「白鷗の歴史を途切れさせてはいけないと胸に刻んで」

大学日本一を決める『第77回全日本大学バスケットボール選手権大会(以下、インカレ)』で、男子の白鷗大は、12月5日に行われた大東文化大との準々決勝を72-63で制し、7年連続となる4強入りを決めた。

過去4年間のインカレで2度の優勝、2位と3位が一度ずつと白鷗大は誰もが認める大学バスケ界の常勝チーム。だが、今年に限っては『関東大学バスケットボールリーグ戦』直前に大黒柱の佐藤涼成が退部してBリーグの広島ドラゴンフライズに入団する衝撃の出来事が起こり、リーグ戦序盤は黒星が先行と苦戦を強いられた。そのまま失速してもおかしくない状況からチームは立ち直り、リーグ戦を3位で終えて、インカレ王座奪還まであと2勝に迫った。

この復活の立役者となったのは4年生のガードコンビ、佐古竜誠と佐伯崚介だ。彼らは先発として試合開始からディフェンスで激しいプレッシャーをかけ続けることで、白鷗大の根幹である守備の強度を押し上げた。準々決勝の大東文化大戦でも世代屈指の司令塔、塚本智裕に対して佐古が徹底マークでタフショットを打たせ続け波に乗らせなかったのは勝因の一つとなった。

この試合で12得点とオフェンスでも存在感を発揮した佐古は、何よりも守備での良いリズムを作ることを意識していた。「やっぱりディフェンスのトーンセットのところで崩れてしまうと、セカンドユニットもその流れでいってしまいます。『絶対に負けない』という気持ちで入りました」

キャプテンを務めるなど今やチームに欠かせない佐古だが「去年のインカレは、観客席で応援していました」と語るように昨年までは試合にほぼからめていなかった。しかし、今は主力として「今年は自分の代で絶対に出場したい気持ちがありました。そして、出たからにはこれまで勝ってきた白鷗の歴史を途切れさせてはいけないと胸に刻んでプレーしています」と強い覚悟を持ってコートに立っている。

また、リーグ戦序盤の苦しい時期を乗り越えた今のチームについて佐古は「涼成が抜けて苦しかったですが、その分、みんながリーダーシップを取れるようになりました。今はそこが白鷗の強みなっていると思います」と確かな手応えを語る。

「楽しみながら自分たちの最高のプレーをしたい」

白鷗大の網野友雄コーチは、ハードワーク、堅守を基盤としたチームカルチャーを体現する存在として4年生ガードコンビに大きな信頼を寄せる。「佐古、佐伯がちゃんとプレッシャーをかけるところを背中で見せてくれています。それに引っ張られて内藤(晴樹)、八重樫(ショーン龍)、小川(瑛次郎)と下級生が続いてくれています。そういう文化は継続していきたいです」

網野コーチが言及した下級生の3人は、全員が世代別の日本代表経験があるエリート街道を歩んできた選手たちだ。「元々、うちはハードワークとか堅いディフェンスによって成果を出し始めてきました。その中で今はキャリアのある子たちが入学してくれるようになってきています」と網野コーチも語るように、ここ数年の白鷗大は網野コーチの就任当初に比べると身体能力とオフェンススキルに優れ、輝かしい経歴を持った選手たちが増えている。

華やかなプレーを見せるエリート選手たちに、白鷗大のカルチャーを身につけさせることが選手の将来のためにもなると網野コーチは信念を持っている。「こういう選手たちが泥臭いプレーをできるようになると、より良くなります。オフェンスのスキルがあるだけでは選手生命が短くなる。ただ、プロでプレーするだけでなく、チームで主力になる、代表にからめる選手になるためにも、トップリーグが求めているディフェンスの強度、我慢を身につけられるようにしたいです」

この指揮官が大切に積み上げてきたチームカルチャーの申し子と言えるのが佐古だ。「このチームは自分にとって家族です」と強調する佐古の存在の大きさを、網野コーチは入部の経緯を交えて語る。

「佐古は、一般受験をして入ってきました。僕に高校時代のハイライト映像、雑誌の切り抜きと手紙を送ってきました。そして入学後のトライアウトまでの間、自分で(宇都宮)ブレックスのユースにコンタクトをとって身体を動かして準備し、トライアウトでばちばちディフェンスをやって入部を勝ち取った選手です。彼は『白鷗大でバスケをやりたい』と心の底から思っている選手だと思います。この気持ちを持ちながらも去年までBチームにいて試合にほとんど出ていない選手が、今はキャプテンをやってチームを引っ張っているのは頼もしいです」

「本当は入ってきた選手たちみんなに満足感を与えたいですが、試合で使えるプレータイムは限られていて、そういった制約の中でチームを作らないといけません。その中で佐古のような存在は大事です。彼のように我慢ができて、自分に負けずに頑張れる選手がどんどん出てきてほしいです」

明日の準決勝に向けて佐古は「大前提としてバスケを楽しむことを4年生は大切にしています。楽しみながら自分たちの最高のプレーをしたいです」と意気込む。白鷗大のやるべきスタイルを誰よりもコートで表現する佐古が楽しんでプレーできた時、チームが求める結果は自然とついてくる。