルバーは定例記者会見の中で、リーグで横行するタンキングについて「厳格に対応する」と語った。

戦力均衡のためにドラフト制度を採用し、前年の成績下位のチームから上位指名権が得られるNBAのルールでは、シーズン終盤にプレーオフ進出をあきらめたチームが故意に負けるタンキングが横行している。

負けることがドラフト上位指名権の獲得に直接繋がらないようにロッタリー制度が導入され、2019年からは1位指名権を獲得する確率が下位3チームまで14%になり、『積極的に負ける』ことのメリットを削る制度改定が行われた。

しかし先週には、プレーできる状態の主力選手を勝負どころで起用しなかったことでジャズが、ペイサーズは先発3人を欠場させたことでペイサーズが罰金を科されている。

NBAの『不都合な真実』であるタンキングについて、シルバーは「リーグで長らく続いてきた問題だ」と語り始めた。「1960年代にはコインを投げて指名順を決めていた。その後、1980年代にロッタリー制を導入し、その仕組みも何度か改定してきた。しかし、成績が最も悪いチームが良い順位の指名権を得るというやり方は、エコノミストからは『インセンティブが逆転している』と指摘される。しかもデータ分析が進化した今、インセンティブの不一致が誰の目にも明らかになっている」

「今の状況はこれまでより悪化している。それが今回の罰金に繋がった」とシルバーは言う。「今年のドラフトは非常に有望な選手が揃っており、次の2年間はそれほどでもないという見方があり、それが例年以上に各チームの行動に影響を与えているのは間違いない」

『エプロン時代』を迎えてサラリーキャップの縛りが厳しくなったことも、この傾向を強めている。サンダーはひたすら指名権を集めることで優勝を勝ち取り、スパーズやロケッツが追随している。全盛期のスター選手を集める『ビッグ3』の時代が終わり、高順位の指名権が何よりも価値を持つ時代が到来している。

「タンキングは明らかに不自然だ。リーグはケガ人の報告や選手起用の判断についてチームと多くの議論を重ねているが、これは望んでやりたい仕事ではない。ファンも望んでいない」とシルバーは言う。

今回はジャズとペイサーズに罰金を科した。タンキングが続くのであれば今後より重い罰則もあり得るとして各チームを牽制すると同時に、その作業が問題の抜本的な解決に繋がらないことも分かっている。

「チームの難しい立場も分かる。ここにいるメディアの皆さんも当然分かっている通り、今のNBAで一番の悪手は中堅チームに留まることで、優勝を狙えないのであれば成績を悪くしてドラフトでの優位性を取りに行くべきだと言われる。それで試合の質が下がればファンは不利益を被るが、ドラフト指名権のために応援するチームに『負けてほしい』と願う矛盾した状況が生まれてしまう」

タンキングは許さないとの姿勢を強調しながらも、シルバーはこれが制度の不備によるものだと認め、競技委員会がロッタリーの仕組みを根本的に見直していることを明かした(ただし、ドラフト制度の廃止には触れていない)。これまでもアイデアは多数出ている。「同一チームによる2年連続でのトップ4以内の指名権獲得を禁止」や「オールスター時点での順位でロッタリーを行う」もその一つだ。

「最終的には全オーナーが自チームの利益より全体を考えなければならない。我々は運命共同体であり、公正な競争のためのシステムを望んでいる。そして何より、最高のエンタテインメントを期待するファンの存在を忘れてはならない」