後藤音羽

「『自分たちはやってやる』という気持ちでプレーしていました」

『第92回皇后杯全日本バスケットボール選手権大会』のファイナルラウンド2回戦、東京医療保健大学は、優勝候補の一角であるデンソーアイリスに76-81と惜敗した。

今シーズン、東京医療保健大は春のシーズンからタイトルを総なめにし、公式戦無敗でインカレ王者に輝く圧倒的な強さを見せた。その上でチームは、シーズン前から大学日本一と共に皇后杯優勝を目標に掲げており、インカレ優勝後も高い集中力を持って練習を続け今大会に臨んだ。

試合は第2クォーター途中からデンソーのペースとなり、東京医療保健大も食い下がるが、第4クォーター残り6分8秒の時点で11点のビハインドを背負っていた。しかし、ここからルーズボールの競り合いで上回ることで流れをつかむと、エース大脇晴のアタックを軸に猛追。残り2分で2点差にまで詰め寄るが、最後は赤穂ひまわりのオフェンスリバウンドから髙田真希の3ポイントシュートと、デンソーの誇る2大エースの決定力にトドメを刺され、あと一歩で大会史上に残る番狂わせを逃した。

東京医療保健大の恩塚亨ヘッドコーチは、選手たちの奮闘を称えた上で敗因をこう語る。「強度の高いプレッシャーがかかる場面でいつも通りのプレーができるか、できないかの差で積み上げが足りなかったです。ここ一番の勝負どころを抑えられたのはさすがでした。最後の大事な場面で、赤穂選手のオフェンスリバウンドが勝負を決めましたが、あの場面でリバウンドが取れるポジションにいて戦うことができる。逆に私たちは人数をかけることができなかった。簡単にいうと詰めの甘さが出たと思います」

本気で日本一を目指していた東京医療保健大の面々にとっては、悔しい敗戦でしかない。だが、Wリーグのトップチーム相手に大学生が最後まで食い下がった姿は見事だった。24得点8リバウンドの大脇、20得点17リバウンドのロー・ジャバらと共に、後藤音羽も1年生ながら39分52秒のフル稼働で11得点4アシストと素晴らしいプレーを披露した。

「デンソーさんが相手でレベルの違いをわかっている中でも、自分たちはしっかり勝負をすることを大事にし、全員が『自分たちはやってやる』という気持ちでプレーしていました」

このような強い気持ちでコートに立っていた後藤は、自分のプレーについて「まだまだという感じです」と語る。「試合の大事な場面でスコアラーとして点を取ること。ディフェンスの面でもっとボールマンにプレッシャーをかけることができたら、チームにエネルギーを与えることができると思いました」

後藤音羽

「チームを勝たせられる選手になることが一番の目標」

後藤は高校時代から世代屈指の選手と高く評価され、夏に開催された『FIBAU19女子ワールドカップ2025』ではともにチームトップの平均18.9得点、7.6リバウンドと大黒柱としてチームを6位に導いた。東京医療保健大でもシーズンを通して中心選手として活躍。濃密な大学1年生のシーズンをこう振り返る。

「この1年はいろいろな経験をさせていただきました。バスケ面だけでなく、人間性の部分でものすごく学ぶことが大きかったです。自分たちはいろいろな方達の支えがあるから、今ここでバスケだったり寮生活ができています。感謝を大事にして、何かあるたびに連絡して感謝することを心がけていました」

そしてチームの中心として、勝利への貪欲な気持ちが増したと続ける。「プレー面ではドライブ、3ポイントシュート、ポストアップができるオールラウンダーとして成長していきたいです。今まで高校時代とかは『自分が勝たせる』という強い思いをコートであまり体現できていなかったと感じていました。チームを勝たせられる選手になることが一番の目標です」

パリ五輪の女子日本代表ヘッドコーチを経て東京医療保健大に昨シーズン途中から復帰した恩塚ヘッドコーチは、次の2つを大切にしていると語る。「オリンピックに3回行かせていただいて、世界で戦うとか勝つために必要な能力は理解しているつもりなので、それをできるだけ早い時期から濃い密度で伝えて成長の力になりたいです。もう1つは、選手たちに意識的に努力すると自分の人生を高めることができる実感と自信を持ってほしい。バスケットがうまくなる、仕事など他のことで成功することも一緒だと思っているので、夢を叶えるための賢さと強さを持てるように導いていきたいです」

1年生でこれだけの活躍をすることで来年以降は後藤に対する周囲の期待も高まる。だが、後藤は「プレッシャーもありますが、プレッシャーを面白がる、当たり前という感じでバスケット自体に集中して勝つことにこだわっていきたいです」と力強く語る。

後藤が次代の日本代表を担える能力の持ち主であることは間違いない。恩塚コーチの下、世界で戦える選手になるための英才教育を受け、どんな選手に進化していくのか楽しみだ。