「90点を超えたことが勝ちに繋がったと思います」
12月5日、第77回全日本大学バスケットボール選手権大会(インカレ)の男子準々決勝が行われ、早稲田大が持ち味のオフェンス爆発により日本大を96-87で撃破した。
早稲田大は今秋の関東大学リーグ戦を、センター不在の5アウトから積極的に3ポイントシュートを狙っていくスモールボールで席巻。2部から1部に復帰した1年目ながら、圧倒的なオフェンス力で他チームを圧倒し、20勝2敗で関東王者に輝いた。
インカレ初戦となった前日の神奈川大戦、早稲田は初戦の硬さもあってか出だしで大量リードを許す苦しいスタートとなったが、後半に本領を発揮し83-72で逆転勝ち。そして迎えた日大戦は第1クォーターは互角だったが、第2クォーター以降はアップテンポな展開から次々とオープンシュートを作り出し、3ポイントシュート34本中17本成功の大爆発。日大もタフショットを決めて食い下がったが、ハイスコアリングゲームという自分たちの土俵に持ち込んで勝ち切った。
早稲田大の1年生フォワード松本秦は、3ポイントシュート7本中4本成功を含む24得点10リバウンドと活躍。早稲田は試合の大半でリードを奪う横綱相撲を展開したが、これは松本が相手の流れになりかけたところでシュートを決める勝負強さを発揮したのが大きかった。特に第3クォーターの最後、日大が肉薄したところで、松本がオフェンスリバウンドに飛び込んでのプットバックをブザービーターで沈め、2ポゼッション差を保ったまま第4クォーターを迎えられたのは、試合の流れに大きな影響を与えるビッグプレーだった。
松本は、次のように勝因を語る。「昨日の試合、前半にリードを許したのは得点が止まってしまったことが原因だと思っています。今日は点数を伸ばしていこうと話していて最初は堅かったですが、第2クォーターあたりから速攻からの3ポイントシュートをどんどん出せていけたところがよかったです。結果として90点を超えたことが勝ちに繋がったと思います」
また、松本自身も「インカレは初めてで『負けたら終わり』といういつもと違う舞台です。それもあって緊張はしていました。昨日は初戦で緊張してしまいましたが、第2クォーターからいつも通りのプレーができたと思います」と振り返る。
「インカレは絶対に優勝する気持ちで臨んでいます」
関東大学リーグの早稲田は、1部復帰の1シーズン目ということもあり、最初は完全にノーマークの立ち位置から頂点に登り詰めた。しかし、関東王者として臨むインカレは、優勝候補として大きな注目を受けており、正反対の立場となっている。ただ、松本はこの変化をプレッシャーに感じることはなく、「(関東リーグを)22試合で20勝をできたことが自信になっていて、インカレは絶対に優勝する気持ちで臨んでいます」と語る。
そして自身について「リーグ戦も初戦からずっと出させてもらっていました。試合に出続けていく中で自信がついて落ち着いてプレーできてきています」と語り、1年生ながら中心選手としての強い責任感を持ってコートに立っている。
「自分が大事なところで決めてチームを勝たせたい思いを持ってプレーしています」
実際、今の松本は早稲田大のエースと評するに値するパフォーマンスを見せている。精度の高い3ポイントシュートに加え、191cmながらリバウンドで守備でも中心となっている。また、「相手が3ポイントシュートを警戒している中、自分がドライブで切れ込めたことはよかったと思います」と語るように、非凡なハンドリング能力を生かしたペイントアタックでもオフェンスを支える。
松本と同じ学年には千葉ジェッツの瀬川琉久、アルティーリ千葉の渡邉伶音、東海大の十返翔里など将来を嘱望されるタレントが揃っている。松本は洛南時代、全国でのプレー経験が少なく彼らのようなスポットライトを浴びる機会は少なかった。しかし、このインカレは、松本がここで名前を挙げた有望選手たちと遜色ない才能の原石であることを示す舞台となりそうだ。

