「最後の大事な場面でシュートを決め、貢献できてうれしい」
ウインターカップ男子準々決勝、福岡第一は帝京長岡との熱戦に76-72で勝利。これで5年連続、過去10年間で9度目の4強入りを決めた。
福岡第一は出だしから持ち味である豊富な運動量を生かした激しいプレッシャーディフェンスで主導権を握る。帝京長岡も食い下がるが、常にリードして試合を進める福岡第一は第4クォーター早々に点差を2桁に広げた。このまま勢いに乗って突き放したいところだったが、帝京長岡の3ポイントシュート攻勢を受け、残り1分で2点差と肉薄された。試合は完全に帝京長岡のペースだったが、福岡第一は直後のポゼッションでトンプソン ヨセフハサンが値千金の3ポイントシュートを成功。これで再び2ポゼッション差に広げた福岡第一が粘る帝京長岡を振り切った。
3年生のトンプソンは第33回日・韓・中ジュニア交流競技会の日本代表に選出されるほどの選手だが、昨年のウインターカップでは登録外に終わるなど、これまで出番に恵まれなかった。しかし、高校生活最後の大舞台となる今大会は「ウインターカップのような大きい大会に出るのは初めてで、1回戦はガチガチでした。でも試合に慣れることで今は緊張より、自分のプレーをやりきるという強い気持ちが勝っています。日本一を取るためにやってきたので、今は緊張を感じていないです」と頼もしさを見せる。
実際にトンプソンは尻上がりに調子を上げ、3回戦の正智深谷戦で22得点を記録した。そしてこの試合でも16得点をマークし、第4クォーターだけで10得点と抜群の勝負強さを見せた。残り1分を切ってからの長距離砲は味方にとっても頼もしい一撃だった。チームメートの藤田悠暉は言う。「点差を離した時も帝京長岡さんは、フィジカルの強さを生かして攻めてきて嫌なところがありました。追い上げられている時、メンタルは結構きつかったです。その中で、トンプソンが最後にスリーを決めた時は勝ったと思いました」
勝負を決定づける3ポイントシュートを沈めたトンプソンだが、第4クォーター残り5分に決めた1本目を成功させるまで、6本すべてを失敗している。それでも、自分の持ち味である長距離砲への自信が揺らぐことはなかった。トンプソンはシューターとしての矜持を語る。「3ポイントが得意なので、相手も警戒してくるのは分かっていました。ボールをもらったら打ち切る。(ガードの宮本)聡、耀からキックアウトのパスが来ると信じて待っていました。パスがどんどん来い、俺が絶対に決めるぞと考えていました」
大きな仕事を成し遂げたトンプソンだが、「なかなかプレータイムがもらえなくて苦しんだ時期もありました。ここでチャンスをもらえて、最後の大事な場面でシュートを決めてチームに貢献できてうれしいです。これに満足せず、明日はもっと積極的にやっていきたいです」とさらなるステップアップを誓う。また、井手口孝コーチも「昨日から良かったですし、元々スタートで使ってもいい選手です。勝負強くなってきました」と信頼を語る。
ベスト4の対戦相手は大会屈指のオフェンス力を誇る東山で、ベスト8と同じく最後までもつれる激戦となる可能性は大いにある。その中で福岡第一が、ここ一番で流れを手繰り寄せるためにはトンプソンのクラッチシュートが再び求められる。
