「今、リーダーシップを執っているのは日本人選手です」
『第101回天皇杯 全日本バスケットボール選手権大会』、シーホース三河は準決勝で宇都宮ブレックスに71-53と圧勝。2018年以来となる決勝進出を決めた。
Bリーグ発足前、三河は数々のタイトルを獲得する日本バスケットボール界屈指の強豪として長らく君臨した。特に天皇杯は2002年から2005年、2008年から2011年にかけて2度の4連覇を達成するなど圧倒的な強さを誇っていた。だが、Bリーグ誕生以降、リーグ上位の成績を残しつつも、タイトルがかかるゲームに出場したのは、18年の天皇杯決勝のみだ。
もちろんチームの目標は優勝であり、決勝進出は通過点に過ぎない。だが、2021年2月を最後にこれまで負け続けてきた宇都宮を撃破し、久しぶりの頂上決戦へと戻ってきたこと自体が、1つの大きな壁を乗り越えたことになる。
三河のチーム編成を担う佐古賢一取締役は、2000年代に傑出したゲームコントロールで三河の前身であるアイシンシーホースに数々のタイトルをもたらした。天敵となっていた宇都宮に勝ってのファイナル進出への思いをこう語る。
「長らくファイナルから遠ざかっていましたけど、今回選手たちがやるべきことにフォーカスしてくれていることが、良い結果になっていると思います。15連敗中だった宇都宮さんに天皇杯の大きい舞台でしっかり勝てたことは選手たちの自信、チームとしてのステップアップになります」
今大会の三河は初戦でB2のライジングゼファー福岡に95-42と圧勝すると、ベスト8では琉球ゴールデンキングスに92-85で勝利した。今日の結果を含め、昨シーズンのBリーグ決勝を戦ったリーグ随一の強豪に連勝したが、ここまでの勝ち上がりで注目すべきは日本人選手たちの活躍だ。今回の天皇杯は、外国籍がベンチ登録3名のオン・ザ・コート2であるBリーグと違い、ベンチ登録2名のオン・ザ・コート1と日本人選手の比重が高まっている。
その中で三河はベスト8、ベスト4でともにゲームハイの得点を挙げた石井講祐、攻守でハイパフォーマンスを続ける西田優大など、日本人選手たちがチームを引っ張っている。佐古取締役は、次のように手応えを感じている。「今、リーダーシップを執っているのは日本人選手です。今日も活躍してくれた石井選手、西田選手に須田(侑太郎)選手の3人がキャプテンとして本当に責任感を持ってリーダーの役割をやってくれています。外国籍選手に頼らなくても、日本人選手で戦えることが数字にもしっかりと出ています」

「編成をやっている側からすると1人も変えないことは賭けです」
今シーズン開幕前に佐古取締役に取材をした際、定着しつつある新たなチームカルチャーを確立させるため、「今シーズンは『日本人選手を1人も変えないこと』を編成の肝としました」と、こだわりを明かしてくれた。「今のメンバーは26歳、27歳とここから成熟していく選手が多いのが特徴です。そこに優勝経験のある須田と石井がおり、ダバンテ・ガードナーもベテランとしてチームを支えてくれています。これから全盛期を迎える選手たちが、地方の三河で『何かを成し遂げたい』とチームに残ってくれた思いを大切にして文化を作っていきたいので、このような編成を行いました」
毎年、チームは何らかの変化を加えることがプロチームにとって当たり前であり、変えないことのほうが珍しい。何も動かないことで結果が出ない場合、補強をして結果が出ないよりも風当たりは強くなる。だが、この大きな決断が間違いなくプラスに働いたことは、今回の結果が証明している。佐古取締役は語る。「編成をやっている側からすると1人も変えないことは賭けです。信頼がこういう形で結果に出ると編成をしている側もうれしいですし、選手たちもこちらの期待に応えられたことを自信にして、これからもっと良くなっていけると思います」
そして選手として何度も経験していたファイナルに、今回はチーム首脳と違った立場で戻ってくることへの思いをこう続ける。「GMを担当することになってまだ3年ですが、こんなに早く、久しぶりのファイナルに連れてきてもらえることは幸せです。そして、あと1つ勝って、チャンピオンになることで進化できることはあります」
多くのタイトルを獲得していた佐古取締役だからこそ、タイトルを勝ち取る経験がチームにもたらす効果の大きさを熟知している。そして、ファンの声援が大舞台でどれだけ選手たちの支えになるかを分かっているからこそ、次のメッセージを送る。「久しぶりのファイナルですが、選手たちはここで満足していないです。しっかり勝って頂上の景色を見たいですし、ファンの皆さんの日頃からの応援は本当に選手たちの後押しになっています。決勝は是非とも会場に来て選手たちを叱咤激励していただけたらと思います」
明後日の大一番に勝ち、2016年天皇杯以来のタイトルを獲得すれば、三河にとって新たな歴史の始まりとなる。そのためには、ホームのアルバルク東京に負けない熱量の応援も大切になってくる。
