文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

「最低限のノルマをクリアでき、ホッとしています」

横浜ビー・コルセアーズは広島ドラゴンフライズとの入替戦に勝利し、B1残留を決めた。試合を通じてインサイドで主導権を握り、最終的には20点差を付けての圧勝となったが、前半を終えて4点差と力は拮抗していた。

勝利を一気に引き寄せたのは25-13と圧倒した第3クォーターだ。第3クォーターに6得点を挙げて流れを作った竹田謙は、「良いスクリーンがかかって、オープンなシュートが多かったので思い切り行けた」と話す。

竹田は速攻や精度の高いミドルシュートで日本人トップとなる12得点を挙げ勝利に貢献。オフェンス面での活躍が目立つが、「ディフェンスで貢献できるように意識して入った」と言うように、相手の得点源を封じ、攻守ともに高いパフォーマンスを見せ、B1残留を勝ち取る原動力となった。

負ければB2降格となる、ファイナルに匹敵するような緊張感の中でのプレーを終えて「2度とやりたくないです」と素直な心情を吐露。それでも、「たくさん横浜からブースターの方が来てくれてやりやすい空気を作ってくれたので、気持ち良く試合に入れた」と、ブースターの声援が竹田の好パフォーマンスを生んだ。

「一年間苦しいシーズンを戦ってきて、なんとか最低限のノルマをクリアでき、ホッとしています」とようやく肩の荷を下ろした。

年齢とブランクによる理想と現実と向き合うシーズン

2年のブランクを経て現役復帰、38歳の大ベテランである竹田にとって、長いシーズンは苦しみの連続だった。「シーズン最初は何やってんだろって、自分の身体じゃないみたいな感覚がありました。思い通りに行かない場面はかなりあって、もどかしいところはありました」と、身体と頭のミスマッチがあったことを明かす。

38歳で初めて経験する60試合のレギュラーシーズン、その先に疲労困憊で迎えた『絶対に負けられない』ポストシーズンだった。「特に今月に入ってからは疲労の部分で、自分の気持ちと身体が噛み合ってなかったというか、厳しかったし辛かったです」

だが、苦労を重ねながらもシーズン終盤に向けて竹田のパフォーマンスは研ぎ澄まされていく。チームが連敗を続ける中、ベンチスタートから先発へと回り攻守に奮闘。身体と頭の感覚を取り戻し、調子を上げていった。秋田ノーザンハピネッツとの『第3戦』も富山グラウジーズとの『一発勝負』も、そして広島との入替戦でも、竹田はスタートで出場してチームを支えた。

「またバスケットが楽しいなと思えました」

チームにとってもまた、長く苦しいシーズンだった。ヘッドコーチの交代、ケガ人とトラブルが相次いだシーズン後半、「チームとしてまとまれない時期が長かった」と竹田が言うように、シーズン終盤の失速が響き残留プレーオフに回った。

「プレーについてもそうですが、自分にもっと何かできるんじゃないかと考える中でのフラストレーションはありました」。まとまりきれないチームに対し、ベテランとしての役割を全うできていない自責の念も、竹田を苦しめる一因となった。

それでも無事にB1残留を決め、結果を出してシーズンを終えることができた今、「純粋に楽しかったなっていうところはあります」と笑顔で語った。「自分でできること、できないことの区別や、疲労との付き合い方など試行錯誤しながらでした。自分自身の弱さだったりが見れたので、そういう意味では良い経験ができたかなと思います」

年をまたぎ、また1つ年を重ねた竹田はこうした苦難をポジティブに捉え、あらためてバスケットボールの楽しさを感じ取った。「より深い部分が見れたかなという感じがして、またバスケットが楽しいなと思えました」

そう笑顔で語る38歳の瞳は、バスケットを純粋に楽しむ子供のようにキラキラとしていた。来シーズンもB1のコートを駆け回る竹田の勇姿に期待したい。