ブルース・ブラウン

主力全員が欠場する試合でシクサーズとの延長戦を制す

ナゲッツはニコラ・ヨキッチが大成して優勝争いのできるチームになった時期から、常に選手層に問題を抱えている。この間に生え抜きで戦力となったのはクリスチャン・ブラウンだけで、他の選手は先発陣の強力な個性にかすんでしまい、自分を確立したベテランの獲得だけが補強になってきた。

アーロン・ゴードンとブラウン、キャム・ジョンソンが戦線離脱し、頼みのヨキッチも膝を痛めた。現地1月4日のネッツ戦ではゴードンとブラウンが出場時間制限付きで復帰するも、3番手として優勝に貢献したマイケル・ポーターJr.がエースへと成長したネッツに敗れた。チームは年末からアウェー7試合の長期遠征中で、ネッツ戦の翌日にニューヨークからフィラデルフィアに移動してシクサーズと対戦。連戦とあってゴードンとブラウンは再び欠場し、スタメンで唯一残っていたジャマール・マレーも休養を取った。

ジェイレン・ピケットとスペンサー・ジョーンズ、ペイトン・ワトソン、ダロン・ホームズ二世という若手を大ベテランのブルース・ブラウンが引っ張るスターティングラインナップは、ヨキッチを始めとする本来の面子と比べると大きく見劣りする。さらに言えば計算できる控えのティム・ハーダウェイJr.もヨナス・バランチュナスもいない。そのナゲッツとは対照的に、開幕当初はケガ人続出でまともに戦えなかったシクサーズは、タイリース・マクシーとポール・ジョージ、ジョエル・エンビードの揃い踏みとなった。

ところが、このナゲッツがシクサーズと堂々の戦いを演じた。若手が揃ってキャリア最高のパフォーマンスを見せ、離されかかっても何度も食らい付く。第4クォーター序盤に9点差を付けられたが、ベンチから出たハンター・タイソンとジュリアン・ストローサーを中心に17-2のランで逆転。特にタイソンはこの間に2度のバスケット・カウントをもぎ取る働きを見せた。

シクサーズもこのところ調子を上げているエンビードとクエンティン・グライムズの爆発力で一歩も引かない。終盤にリードチェンジを繰り返す展開にファンは大盛り上がりで、それもシクサーズの勢いとなったが、ナゲッツは屈しなかった。ブルース・ブラウンは勝負強いシックスマンとしてナゲッツの優勝に大きく貢献したが、その後は放出されてケガで泣かず飛ばす。今シーズンにナゲッツに復帰したが、クラッチタイムを任させるのは初めてだった。そこで3年前の決定力を取り戻し、マクシーとのクラッチ力勝負に負けずにラスト3分で7得点をもぎ取り、5-4とひどく重い展開となったオーバータイム残り5秒にもゲームウィナーを決め、125-124で接戦を制した。

「終盤は全員が疲れ切っていたが、ケガ人続出で一番厳しいのはハーフコートでの戦いだったので、とにかくペースを上げてリバウンドは全員で取りに行った。普段は出場機会のあまりない選手たちがこれほどまでに頑張ってくれたことに感銘を受けた。今朝は9人だけでウォークスルーをやった。その時にこんな勝利は想像できなかった」と指揮官アデルマンは言う。

24得点7リバウンド4アシストを記録したワトソンは、この日のメンバーでは4年目と経験があり、普段からローテーション入りしている選手で、「勝利はいつも素晴らしいけど、今日は最高だ」と語る。

「戦力不足の状況で普段は出番の少ない選手たちが最高の準備をして試合に臨んだ。みんなが日々どれだけ努力しているかを証明できた。僕はみんなに『積極的にプレーした結果のミスは構わない』と伝えて、それを自分自身にも言い聞かせた。まずは思い切ってプレーすることが大事だから。そして今日プレーした全員がNBAプレーヤーなんだ。僕らのことを疑っている人は大勢いるかもしれないけど、僕らはプロとしてただ黙々と準備を続け、今日みたいな機会を待つだけなんだ」

さらに、ベンチから32分の出場で21得点8リバウンドを記録したジーク・ナジの活躍も大きかった。ナジはナゲッツ生え抜きで6年目だが、試合でのパフォーマンスよりもナゲッツが将来性を買って4年3200万ドル(約48億円)の契約を与えたことが失敗だったと話題になる方が多かった選手だ。その彼がエンビード相手に奮闘し、インサイドでの不利を最小限に留めたことが大きな勝因となった。

「こういう機会は滅多にないし、そこで全員が上手く噛み合って、個々が活躍するだけじゃなくチームとして勝てたのは最高だ」とナジは言う。「相手のビッグマンは僕より大きいけど、だからこそ機動力で勝負できると思った。普段は世界最高の選手と一緒にプレーするから脇役に徹するけど、今日は僕がチームを引っ張らなきゃいけなかった。自分に何ができるか、少しは見せられたと思う」

ナジが強調するのはチームワークだ。「自信がない選手は誰もいなかった。僕らは普段から一緒にプレーしているから、お互いのことはよく分かっている。全員に才能があり、誰だって爆発するポテンシャルを持っているんだから、『僕らの本当の力を見せてやる』という思いだった」

そして、昨シーズン終盤までアシスタントコーチとして、普段は陽の目を見ない控えの若手たちと一緒に過ごすことが多かった指揮官アデルマンに、ナジはあらためて感謝を語った。「彼はいつもこのチームの層が厚いと言い、僕らに出番がないのは実力の問題ではなく、その日その日のチーム状況によるものだから落ち着いて受け入れるよう伝えてくれる。だからこそ、今日こうして出番が来た時に、彼の信頼に応えたいと思ったんだ」

そのアデルマンは言う。「これまでも最高の勝利だと感じる試合はいくつか思い浮かぶが、ヨキッチ不在でそう感じる勝利は初めてのことだ。20年後に彼らが酒を飲みながら『あの試合はすごかった』と語り合うような試合になったよ」