野﨑零也

シーズンハイの10得点も「喜ばしいことではない」

サンロッカーズ渋谷は苦しんでいる。チームを投影するかのように野﨑零也ももがいていた。

1210日、SR渋谷はアウェーで群馬クレインサンダーズと対戦。点を取り合うハイスコアゲームとなり、最終盤まで勝敗の行方がわからない接戦となったが、94-92で敗れた。

SR渋谷は、中断期間明け3連敗を喫して813敗。開幕5戦こそ41敗とスタートダッシュを切ったがその後は連敗が続き、黒星先行でリズムに乗れないシーズンを送っている。その中で、野﨑は11月から先発に定着。スター選手も多いロスターの中で先発という重役を任されているからこそ、この試合の入りを悔やむ。「最初がすべてだったと思います。ターンオーバーから入ってしまいましたし、インテンシティも低かったです」

野﨑の個人スタッツに目を向けると、シーズンハイとなる10得点。フィールドゴール4本すべてを成功させた。群馬に先行を許した第3クォーター序盤で、3ポイントシュートとアタックからのゴール下を続けて決め、約3分間で10得点のハイパフォーマンス。群馬に流れを渡さない役割は果たした。

十分な活躍と見る人もいるだろう。しかし、野﨑に笑顔はまったくない。「得点は意識していませんし、シュートを決めたことは喜ばしいことではないです。それよりも前半で2つターンオーバーしてしまい、自分の弱さが出てしまいました」

ターンオーバーの反省に加えて、本来チームから求められているディフェンスでも貢献できなかったと言う。第3クォーターの連続得点後、4つ目のファウルを吹かれてベンチに下がり、その後コートに戻ることはなかった。結果的に先発出場した試合では最短となる1029秒の出場にとどまった。

采配に関していら立ちがあるわけではない。自身のパフォーマンスに納得がいかなかった。「フィジカルで強く行ってのファウルでなく軽いファウルをしてしまったので、今日のディフェンスは最悪でした」

野﨑はディフェンスを武器としている。それを買われて先発起用されていることも理解している。この試合では持ち味を発揮できなかったが、これからも自身の仕事をまっとうしていきたいと意気込む。「今日は点が取れることは見せられましたが、やはりディフェンスで貢献していきたいですね」

サンロッカーズ渋谷

「シンプルなことをやり続けるのが重要」

野﨑自身は個人のディフェンスにフォーカスする発言をしつつ、チームも同様だと言う。前節のレバンガ北海道戦も、この日の群馬戦同様にオフェンスがクリエイトできても、ディフェンス力が伴わずに2試合続けて接戦を落とした。「今日は92得点取れていますが、結局それ以上相手にに取られているので……。もっとチームでディフェンスの意識を高めていかないと勝てないなと」

SR渋谷のディフェンシブレーティング(100ポゼッションでの平均失点)は、リーグで3番目に悪い数字。野﨑が言うとおり、勝敗のポイントはオフェンスではなく、ディフェンスである。チームとして守る姿勢がもっと求められると野﨑は言う。

「ディフェンスは一人ひとりがフォーカスしないといけないです。今日もファウルストップしないで、イージーなシュートを許したり……12人ロスターがいる中で全員バスケをするのであれば、1つのファールを厭わない犠牲心が必要です。僕自身もやっていかないと」

SR渋谷のロスターにディフェンスが苦手と見える選手はいない。日本代表選手も名を連ねて、個々の能力が高いのは言うまでもない。ロスターと指揮官は変化はあれど、昨シーズンはディフェンシブレーティングでリーグ3番目に良い数字を叩き出したチームである。

今後、チームが上向くために何が必要か野﨑に聞いた。「ディフェンスやリバウンド、ルーズボールとシンプルなことをやり続けるのが重要です。そこができないと崩壊してしまいます。特別なことをやる必要はなくて、シンプルなことができていない現状です」

フォーカスするポイントは見えている。しかし、それをやりきれないもどかしさがあると野﨑は続ける。「バイウィーク中に取り組んできたことが、試合で全然出せていないです。そこはチームでもっと話す必要があると思います」

新加入ながら、先発にも定着して存在感を示してきたが、それ故に勝てない責任も強く感じている。しかし、明確な役割を与えられて期待を背負っているからこそ、現状を打開すべく野﨑は前を向く。

「アウェーにも関わらず、たくさんの方に来ていただいて声を出してもらっていますので、僕たちがしっかりと応えないといけないです。また苦しい状況になってしまいましたが、試合は待ってくれないので、切り替えて反省点を次の試合に生かせるようにやっていきます」