大河正明

Bリーグの拡大、ナショナルアリーナの建設を宣言

Bリーグの大河正明チェアマンが会見を行い、チェアマンとして3期目に入る所信証明と、リーグの中長期戦略を発表した。

大河が2015年5月にJBA専務理事事務総長となった時には、20数名いた理事が全員辞任して6名での再スタートとなったが、2016年9月のBリーグ立ち上げを機にバスケ界は上向きに転じた。スタートから3シーズンを終えてリーグは活況を呈し、日本代表のワールドカップと東京オリンピックへの出場決定、渡邊雄太と八村塁という2人のNBAプレーヤーを輩出するに至っている。

今後もバスケ界全体としての成長を続けていくために、JBAも含むバスケットボールファミリーとして掲げる理念である「バスケットボールで日本を元気にします」や、Bリーグが発足から掲げるBREAK THE BORDERは不変でやっていく、と大河は説明する。その上で新たなビジョンとして『国民的スポーツとしての認知度向上』、『NBAに次ぐリーグとしての地位確保』、『憧れの職業NO.1、就職したい企業NO.1』を打ち出した。

「Bリーグをスタートさせた時から『2020年以降』が大事と位置付けてきた」と語る大河は、その『2020年以降』を2ndフェイズと位置付ける。ソフトとハードの一体経営、チケットのリセールを含めたデジタルマーケティングの強化、アジア戦略の本格稼働がそれにあたる。さらに、それと並行して2024年からを目途に3rdフェイズも設定し、改革を進めていくと語った。

八村塁

リーグ拡大に向け、2024年3月に新参入基準で審査実施

興味深いのは3rdフェイズの内容である。まず掲げられたのは『エクスパンション型リーグへの移行』。B1とB2それぞれ24チームを最大としてリーグを拡大する。それと同時に単年の競技成績による昇降格は廃止され、「なくすわけでなく緩やかに」と大河が説明する仕組みに変わる。

昇格してもすぐ降格するリスクが高いのであれば中長期的なクラブ経営ができないし、投資も呼び込めない。投資を受けたチームはできるだけB1に残したい。その思いから「頑張って昇格したけど、すぐに降格した」というケースをなくす仕組みをこれから導入していく。

それと同時に、ライセンス基準の引き上げも発表された。B1では「売上高12億円、平均入場者数4000人」、B2では「4億円、2400人」を要件とする。また、毎日リーグの試合を行うための会場確保も求められる。新しい参入基準での審査は2024年3月に実施。2024-25シーズンと2025-26シーズンから昇降格を緩やかなものとし、2026年に新しいB1とB2に生まれ変わる、というのが現状での未来予想図となっている。

一方で「3年連続で16位以下とか、競技力として『こことやっても面白くない』のは良くないと考えている。闇雲にエクスパンションはしない。日本人選手の質、配分金の増やし方は慎重に見て判断していく」と大河チェアマンは説明する。

そして、ナショナルアリーナの構想も発表した。「公共事業の一環として建ててもらうことは考えない。自分たちで資金調達し、毎年黒字化していく。BリーグとJBAがリスクを取ってアリーナ事業に参画する」と大河チェアマンは語る。

BリーグとJBAだけで用地を取得し、100億から200億円のアリーナ建設費用を負担するのは難しいため、関わる方々にお金を出してもらってコンソーシアムを作る。現在、有明で整備されているアリーナはあるが、あちらは音楽のコンサートがメインとなる。こちらはBリーグや日本代表、ウインターカップの試合でできる限りスケジュールを埋め、スポーツをメインとしながらコンサートなども行うことのできるアリーナと考えられている。現状では資金調達、事業運営、用地選定について検討を始めたところ。それでも大河チェアマンは「どんなに遅くても2030年、そこから前倒して2026年ぐらいに作りたい」と息巻いた。

2016年のBリーグ立ち上げからここまでは、スタートの勢いがあり、日本代表の活躍が推進剤にもなった。NBAドラフトで注目された八村塁が参戦する今年9月のワールドカップ、そして来夏のオリンピックが盛り上がるのは間違いない。ただ、その先もバスケ界全体として成長が続く保証はない。大河チェアマンが掲げたこれらの施策が、バスケ界の将来を大きく左右しそうだ。